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アラサーからのダンジョン探索~英雄は目指さない。マイペースに遊びながら稼ぎます~  作者: 迷子
第三章 はじめましてマイ・フェア・レディ

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第92話 深層の入口

 ホムンクルスの新たなる可能性を見たところで、俺たちは次の階層に進んでまた一泊した。

 そしてしっかりと睡眠をとって翌日の昼、俺達はとうとう目的の階層に到達する。


 渋谷ダンジョン二十回層。いわゆる深層と呼ばれる領域。

 最前線に進んだトップレベルの探索者しか、足を踏み入れることができないこの場所で、俺達はさっそくその理由を体感していた。


「どう? 深層の感想は?」

「いや、どうって言われましても……」


 階層入り口の前。ちょっとした高台から見おろす平原の光景に、俺は呆然と呟く。


「本当に恐竜じゃん……しかも結構あちこちに居るし……」


 ウサギを始めとして今までに見てきた魔物の中に、図鑑で見たことあるような恐竜が混じっている。


 ここに来るまでに出会った魔物も、十分恐ろしい相手だったのは間違いない。しかし、その恐竜たちは文字通りスケールが違う。


 単純にデカい。一軒家の建物に匹敵するサイズの恐竜型の魔物が、ちらほらと見える。その迫力、重厚感は離れたここからでも感じられた。


 気まぐれに体を動かすだけで、近くにいる人間を殺しかねない。そしてそんな奴らが、魔物らしく特殊能力まで備えているのだ。ハッキリ言って、他の魔物が可愛く見える。


 いろんな意味でレベルが違う。ここまでの探索がお遊びのように感じられる。

 これが深層かと、まだ戦ってもいないのに緊張で口の中が乾いていた。


 川辺が若干引き攣った声で呟く。


「ヤベェな。オレ、最悪あいつらの前に立つの? 生きて帰れる気がしねぇんだが」

「それは僕もだよ。あんな奴らに僕の【魔術】が効くのか?」


「私なんか川辺さんより脆いのに、剣で切り掛かるんですよ? というか、歌っている間に踏み潰されそう」

「大丈夫かな? マルがパクリと行かれそうでちょっと怖いです……」

「ウォン!?」


 どうやら気持ちは皆俺と同じらしい。最近は戦いにも慣れてきたと思ったけど、探索者になったばかりの頃のように怖気付いている。


 そんな俺達を見ながら、拝賀君は頷いた。


「分かります。さすがにアレは僕も怖いです。明らかに僕らが踏み込んでいいレベルじゃないんですよね」

「貴方なら逃げるだけは余裕でしょ? しっかりと囮の役割を果たしなさい」

「お願いだから僕にも優しさを分けてくれませんか……?」


 本当にミライさんは拝賀君に厳しいな。お労しや。

 でもごめん、いざとなったら頼むわ。死にたくないんだ俺は。


「楓太君たちも、そう怖がらなくても大丈夫よ。慣れてないと今までの常識が邪魔して、あんな大きな魔物とって考えちゃうけどね。ステータスの力は確かよ。体格の大きさがそのまま強さというわけではないわ。時間稼ぎ程度だったら今の貴方たちでもできる。もっと自信を持ちなさい」


 いや、自信を持てと言われてもな。

 それは裏を返せば、俺は何もできず挽肉にされる可能性が高いということでは? いくらミライさんの言葉といえど、そう簡単に鵜呑みはできない。


 俺だけじゃなく、皆が難しい顔をして遠くの恐竜を眺めていた。

 そんな俺たちに、刻子さんはおかしそうに小さく笑う。


「いきなり慣れろというのも大変ですよね。でも大丈夫ですよ。戦うのは私達ですし、基本的に近寄らなければ襲いかかってくることもありませんから。――一部を除いて」

「大丈夫! いざとなればアオちゃんが守ってくれるから!」

「その通り。君達のことは僕が守る」


 そ、そうだな。俺たちがメインで戦う訳じゃないし、いざとなったら今西さんがいる。

 そんなに心配するほどでもない――


「でも、あの巨大で突進されたらアオさんでも止められないんですよね」


 ボソッと、日向さんが呟いた。


「前にアオさんを信じて任せたら、止めきれずに危うく私が轢かれて殺されるところでした。あの時は間一髪って感じでしたね。九死に一生を得たとはあのことです。そもそも、渋谷ダンジョンの深層は魔物が強いし……」

 

 なんだよそれ。じゃあダメじゃん。

 というか強いの? 渋谷ダンジョンは戦いやすい初心者向けダンジョンじゃないの?

