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真実  作者: きよみ
9/11

真心

片一方の不倫の状態が続いたが、2か月ほど続いたある時、一つの山場を迎えた。とうとう来るべき時が来たというべきか。

 ある日の晩の事だった。葵が携帯を開いたら、みどりから、一言メッセージが入っていた。

 「大変だよ」と。

 その日、葵は夜勤の仕事が休暇日で、みどりは仕事だった。その為、みどりが仕事が終わるのを見計らって、葵は密会場所に会いに行く予定を立てていた。みどりの仕事が終わるのが、深夜24時。しかし、みどりから21時の段階でメッセージが入っており、仕事の勤務時間中にみどりからメッセージが入るなんてことは一度足りともなかった。これは何かあった。嫌な予感がした。そしてその予感は的中する事になる。

 26時を過ぎてもみどりから連絡が来る事はなかった。2人は「ライン」というアプリケーションを通じてメッセージをやり取りしていた。そのラインは、自分が送ったメッセージを相手が読んだかどうかがわかる機能がついていた。

 「大丈夫?心配だからすぐに連絡ください」

このメッセージを葵が送ってはや4時間が経過しようとしていた。一向にラインの「既読」ランプはつくことはなかった。

 そしてメッセージを送って6時間がたとうとした時、みどりからメッセージが来た。

 「旦那にばれました」と。

 みどりの旦那、「祐樹」からみどりの職場に「話し合いたいから出てきてほしい」と連絡があり、みどりが仕事を早退し家に帰宅したら話し合いが始まった。ある日の事、みどりが夜遅く外出をし、それを不審に思った祐樹は車の走行履歴を観覧した所、ホテルノンノが最終到着地点になっていた事が不倫行為が発覚したきっかけとなった。

 しかし、葵は不倫行為に対し、何もお咎めがなかった。話し合いの場も設けられなかった。みどりが全部ひとりで責任をかぶり、そして架空の人物を不倫相手に指定したからだ。会社の社員である葵がパートナーへ不倫行為を持ちかけた事が本社に知れたら、問題になり、葵の経歴に傷がつくと踏まえ、決死の覚悟でみどりは責任を全部自分でかぶり葵を守った。みどりは長期に渡り、やりがいをもって務めていた仕事を辞め、葵と連絡を取らない事を約束に、この件は水に流れた。

 いつの日か、ノンノのベッドの上で、葵の腕の中で包まれながら、みどりと語り合った事がある。「恋」と「愛」について。恋と愛の違いがよく分からないと二人で議論した時に、みどりが言った事を葵は忘れない。

 「下心のある付き合い方は恋。真心のある付き合い方は愛」

みどりにそういわれた時に、深く納得をしたのと同時に、葵はいままでしてきた恋愛、人との交わりあい、付き合いはどうだっただろうかと振り返った。今まで高校、大学、そして社会人となった今、自分の恋愛観はどうだったのだろうかと。下心、真心。自分の恋愛観はどちらに当てはまるのだろうか。下心というのは、簡単に言えば、自分の私利私欲が強い印象。自分が安心すればいい。自分が安らげばいい。自分が楽しれけばそれでいいと、心が真をとらえきれずに外れているのが恋という解釈をした。そして、愛。それは、心の核心、中心にあるもので、自分の私利私欲ではなくその人の事を心の中心から想える。その人のために自分はなにができるかを真剣に真心をもって考える事ができるのが愛ではないかと考えた。自分の今までしてきたものは「恋」だ。ただ一方的に人が好きで、人を求め続け、その中でお互いの気持ちが交わればそれは幸せ。交わりたいという強い願望ばかりを追い求めてきた。その中で、求められる喜びを恵実から知り、求め続ける事が恋愛じゃないと知り結婚に至ったわけだが、みどりを知って、また求め続ける喜びに走った。

 そして、振り返った。今まで行ってきた恋愛、それは全部恋。自分が気持ちよければいい。自分さえ満足して、そしてお互いがそう気持ちが一致して想いあえればそれは恋なんだと。心、身体の欲求ばかりを追い求めて、真に大切な何かを忘れていた。真に大切な物。それは真心を持った付き合い方。すなわち愛。みどりは、葵の為に自己犠牲を払ってでも罪をひとりでかぶってくれた。いつも仕事終わりに睡眠時間を削ってでも会ってくれた。自分の時間を削ってでも葵の時間を優先してくれた。自分の責任や立場を省みず、葵の為に頭を下げてくれた。

 みどりから真心。愛を感じた。そして、葵もまた、みどりの為になにができるだろうかと真剣に考えるようになった。みどりが笑顔になれるように。みどりの為になにができるか。そんな事を考えるようになり、葵はみどりにこう思った。

愛していると。





























 


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