一つ目の七不思議「空き教室の物音」
県立樺沢高等学校____
学業も部活動も出来る文武両道な学校で、文化祭や体育祭は県では有名。
制服がオシャレということもあって倍率はそこそこ高い。
有名な高校だが、理由はそれだけではなく、七不思議と必ず出会えること。
これも、有名な理由の一つだ。
一つ目の七不思議は【空き教室の物音】
誰もいない、誰も使っていない4階の空き教室。
夜の零時、この場所を訪れると中からはゲームの機械音が。
入ってみると、誰もいない。
何事も無かったように静まり返る空き教室。
空き教室から出ようとすると何も無い場所で何かにつまづき転ぶ。
「つまづく」のではなく、必ず「つまづき転ぶ」のだ。
立ち上がろうとしても体が重くて立ち上がることは不可能。
少しすると体が軽くなり立ち上がることが出来る。
が、立ち上がった瞬間に、何かの液体をかけられる。
その液体は、七不思議にあった者たちでバラバラのようで
一人はスポーツドリンク。
一人は熱いコーヒー。
一人はオレンジジュース。
ひどい時はうすい塩酸。
と、様々。
そして、その七不思議の犯人は今日も何事もないようにゲームに向かっていた。
「…っしゃ、リイ様ゲット〜」
4階空き教室
現在は使われていないこの教室の椅子に座り、スマホに向かっている制服姿の少女。
嬉しそうにスマホを眺め薄らと頬を紅潮させている。
若葉色がベース、襟が白で緑色のラインのはいったセーラー服に白のスカート。
胸元には二年生を象徴する黄色のリボン。
制服は、ここ、樺沢高の旧制服だ。
髪は青みがかった紫色に染まり、瞳は透き通った青緑色。
肌は恐ろしいくらいに青白く、血が通っているようには見えない。
クラスに一人か二人かいる可愛い女子、という印象だ。
少女は白いイヤフォンを耳につけ、プラグをスマホに差し込みスマホに集中している。
ゲームが始まると、覚醒したかのように素早く指を動かし画面をタップしている。
この少女こそが一つ目の七不思議「空き教室の物音」の犯人____柴崎生だ
◇◆◇◆◇◆◇
柴崎生
元樺沢高校の二年A組の生徒である彼女は空き教室に必ず零時の時間にいる。
理由は、簡単で彼女が樺沢高校七不思議の一つ「空き教室の物音」だからだ。
なぜ、彼女が七不思議になってしまったのかはとりあえず置いておこう。
七不思議の真相、それは…ただの、腹いせである。
七不思議の一例を挙げてみよう。
◇◆◇◆◇◆◇
零時に誰かが空き教室を訪れる。
もちろん、理由は七不思議を見るためという、面白半分でこの場所に来る。
ガラガラと教室のドアを手動で開ける。
「なんだよ、誰もいねぇじゃん
本当にここが七不思議なのかよ」
「えぇ?でも、ここが七不思議の場所だって聞いたよお!」
今回の犠牲者はカップルのようだ。
「誰もいない」とは言葉の通り、彼らのような普通の人間にはこの教室には誰もいないように見える。
が、実際には柴崎生という少女がいる
なぜ見えないのか、それは…お察しの通りだ。
カップルがいちゃつき始めた。
一方、生はと言うと
「チッ…」
恐ろしい顔で舌打ちをしていた。
生のもっているスマホの画面には「GAME OVER」の文字が。
「continue?」という文字をタップする前に椅子から立ち上がる。
ガタッと椅子が勝手に動いたことで、イチャついていたカップルはビクリと肩を震わせる。
「ね、ねぇひろくん、椅子…今、動いた?」
「う、動くわけねぇだろ?」
怯える表情の二人。
普通の人間が見ると、カップルが勝手に動いた椅子に怖がっているだけなのだが、見える人間が見ると、生の表情に恐怖しているようにしか見えない。
生の表情を形容しろ、という問題が出たら誰でも「般若」と書くくらいに恐ろしい表情をしていた。
「…か、帰ろぉよ!」
「…そうだな!」
何か危機を感じたのか、カップルは教室のドアへと向かう。
が、覚えているだろうか?
この七不思議の話を。
帰ろうとする二人。
しかし、生はそれを許さない。
ドアへと近づく二人につかさず足を引っ掛ける。
もちろん、面白いくらいに転ぶ。
完全に不意打ちで、見えないために回避は不可能。
二人共同時に仲良く転ぶ。
そして、生は転んだ二人に圧力をかける。
圧力のかけ方は簡単で、自分のもっているある特殊能力を使う。
二人は起き上がることが出来ずにいるが、声を上げることも出来ない。
理由は、恐怖と声を出せないように生がさせているからだ。
生は二人のいる場所から離れずに、教室の棚からペットボトルを取り出し、自分のいる場所まで運ぶ。
運んでいる最中は、ペットボトルは浮遊している状態で、それを見るだけでも恐ろしいのだが、二人は倒れているため、見ることは出来ない。
ペットボトルが自分のところに届くと、生は二人に掛けていた圧力を解く。
二人は驚きと恐怖で動くことが出来ずにいる。
そして、その二人が我に返った瞬間
バシャッ
何かが上から降ってきた。
その何か、とはペットボトルに入っていたグレープフルーツの炭酸飲料。
白い制服に薄く黄色の色がつく。
突然のことすぎて、何が起こったのか分からなくなる二人をよそに生はポケットに手を突っ込んであるものを取り出した。
二人に向かって笑顔であるもの___ボイスレコーダーに入っているある声を再生させながら言った。
「早く消えろ☆」
生のもつボイスレコーダーからは「消え呪ろ消いえ呪ろ消いえろ呪消えいろ」と頭がおかしくなるような呪いの声が聞こえてくる。
当然、二人にも聞こえているわけで
「うわあああああああ」
「ま、ままままっ…まっ!!」
二人は叫びながら空き教室を出ていく。
それを見て、生はボイスレコーダーを止めてポケットに入れ、椅子に座る。
スマホを起動させ画面に表示されている「continue?」の文字をタップし、リズムゲームを始めた。
これが、この七不思議「空き教室の物音」の真相である。