 俺の疑問を見抜いたのか、ミライさんが日向さんから引き継ぐ。


「渋谷ダンジョンは探索のしやすい場所よ。でも、深層になると話が変わるわ。比較的過ごしやすい環境の代わりに、恐竜型の魔物を始めとして頑丈だったり、尋常じゃない力を持っていたり、単純にステータスが強い魔物が多いの。深層という括りで見れば、渋谷ダンジョンほど強い魔物が出てくるダンジョンはそうそう無いわね」


 なんなのお前ら?

 俺たちを安心させたいの? 絶望させたいの? どっちなの? 

 いや、というかだな――


「それを知っていながらなんでこんな場所に連れてきたんですか? 普通にもっと狩りやすい相手を選べば……」

「強いけど狩りやすいのは変わりないのよ。毒とか麻痺とか厄介な状態異常をやってくる奴は少ないから。他より強いけど狩りやすいとなれば、経験値もたくさん持っていそうだし、数もこなしやすいでしょ? だからレベリングするならここって私たちの間では常識だったの。楓太君たちも慣れている場所だしね」


 ああ、なるほど。そういう理由か。

 それなら納得だと頷きかけるが、でも、とミライさんは遠慮がちに続けた。


「ここまでの道中で気づいちゃったけど、強いから経験値を持っているとは限らないのよね。むしろもっと弱い魔物が集まっているダンジョンに行くべきだったかもって、ちょっと後悔しているわ」

「それはそうですね……」


 スライムがその最たるものだからな。

 むしろここの魔物は真逆だろう。


「でも、相応に経験値を持っているみたいですよ」


【魔物鑑定】

 名称:トリケラス

 レベル:30(魔力保有値15935)

 ステータス:【MP】214【STR】335【CON】394【POW】212【DEX】211【INT】152

 スキル:【角撃】【突進】【怒号】【守護本能】【顎盾防壁】【地鳴衝撃】


 名前から察せるだろうが、トリケラトプスに似た魔物だ。というかそのまんまだなアレ。もう普通にトリケラトプスでいいじゃん。


 とうとうレベル三十代。ミライさんと同等な奴が出てきたな。そしてステータスがやべぇ。ステータスが強いという意味が良く分かる数値だ。スキルも強そうなのが六個も。ちょっと近寄りたくないですね……。


 でも、強いだけのことはある。今までの魔物の五倍近くの経験値だ。数字だけ見れば破格の獲物だろう。だけど本当に美味しいかと言われると疑問だな。

 

「ミライさんだったら本気でアイツと戦ってどれくらいで倒せます?」

「そうねぇ。だいたい十分から十五分といったところかしら? 体力が多いからどうしてもそれくらいの時間がかかるのよね」


「そうですか。体力の消耗は? 怪我とかしませんか?」

「上手くいけば無傷で済むけど、擦り傷と打撲は覚悟の上。まともに食らえばガードしても骨が折れることもあるわ。あとやっぱり休憩は欲しいわね。さすがに連戦はキツいわ」


 ふむ、なるほどね。それなりに消耗する相手で、事故れば骨折は免れない。後衛だったら下手すれば死ぬかも。


「どう思う?」

「微妙じゃねえ? 経験値は高くても安全に周回できるかと言われるとな」

「〈百花繚乱〉の五人で分けたとしたら、一人3000くらいの経験値だろう? それならもっと弱めのやつで数をこなした方が良いんじゃないかなと思うよ?」


 だよなぁ。やっぱり効率だけならスライムレベリングの方がいいか。

 ポイントまでの移動時間を考慮しても、スライムの方がメリットは大きい。

 やはり大物は狙うべきではないか?


