10:雪解けの春 縁(えにし)の娘
10:雪解けの春 縁の娘
春。雪は溶けたが、社はほとんど潰れたままだった。それでも、狐がこっそり社を守っていたので、何とか形は残っていた。
「後1年・・・持つかな。」ちび神様は言った。
「もう!そういうこというんなら、ちゃんと社を建て直してください!」狐は怒って言った。
桜の咲くころ、社に人間の若い娘がやってきた。
「珍しいですね。人間ですよ!」狐は驚いていった。
「もう、ここに社があるなんて、誰も忘れてると思ってた。」ちび神様は驚いた。
若い娘は、社を見つけると、せっせと片付けて、簡素な社にした。
「なんでだろ?」ちび神様には驚きだった。
そこに、若い女の友達がやってきた。
「よく、こんな社覚えてたね。」友達は言った。
「うん。ここを出る前、おばあちゃんとよくお参りに来てたから。でもぼろぼろになってた。もうちょっと形が残ってなかったら、わかんなかったかも。」娘は言った。
狐は、ちょっとえっへんといった顔でちび神様を見た。ちび神様ははいはいと狐の頭をなでた。
「今は新しい社があるから。みんなそっちに行くんだ。こっちはあんまりご利益なさそうだし、みんないつのまにかって感じ。一時たたりとかの噂もあったし。だから、ここにはもう誰も来てないんじゃないかな。」
「そうなんだ。でも、私、小さい時から、おばあちゃんが連れてきてくれて、よくここに来て遊んでたんだ。まあ、この社の神様も、お隣さんみたいな感じかな。」
「お隣さん?」友達は尋ねた。
「うん。お隣さん。お隣さんを忘れちゃったら、ちょっと寂しいかなって。願いを叶えてくれるとかじゃなくってさ。普通に。」娘は答えた。
「そっかな。でも、いるかどうかもわかんないのに?」
「うん。でも、助けてくれるから大切にするとか、なんか普通のお隣さんにはしないでしょ。実は、わからないだけで助けてくれてるかもしれないし。だから、普通に優しくできたらいいなって。」
「変わってるね。」友達は困った顔で言った。
「そうかな。そうかも。」娘は笑いながら言った。
「でも、ここの社、なんか落ち着くんだ。久し振りに来れたから、ちょっとくらい、ね。誰もきてないなら、尚更私くらいは何かしてあげなくちゃって。」娘は言った。
「ふーん。じゃああっちの社は?大きい新しい方。」
「あっちは、気難しいおじいちゃんって感じ。でもしっかりしてる。こっちの神様は、頼りないけど、暖かい感じ。人間も神様も、お隣さんって色々なんだよ。神様も人間も、いろいろ。」娘は答えた。
「そんなもんなのかなあ。」
「それにね。この社は、元々私のおばあちゃんが作ったんだって。誰か大切な人の為に、その人が幸せに向こうで過ごせますように、私達の暮らしを見守ってくれますようにって。」
「そうなんだ。あ。そろそろ家に帰らないと。夕飯の準備しなきゃ。あなたも、もう一人の体じゃないんだから。」
「うん。」
娘とその友達は、社を去っていった。
「縁って不思議ですね・・・。」狐は娘の背中を懐かしそうに眺めながら言った。
「人間にも、色々な考え方の人もいるんだね。」ちび神様は、少し嬉しそうにいった。
「人間でも神様でも、色々いますもんね。気難しいお隣さんは人間でも神様でもいるし、何もできない優しい人間も神様もいるんですよ。」狐は笑った。
「お賽銭でご利益を与えるだけが、神様じゃないんですよ。」狐は、ぴょんとはねて言った。
「・・・そっか。・・・うん。」ちび神様はつぶやいた。
「それから、この社、僕の為の社なんだね。・・・ありがとうね」ちび神様は狐に言った。
「・・・さあ、なんのことでしょうね。」狐は笑った。




