第三の物語 獄 プロローグ
第二章スタート。「獄」プロローグです。Gに関してはジュエルキャタピラーとヤママユガをGと合体させた感じです。ジュエルキャタピラーに関しては絶対にググるなよ!?ッと、忠告しておきます。
第三というとこれで最後感がありますが、まだ第四とかありそうです。
ここは、何処だ。俺はさっきまで……何してたんだっけ。何もわからない。ただ、信じられない程の光に包まれた、という記憶はわかるけど。でも、それ以外のことがどうしても思い出せない。自分の名前、光る前の記憶……思い出そうとしても、靄の中に包まれたように脳がそれに応えないみたいだ。
こんなこと考えても仕方ないし、俺は状況を把握することにした。
最初にここは何処と言ったが、周辺は見渡す限り鬱蒼とした林になっている。耳をすませば鳥の声や獣の声と思われるものがあちらこちらから聞こえてきていて、頭上には青空の中で太陽が燦々と光輝いている……ただ、どういうことか、光に違和感を感じる。何だか自分が知識として知っているものより少し小さい気がするのだ。……まあ季節によって太陽のでかさなんかいくらでも変わるので、あまり意味はないが。
ともあれ、この場所は明らかに知らない場所と見ていいだろ。俺の知識の中にある森はこんな森、という感じの森ではなく、誰かの手によって手入れがされていたはずだ。よくよく見ると、日本ではありえない模様のキノコを見つけた。わかりやすく言うと、緑に黄色の縞が入った模様だ。すっげえ毒々しいな……。更に向こうには、一メートル以上の大きさの花が沢山咲いている。少なくとも日本でこんな種類の花やキノコを聞いたことはないし、まず日本の森ではないと断言できるだろう。
後は、自分自身の感覚だが、妙に体が重いというか、動きにくいし、目線も低い気がする。まあ元々の俺がどんな体格だったかを知らないからなんとも言えないけどな。
と、その時。ガサっと近くの茂みで音がする。いや、この音は正しく形容するなら「カサカサ」と言った方がいいだろう。何故か不快になるような音だな。
この状況では自分からは出ない方がいいかなと考え、相手が出てくるのを待つ。
すると、そこから飛び出してきたのは……
「グギャガッ!?」
あれだ。形容するのも恐ろしい黒光りする物だ。
え?それはもしかして"G"か、だって?
……半分正解で半分間違いだ。
なぜならソイツはGの体の表面にイボのような醜悪のものを大量にくっ付けていて、背中の羽もどっかの蛾の様にそれはそれは立派で華美なものだったからだ……。しかもご丁寧に六十倍のサイズときた。
思わず口を大きく開けて変な声を出しそうになったが、先に相手が出したことでなんとかこらえた。Gなのにぐぎゃがって……自分が言った気もするが、流石にあんな獣の様な声は出さないし、人間では不可能だろ。
逃げたい。という意思が出る前に反射的に逃げ出していた。
あれは無理だ。G単体、蛾単体なら別に少し不愉快なだけだが、あれは生理的嫌悪を催す部位ばかりを集めたフランケンシュタインの様なものだ。あれに比べれば人体解剖だって幾分かマシだと断言できる。何なら俺は日本に帰ったらゴキブリに愛着すら抱くことができるだろう。
森の中を茂みをかき分けながら全速力で逃げた。途中視界に赤いものが入った気がするが今はどうでもいい。
俺はそれから逃げ続けるのであった。
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かなり長いこと逃げて、何時しか湖が見えて来たので、そこでいったん水分補給することにした。あの後あれに三回も出くわした。あれについてはもう考えたくない……醜悪な風貌の癖してこっちに飛んできたりするんだぜ?あれを作った神様がいるのならそいつを獄門磔にしてやる。
正に地獄だった。もうあれ関連は記憶から消すとしよう。
……さてと。目覚めてから初めての水だ。絶対美味い。
そうして、俺は湖の中を覗き込むようにして、水を飲もうとして……気が付いてしまったのだ。
……湖の中に真っ赤な龍がいたことに。
「ガアァッ!」
龍が鳴く。その声は、俺に原始的な恐怖を思い起こさせるのに十分だった。俺は瞬間思わず飛びのいてしまった。あれはたしかに龍だった。かなり小さく、まだかわいいといえるぐらいの大きさだったが……確かに龍だったのだ。
龍って聞いて「弱さ」を想像する人はほとんどいないだろう。何せ、龍ってのはどのゲームでも、どの小説でも、どの伝承、伝説でも神聖であり、種として最上であり、むしろそれを倒すことが目的の物語もあるくらいだからだ。
やばい。……自分でもどうしようもないほど阿保だと思うが、これが真っ先に思い付いた考えだった。現代に龍はいないという俺の中の常識と、今、そこにある現実の矛盾に脳がショートを起こし、俺の思考はどうしようもないほど混乱して少し考えればわかることすら気づかなかったのだ。
俺はしばらくの間硬直していた。肝心の時に限って、体ってやつは使い物にならないようだ。
……しかし。
いつまでたっても肝心の龍は現れやしない。不思議に思って、もう一度湖を覗き込んでみた。
……そこに、確かに、龍は存在していた。真っ赤で、少し小さくて、それでも迫力はある龍だ。
と、なると、残った事実は一つだった。
それは、漫画みたいで、どうしようもなく馬鹿げていて、今、記憶喪失というとんでもなく馬鹿げた事態に遭った俺ですら笑い飛ばすような事実だった。
「ガアァァァァァ!?(俺、龍になってる!?)」
「ギュウゥゥゥ(って……)」
思わず叫んで……そして後悔する。
そう、俺は森の中で叫んでしまったのだ。それは、捕食者たちにとって獲物の場所を教える格好の狼煙だった。被捕食者の俺にとっては……自殺行為である。
叫んだ瞬間……森の中から黒光りする影がぬっと大量に現れた。もう考えたくないが、あれである。形容したくない、あれである。
「ギャアアアァァァァ!!!!(ギャアアアァァァァ!!!!)」
俺は龍の容貌にしては妙に人間らしい声を出しながらGから逃げるのであった。
解説
界渡りは、精神にかかる負荷が尋常じゃないため、保護が何かの拍子に外れると、一時的、もしくは恒久的に記憶を失ったり、精神が破綻する可能性があります。それどころか、最悪の場合には界渡りの過程で身体から精神に至るまで全て消滅してしまいます。今回の記憶喪失はその一例ですが、比較的軽かった様子です。マコトがそれに引っかからないのは加護の力です。
ケモナーには残念なお知らせですが、こいつそのうち人化します。誰かはそのうち分かるでしょう。
記憶喪失、龍に転生……テンプレ要素を登場させすぎてキャパシティ超えそうです。
ちなみに「王」と同じく「獄」は更新頻度低めです。主に「真」と密接にかかわってくる物語です。
これからの投稿予定は
真→真→真→王→獄→真→真→真→王→獄って感じでしょうか。
当然と言えば当然なのですが相変わらず真主体です。獄は更に少なくなるかもしれません。