「そんなことないわよ」


 俺たちの考えを、ミライさんは否定した。


「最悪でも骨折程度で、五倍近くの経験値が入ってくるなら積極的に狙うべきよ。弱い奴でも群れが相手だと結局同じくらいの時間がかかるわ。むしろ私はやる気が出てきたわね」


「それに群れた魔物と戦っていると、漁夫の利狙いでまた他の群れに狙われることもありますからね。特に戦闘後の疲弊した瞬間は一番危ないです。その点大物の場合、巻き込まれないように逆に離れてくれますから。そういう意味なら大物の方がやりやすいですね」


 ミライさんだけではなく、トキコさんまでもがサラリと言った。

 いや、骨折って大怪我なんだけど……意識が違いすぎる。

 

 怪我すらしちゃダメでしょと言う認識の俺達と、骨折くらいなら誤差でしょというミライさん達。これがなんちゃって探索者と一流探索者との格の違いか。そりゃ強くなるわな。


 俺たちが密かに引いている中、しかし伊波だけはなるほどと小さく頷いた。コイツもある意味大物だよな。もし自分が骨折したら泣き喚くだろうけど。

 

「そういうことなら、ミライさん達はその方が良いでしょうね。それに少し準備すれば、もっと安全に戦うこともできますし」

「え? マジで? どうやって?」

「なんで君が気づかないんだ。装備だよ。ミライさん達の装備を更新すれば良いだけの話だ」


 ああ、なるほど。忘れていた。

 そういえばミライさん達の装備は値段に見合わぬゴミカスだったっけか。


「そうか。ミライさん達は縛りプレイのまま探索をしているようなものだったな」

「そういうことだ。この階層の素材できちんとした装備を作るだけで、確実に危険は減る。なんだったら戦闘時間だって半分以下になるんじゃないかな? そうなったら効率が段違いだよ」


 確かに。それならスライムレベリングすら必要ないかも……いや、スライムレベリングしつつ移動しながら大物を倒せば、まさにスライムマラソンになるな。

 

「上手くいく気しかしない。やっぱり作るべきか。でも五人分の装備を作るのはさすがにだるいな」


 今でも料理やらの雑用で忙しいからな。ここに装備作成まで含めるとマジで大変。

 倒す速度を上げれば良いんだから、武器だけで我慢してもらうか? 他の装備は帰ってからとお願いすれば――


 ――ふわっ。


 どうやって丸め込もうかと考えていたら、後頭部に覚えのある感触が。そして後ろから俺の前へと回される腕。


 これは……まさか――ッ!?


「ねぇ、楓太君。大変だろうけど、装備を一式作ってくれないかしら? 貴方だけが頼りなの。ね? 当然報酬は払うし、お願いだから……」

「楓太さ~ん、カコからもお願〜い。カコ、楓太さんの装備が欲しいな〜」

「おやおや、そういうことなら僕も」

「あら。体を張る時ですか。それなら私も」


 後ろにミライさん、前からカコちゃん。右からは今西さんに左から刻子さん。それぞれタイプの違う美人が際どく抱き着いてくる。


 そんな……こんなの、断れる訳が……ッ!


「作ります。作りますので、あの、ちょっと離れてくれると……」

「本当に? ふふっ、ありがとう。嬉しいわ。依頼料は帰ってから払うけど、ちょっとだけ今からでもお礼を――」


「はいっ! はいっ! 離れてくださいねー! ダンジョンでふざけるのは止めましょうね!」

「いちゃつきは禁止でーすっ! 時と場所を選んでくださーいっ!」


 七緒ちゃんがパンパンと手叩き注目を集め、チヨちゃんと二人掛かりでミライさん達に注意する。それに逆らわず、大人しく四人共離れてくれた。


 良かった……嫁ンクルスに至る前に溺れるところだった。


 ぷりぷりと怒っている七緒ちゃんとチヨちゃんに、ミライさんは微笑ましそうな笑みを浮かべる。


「あらあら。残念だけど、本命さんに悪いしここまでにしましょうか」

「別に本命じゃないですけど」


 俺の本命はホムンクルスだ。間違えるな。


「しかしそうなると本当にやることが多いな。階層毎のレベルの割り出しに、美味しい魔物の調査、装備作成に料理を始めとした雑用か。一気にハードワークになっているような……」

