ガトゥ・バラディンという男 3
暖かい風が祐樹の足元から吹き抜け、祐樹の髪の毛を靡かせる。意識と体が一つになる感覚を祐樹は覚える。カプセルが開くと、祐樹はカーブを描いたフロアの一角に足を踏み出した。
するとすぐにフロアに不気味な音が鳴り響く。金属が軋む音。通路を踏み締める機械音。多分、警護用のメカだろう。メカはすぐに侵入者、相模祐樹を見つけて、近づいてくる。
祐樹はガトゥから託されていたレーザー・ガンを震える手で構える。そしてメカ目掛けて引き金を引いた。だがレーザー・ガンから放たれたレーザーはメカに呆気なく吸収された。
祐樹の体は強張る。メカのアームが祐樹の体目掛けて振り降ろされる。祐樹が「死」を覚悟して瞳を閉じた瞬間、メカは突然、物凄い音を響かせると煙をあげて崩壊した。
立ち昇る煙の向こう、霞んだ視界の先に、レーザー・ガンを構えた彼、ガトゥ・バラディンが立っていた。ガトゥはレーザー・ガンを懐に仕舞う。
「待たせたな。祐樹」
ガトゥは壊れたメカを眺める。
「この警護用メカには狙うべきポイントがあってね。いわば急所だ。そこを撃たなければ壊せない」
ガトゥは祐樹に歩み寄る。ガトゥはどこか物寂しげだ。
「その急所は要人にだけ知らされている。だがそんなシステムも、守るべきものがなくなった今となっては無意味なものだが」
ガトゥは少し憂いを滲ませて、祐樹を招き寄せる。
「行こうか。悲哀に満ちた物語を終わらせるために」
祐樹はガトゥと共に、硝子で仕切られたエレベーターに乗り込んだ。上昇していくエレベーターから見える未来都市はとても美しかった。
ライトに照らされた都市を見おろして、ガトゥは物静かに自分の過去を話し始める。
「『時の迷い子』。タイムワープの能力を手に入れた人間の俗称だ。私がタイムワープ出来るようになったのは、1960年代後半、反抗とカウンターカルチャーが全盛の時代、混沌とした世相のアメリカだった」
ガトゥはノスタルジックに過去を思い返していく。




