第3話 13歳
第3話 13歳
12歳上の姉が結婚した。
そして、妊娠した。
入れ替わりのように5年寝たきりだった祖母が身罷った。
母は、おばあちゃんが死んだ日、叔母さんたちのために食事を作っていた。
小姑鬼千匹。
それが、7人も8人もいるのだからどんだけ―って思う。
食事の片づけをしながら、
「今際の際に誰も呼んでくれなかった……」
と、ほんとに寂しそうにつぶやいた。
5年も寝たきりで、ずっと昼間百姓、夜は料理屋を営んで家系と家族を支えてきたのに
いつの世も軽視され、理不尽に扱われる。
「わたしたち我慢すれば、あんたたちの時代にはもう少し女が生きやすくなるからね」
唇をかみしめて、辛苦を耐える母は心から尊敬する。
でも、私は母の生きざま、考え方をほとんど知らない。
だって、いつも仕事していていないもの。
料理屋に行けば台所にいるんだけど、フグを扱っているから
入ることさえ拒否される。
一緒にお料理作ったり、お話ししたりしたかったな。
後に精神科医はわたしを「愛着障害」と呼んだ。
中学校の制服はセーラー服。
プリーツ加工がしていないスカートの寝押しの仕方がわからない。
「ダーティー」とあだ名が変わる。
ううう、黒歴史なんていらないのに。
「努力が足らない。ふづけてる。お調子者」
周りのわたしへの評価は今まで以上に低くなる。
そして、何より私のわたしに対する自己評価は日本海溝に潜り込んでいく。
突然、授業を抜け出して家出する。
空気を読めないで発言して人を傷つける。
めっちゃ反抗的になっていく。
先生にぶたれても、親に躾されても、糸の切れた凧みたいにふわふわと飛んでいく。
まるで何もなかったかのような顔をして。
偏平足のくせに速く走りたくて陸上部に入る。
毎日練習して、学年女子ではトップになる。
それでもみんなは、体格がいいんだから。
と私の努力を認めてくれない。
腕ふり50回。
腿上げ50回。
腕立て伏せ50回。
スタートの練習10本。
30メートル走10本。
50メートル走10本。
100メートルのタイムを取るころにはへとへとだ。
顎を引け。腕を振れ。前傾姿勢。
ああ、チートとかあれば楽なのに。
頭の中はお花畑を散歩する憧れの定型発達の温和な少女。
な、わきゃーないのにねー。
摂食障害は小学3年生くらいから始まって13歳で嘔吐は止まって、拒食のみだった。
それでも、口角を上げ、「今を生きる」
相変わらず行動の欄はオールC。
それでも父と母は、
「世界中のみんながお前を悪い子と言っても父さまと母さまは、
いいえ、あの子は優しい子だというよ」
それだけを支えに生きていた。
6月の田植えの終わった田んぼに風が渡る。
さーと揺れる稲の苗を見るのが好きだった。
教師から言われる。
「やればできるのに」
その言葉が胸を刺す。
努力している。
それでもできない。
何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。
やがてきれいな花が咲く。
わたしはわたし。人は人。