「雑用は私達が引き受けるわよ。このままだと持ち込んだ食材が余っちゃうからね。ここからはとりあえず魔物の調査に専念しましょうか。一匹残らず全種類調べましょう。何が美味しい魔物なのかは、人によって変わるだろうし」


「と、言いますと?」

「さっきの話と同じよ。弱いのを沢山仕留める方が得意な奴。大物を倒す方が得意な奴。小畑会にもいろんな奴がいるからね。分かりやすいのだと、天城の爺とかね」


 あー、それは確かにな。あの人が多数を相手にするのは効率が悪いわ。


「なるほど。それじゃあ強い奴も残らず見なきゃですね。正直、近づきたくすらないんですけど……」


 まぁどいつもこいつもあれだけデカいから、遠目から見れば分かるし別にいいんだけどさ。やっぱり怖いもんは怖いよね。


 俺の呟きに、コクコクと日向さんは頷いてくれる。


「わっ、分かりますっ……やっぱり大きいのは怖いんですよね……」

「ですよね? 自分からヒグマに近づくバカがいるかって感じですよ」

「いえ、ヒグマは別に怖くないんですけど……」


 俺、お前の方が怖いわ。

 カマトトぶってんじゃねぇよ。お前ももう立派な化け物だよ。


「私は未だに怖いのに、皆は必要なら躊躇わず戦うので、疎外感が……」

「あら、日向さん。私達だって怖くない訳じゃないですよ?」

「そうだよっ! 日向ちゃんが弱らせてくれるから安心して突っ込めるんだよっ!」

「フフフッ。【呪術】で身動きを止められて怯える恐竜を見た時は、僕はむしろ日向の方が怖いと思ったよ」


 俺もそう思う。

 やっぱりこの人怖いわ。根暗だけあってやり口が陰湿というか、敵に回したら絶対に後悔しそう。


 ミライさんとかとは違う意味で、絶対に敵対してはいけない人だ。

 なので、俺はおべっかを使います。


「仲間が勇猛すぎると大変ですね。深層には強い魔物しか居ないでしょうに」

「は、はいっ、本当に……ッ! あっ、でも、深層でも弱い魔物がいないって訳じゃないですよ。ほらっ、あそことか……」


 あそこ? あ、後ろね?


 ぐるりと体を回してみれば、階層の入口の裏側は、少し離れたところが森になっていた。まったく気づかんかったわ。


 ここから見える木の中に、赤い実が成っているものがある。リンゴほど大きくはないが、一口で食べるには苦しい。そんなサイズの赤い実だ。


 そしてその赤い実に前足を伸ばしているリスのような魔物が見えた。


【魔物鑑定】

 名称:モグリス

 レベル:26(魔力保有値312)

 ステータス:【MP】195【STR】12【CON】8【POW】32【DEX】254【INT】142

 スキル:【警戒】【俊敏】【逃走】【頬袋】


 うわ、本当に弱いな。逆にびっくりしたわ。


「マジで弱いわ。レベルは俺達と同じくらいだけど、経験値もすげぇ低い。狩る意味もないレベル」

「へぇ。深層にもそんな魔物が居るんだな。実はスキルが強力ってことはねぇの?」


 ああ~、そういうパターンもあるか。でもどれも逃げるためのスキルなんだよな。


【頬袋】――頬袋に大量の物を溜め込む。


 なんじゃこれ。これスキルか? ただの身体的特徴では?


