親
葵は、祐樹に呼ばれた。仕事中に携帯が鳴り、休憩を装って、電話に出た。そしてすぐさま二人で面談をすることになった。現場を別の社員に任せ、葵は仕事を抜け出し、そして祐樹と面談をした。
「なんで呼ばれたかわかっているよね?」
祐樹はどこか微笑ましくどこか笑っているようにも見えた。怒っているように見えなかった。祐樹は落ち着いていた。祐樹とは歳の差が13歳ほど離れており、葵には祐樹がとても大人に見えた。そして、祐樹と1時間ほどの面談をし、会話を進ませた。子供に対する想い、情熱、そして現在の家庭の状態などを面談を通して祐樹から聞いた。祐樹は自分の感情論より、まずは子供の事を優先して考えを進めている。そして、みどりに対しても、お互いの親としての考えの不一致を感じていると言った。自分の事よりも、子供に対してもっと誠実な対応をしてほしかったと。自分がみどりに裏切られた事に対して、それ以降なにも追及しなかった。そして、不倫行為を行っていた葵に対し、今回もまたお咎めがなかった。誓約書を書き、みどりとはもう関係を結ばない事を約束し、それで面談は終わった。
親になるという事はこういうことなんだと感じた。自分の感情は後回しに、自分の愛する人、そして守っていかなければならないものを優先して考えていかなければいけないと。
自分はここまでに自覚はあるのか。どこまで本気なのか。命をかけて身を捧げる事ができるのか。裏切られても、尚、愛する物の為に身を犠牲にする事ができるのか。みどりと一緒になるという事は、みどりを幸せにするだけでは足りない。親になるという事は、これほどまでに大きい物なのかと感じた。
葵とみどりはそれ以来、会っていない。祐樹の大人としての対応、そして親としての誠実さを知り、祐樹が命をかけて守っていかなければならないものを知った。葵はそれを壊す事が出来なかった。
「 みどり。僕は、君のおかげで、人を心から愛する事を知ったよ。そして愛される喜びを知った。
今まで、自分の人に対する想い方は独りよがりな物だった。自分だけが気持ちよく、清々しくなればいいと思っていた。だけどみどりを知ってから、人のためになにができるかを考えるようになったんだ。それが真心であり、愛だと君から教わった。
みどりを心から愛している。
みどりを忘れる事なんてできない。一生僕の心にみどりは残り続ける。そんな
恋を知り、そして愛が残ったんだ。真心を込めて、君の幸せを永遠と願っている。」
この文をみどりに送り、
葵は今もまだ、みどりを想い続け、この愛の結末を待ち焦がれている。




