8 元国王の屋敷(中)
悪役令嬢や聖女が登場してくる話が大好きで、読んでいるうちに楽しくなって、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
またまた登場人物が増えてきてしまい、名前を考えるのに頭を悩ませてます。
最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
よろしくお願いします。
ソフィーの家族にも紹介される。
元国王一族と言っても普通のにぎやかな家庭という感じで夕食も家庭料理が中心でアキラにとっては珍しい料理が多かった。
「そんなに細いなんて……、もっと食べなさい! これも! これも!」とソフィーの母がなんでも取り分けて寄こしてくるのに困っていたアキラだった。
「もうおなかいっぱいです! ご馳走様でした!」とギブアップ宣言。
「じゃあ、デザートにしましょうか!」と立ち上がる母を制してヘンリーが「もう少ししてからにしましょう」と助け船を出してくれた。
食事の時、ヘンリーは戻ってきたがウィリアムは戻ってこなかった。
「ウィリアムはどうしてますか?」とヘンリーにたずねる。
ヘンリーは申し訳なさそうに「先ほどは大変失礼なことを……。話をして、別の部屋で食事をさせています。あなたに謝れるようになったら顔を出すようにと伝えてあるので、帰られるまでには謝るといいのですが……」と言った。
「わかりました。厳しい罰を受けていないなら良かったです。帰りに、また話ができたらと思います。
それから……、今回の事故のことで気になる点があるのですが……」
「なんでしょうか?」
ヘンリーが促してくるが、ここでする話ではないような気がして口ごもる。
その様子を察してソフィーが提案してくれる。
「アキラさん、私の部屋で少しおしゃべりしません?」
ソフィーの部屋に、アキラとヘンリーが入り、3人だけになるとアキラがタブレットを取り出し、小型の小さな機械のようなものを装着させた。
「それは?」とヘンリーがいぶかしげな声で言いかけると、アキラは口の形と息だけで『しーっ!』ということを伝える。
盗聴器の存在はないことを確認してから、アキラが話し始める。
「……失礼しました。盗聴の危険はないようですが、小さな声で話しますね。
事故の時の黒い車は捕まったのですか? それに犯人は?」
ヘンリーが事故の経過を教えてくれた。
黒い車はその後、チューブ内で乗り捨てにされているのが見つかった。
乗っていた人物は不明だが、政府は反逆者が元王家を逆恨みしての犯行と判断。
反逆者を調子づかせないためと国民を動揺させないためという理由で特に公表せず、事故として片づけることになったとされ、これ以上の捜査は打ち切りとなった、と。
「フェイスシールドにされていた細工は?」
アキラの問いにヘンリーがソフィーを見る。
ソフィーは「あ、お借りしたフェイスシールド返しますね!」と言った。
アキラが話を続ける。
「ソフィーさんのフェイスシールドの酸素が無くなっていたのは、誰かが細工した可能性が高いです。
そんな簡単に酸素が抜けたりはしない。
あの酸素が抜けてたフェイスシールドまだ手元にありますか?
あの状況を考えると、ソフィーさんが狙われていたとしか、思えないです。
それに、もうひとつ気になることがあります。
オレは気になることがあると自分だったらと考えることをよくするんですが……、運転手の立場だったら、自分のフェイスシールドをソフィーさんに使ってもらうと思うんですよね。それに車に予備の酸素を全く積んでいないというのもおかしい……。
ただ、あの時、運転手がわざとやっているようには思えなかった。
なので思いついたことなんですけど……、事が起きた時、何もせずにソフィーさんを見殺しにするように、脅されていたんじゃないかと」
「そんな……、でも、私のフェイスシールドは、警備局に事故の証拠だからと取り上げられました」
ソフィーが口を覆って怖そうな表情を浮かべる。
「運転手に家族は?」
「います。調べてみます」とヘンリーがあわてて立ち上がる。
「あ、まだ話は終わっていません。
運転手を責めるのでなく、そのまま様子を見て、家族の無事と周囲を調べて下さい。できれば家族を保護した方がいいです。話をするならそれから。
ソフィーさんや家族の方の外出の時は、複数人の使用人と一緒に行動するように、気を付けた方がいいと思います。
はー、言えて良かった。これだけずっと気になってたんだよね!」
「君は……何者なんだ?」
ヘンリーがアキラに鋭い目を向ける。
「ただの配達員ですよ。……ただ、オレもトラブルに巻き込まれることが多くて、場数を踏んでるってだけですよ」
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!