37話
軍服の男子が話したのは、エリスの事だ。
「転校生、聞いてるか?」
「転校生は止めてくれ」
「なんて呼べばいいんだ?」
「オオウチあるいは、ヨシノと名前で呼んでくれないか」
「わかったよ。よろしくねヨシノ」
転校生と言う言葉は馴染めないから、名前で呼んでもらえば気が楽だ。
その男子は、気軽に名前で呼んでくれた。
「では改めて、どうしてシスターのエリスを、一緒にいるのはどうして?」
「それは……その、一緒の部屋だから」
「それだけか?」
「それだけだよ」
僕はその軍服の男子生徒に事情を話した。2号館の3階にある女子専用の部屋が修復作業の為に閉鎖、どこにも行けないエリスが理事長に誤魔化されて、そして……
「つまり……ザビエルと顔合わせしたのか?」
「そうだ」
昨日、エリスが風呂上りだけは言えない。隣にいるエリスは、顔を赤くして湯気が出る程、頭を抱え込む。このまま黙っておこうとした。
「まあ……偶然だよ偶然」
「偶然ねえ……はぁ~」
軍服の上着を着た男子は、ため息を吐くように納得した。
「話はそれぐらいにしておいて……よろしくなヨシノ」
「よろしく。君の名前は?」
軍服の男子生徒の名前が気になって声を掛け、彼は素直に答えた。
「俺はダレス・マッカーサー、将来は先祖代打に続く軍の家系一族だ。よろしくな」
ダレスは挨拶として握手しようと、僕に向けて手を差し伸べた。
「よろしくダレス」
僕も手を差し伸べて、ダレスに握手を交わした。
隣のエリスは一安心した態度で、両手で胸を当ててホッとする。
「でも、一緒の部屋になったのはいいけれど、平気でいられるよな?」
「そうだけど、どうして?」
今度はエリスの事を話した。
「アイツは元々ボッチだぜ、お前はよく口うるさいシスターで説教が長すぎるよな」
「そうだな……」
「うんうん」
ダレスを始めとする他の男子も、エリスを馬鹿にするように、様々な悪口を言った。
本人がいる前でよく言うよな。
僕はエリスの方へ直視すると、ピクピクと頭の額から血管が浮き上がっている。
おそらくダレスは、神様に罰を与えて鉄槌されるだろう。
「まあまあみんな……彼女の前だから、言い過ぎだろう」
(ダレス、いいこと言うよな)
さすが軍人学生、お師匠様から聞いた話によると、ヴィーナス星軍の兵士は礼儀正しい人間だ。
ヴィーナス軍に所属するソーラー・グラスの適合者は、具現化した武器は、大剣や槍などの中世ヴィーナスで使用した兵器が多い。防具も含めて。
ダレスならきっと、女の子に優しい紳士みたいなプレイボーイの性格に違いない。
「シスターのザビエルならいいけど、聞いたところによると、授業中と懺悔をした最中に眠ったり、掃除で水の入ったポリバケツを、誤って足を蹴ってこぼしたり、整理整頓とかで滅茶苦茶な事態があったよな……」
ダレス! お前の方が言い過ぎだろう。軍人だからって容赦しないな。お師匠様に騙された気分だ。彼はニコニコした顔で、エリスに対する黒歴史をばらすようにペラペラと話す。
「ダレス……もうその辺にしといたほうがいいぞ」
一旦椅子から立ち上がり、僕はやむを得ず、ダレスに肩を触れて、話を止めるように告げたが、
「待て待て、ヨシノはまだ転校したばかりだからさ、色々教えたいことがあるんだ。話したっていいじゃないか。お前の知らない事が山ほどあるんだからさ」
「お前な……」
マイペースで酷いなダレス、そう思った中、隣にいるエリスは、急に椅子から立ち上がり、前髪で表情を隠すように、ゆらりとした感じで、口元から笑みを浮かべ、ダレスの方へ近づいた。
「ダレス君……」
「おう! ザビエル! おはよう」
等々エリスは、暴走を開始する気だ。
何も知らずのダレスは、何も状況も知らずに、右手を高く上げるようにニコニコした顔で、エリスに挨拶を交わす。
「ダレス君……お祈り済ませた?」
「お祈り?」
「まだでしょうね……今すぐ祈りなさい」
「後じゃあダメなのか?」
「……」
エリスは無言のまま。
余計なことを言うなよ。エリスは本気モードを出す気満々だろう。
「そうですね……ダレス君」
「なんだ?」
エリスは丸い銀縁のソーラー・グラスのテンプルのすじを押して、手元から粒子粒が現われ、金色の十字架が具現化した。
「地獄へ落ちなさーい!」
「はい?」
エリスは我慢の限界で、十字架で必殺技を発動した。天井から黒いブラックホールみたいな穴が現われ、そこから出て来たのは、ドでかい手だ。
「神の鉄槌‼」
「ブヘーーーーー!」
その巨大な手は、ダレスに向けてパンチを喰らった。
巨大な手は退けると、小さい虫を叩くように、ダレスはあっという間にペラペラな紙切れのように、踏み潰されてしまった。
「全く! 私をどれだけのけ者扱いみたいな事を話すなんて」
エリスはプンプンとして、頬を膨らますようにダレスをお仕置きをするのはやり過ぎだろう。
周囲にいるクラスメイトは、エリスの必殺技を発動して喰らったダレスを見て、振動で腰を抜かしたり、真っ青になって怯えていた。
何人かガタガタと震えあがり、数人が神に祈って懺悔をしていた。
「エリス……やり過ぎだよ?」
「罰ですわ罰!」
席に立って、エリスに近づいて説得したが、不機嫌なモードになる。そういった中、なにやら嫌な予感がしてきた。
「ちょっとあなたたちー!」
後ろから突然、大声を上げた女子の声が聞こえた。
気になって振り向くと、ドアから赤毛のツインテールと右手袋を嵌めた女子生徒が睨みつけてきた。前と同じ学園に通っていて、今はソーラー学園の生徒とクラスメイトになったシア・ノグチであった。
「おはよう……シア?」
「シアさん!?」
「あなたたちー!」
足を物凄く駆けるように、僕とエリスの方へ勢いよく接近してきた。
「なんだよ! どうしてそんなに怒った顔をするんだよ!」
「誰かに嫌がらせですか?」
「違います!」
「じゃあどうして?」
「二人で居候とは、どういうことですかー!」
「「やっぱり」」
どうやらシアもその掲示板を見てしまったのか。僕とエリスの部屋に居候のことがバレた。記事みたいに書かれていたのを中等学園に広まってしまった。
「それにエリスさん」
「私!?」
今度はエリスの方へと近づき、顔を真っ直ぐしながら再び睨みつける。
「なんでオオウチ君と一緒にー!」
「文句を言うなら理事長にー! 私も被害者ですので騙されたんですよーーー!」
エリスは事実を話しだけど、怒鳴り込むシアは聞く耳持たず、争いごとをするように喧嘩を始めた。
スピーカーから予鈴のチャイムが鳴り、時計の時刻はもうHRが始まり、前のドアから自動的に開き、担任のフクザワ先生が入室してきた。
「みんなもうチャイムは鳴りましたよ。席に戻りなさい」
先生がやってくると、生徒達は一斉に自分の席に戻った。
それにペラペラ状態のダレスは、フラフラとしながら席に戻り、シアは舌打ちとして戻って行った。
「ホームルームを始めるぞ……」
フクザワ先生は、自分のソーラー・グラスを起動して、五組のクラスメイトの出欠の確認した。
するとレンズに写し出す〝出席〟の文字が出ていた。
「またマイクはお休みか……」
「マイク?」
フクザワ先生が言った〝マイク〟という男子の名前、同じ五組のクラスメイトなのか、まさかサボりの生徒がいたとはな。
僕も前の学園でサボってばかりだったな。よく教師と委員長のシアに叱られたな。
「それにお前ら二人に聞くけど……居候になったのは本当か?」
「ウッ!」
「アウー!」
教師までもが僕とエリスの同居部屋も知らされていた。
ソーラー学園で初めての新生活なのに、屈辱を味わった気分だ。
クラスメイト達は、僕とエリスに向けて視線を浴びられるとは。
「ホッホッホッ! あのヨシノとエリスを居候した部屋を騒ぎになるとは……」
ソーラー学園理事長を務めるヒミコである私は、本館のタワーの最上階の理事長室で、ソファーに座り込んで爆笑した。
「経った一日で広まるとはのう」
ソーラー・グラスで本校の掲示板サイトをじっくり観察する。
「あの二人……今頃は苦労しているよな、アハハハハ!」
再び爆笑して腹を抱えて痛みが感じる。
昨日の2号館の寮長から電話があって、報告によると、同じ寮に住むエリスが、行く当てもないので、仕方なく私は……。
『エリスを2号館の2階にある男子専用の奥の部屋にいてもよろしい』
……と寮長に許可を取った。それでは物足りないから、いいことを思い出した。
『2号館の寮長』
『なんでしょうか?』
『今日の転校生であるオオウチ・ヨシノも、エリスと同じ部屋に同居させろ!』
『それは……本人に聞けばいいのでしょうか?』
『本人には黙っておけ! もちろんエリスもだ! これは理事長の命令じゃ』
『ですが……学園長にどう報告すればー』
『わらわの命令じゃあ、あやつには黙っておけばよかろう』
『わかりました』
『うむ、エリスに〝許可を取れた〟と言っておけ』
『はい……』
……と聞きながら、電話を切った。
「あやつは今頃……美人妻と一緒に、ヴィーナス星のアルファ帝国の下見じゃあ」
ソーラー・学園の現・学園長を務めているオオムラは、仕事の急用で奴の女房と一緒に、ヴィーナス星を訪れている。かなりラブラブな恋愛感情をしていたな。帰る日はかなりかかる。
「それまでは……あの二人をからかっておこうか」
例の転校生のヨシノ・オオウチ、お前はアースラー教のシスターであるエリスと共に、この学園で一変が出来て強くなれる。私が占った未来を予知が視える能力で……