「【警戒】と【俊敏】に【逃走】、【頬袋】ってスキルだけだな。【頬袋】は初めて見るけど、ただ食料をしまうってだけしか書いてないわ」

「なんだそりゃ? それ本当にスキルか?」


 やっぱりそう思うよな?

 魔物のスキルは時々、これみたいな意味が分からんやつもあるから判断が難しい。

 にしたってこれはマジでスキルじゃねぇだろ。


「でも可愛いですね~。見ていると微笑ましくなりますっ」

「そうね。深層は危険な相手しか居ないからなおさら。癒されるわ」

「で、ですよねっ……私もこの辺りで疲れた時はあの子を見て癒されますっ……」


 リスを見て喜ぶチヨちゃんと七緒ちゃんに、日向さんも嬉しそうにしている。〈百花繚乱〉はイケイケな女子ばかりだからな。理解者ができて嬉しいのかな。


 しかし、チヨちゃんはあまり褒めない方がいいぞ。ピーちゃんとマルがジト目で睨んでいるから。嫉妬されると面倒そうだな。


 和んでいる女の子達を見て、伊波はポツリと呟く。


「可愛いか。野生のリスも触ればそれなりに危ない生き物だけどね。寄生虫とか、海外では狂犬病のリスクのある動物にも数えられているし」


 確かにそうだけど、水を差してやるなよ。空気の読めん奴だな。


「その特徴を持ったまま魔物化していたら確かに厄介だけど、アレは本当に危険はなさそうだぞ。戦闘力がまるでないし、逃げ足に特化している感じ。あと食料集めが得意なだけだ」


 さっきから見ているが、赤い実を採っては次々と口に含んでいる。一個、二個、三個……六個目いったわ。すげぇな、口がパンパンじゃねぇか。ってまだ行くんかい!


「すげぇ食い意地張ってるな。どんだけ食欲あるんだよ」

「あんだけ食べるならそりゃああいうスキルにもなるのかもな」


「いいじゃないですかっ、食いしん坊で可愛いですよっ!」

「まぁ見ている分には可愛くていいわよね。ペットにしたら意外と食費が大変そうだけど」

「さすがに魔物をペットは……あ、チヨさんならできるんでしたね。いいなぁ。〈調教師〉ちょっと羨ましいかも……」


「楽しそうで何よりだけど、そろそろ行きましょう。時間が勿体ないわ」

「そうですね。全種類の魔物を確認するだけではなく、レベルまで割り出さないとですから、時間がいくらあっても足りませんよ」


 ミライさんと拝賀君に窘められ、俺達は素直に返事をする。

 本当に時間が掛かりそうだもんな。こんなところで油を売っている暇はないか。


 俺たちは歩き出すが、あることに気づいて俺は振り返った。

 何故だか、伊波は今もリスをじっと見つめていた。


「おーい、伊波。何やってんだよ。置いていかれるぞ」

「ん? ああ、ごめんごめん。すぐに行く」


 俺が声をかけると、伊波はすぐに追いかけてきた。

 伊波が横に並んでから、俺は聞いてみる。


「お前、何で止まってたの? どうでもよさそうにしてたじゃん。何か気になることでもあったのか?」

「ああ、ちょっとね。あのリスが口に入れた実が、どこに行ったのかと気になってさ」


 はっ? いや、何処にって……。


「そりゃ口の中じゃねぇの?【頬袋】ってスキルもあるんだし」

「いや、そうじゃなくてさ。明らかに口に入れた木の実が自分の体積を上回っていたじゃないか。いくらなんでもおかしくないかなって」

「おお、なんかそれクラ〇カとブ〇ラさんを思い出すな……」


 次はいつ連載再会してくれるかなぁ。

 年内にはしてほしいところだ。いつまでも待つけども。


 しかし伊波の疑問も聞けば納得だ。あの木の実、結構大きかったしな。それを五個以上口の中に……あれ? 結構とんでもないな。方法はどうあれ、自身の限界以上の荷物を抱えていることになるのか。


「スキルであっても、どういう力が働けばあんなに入るのか不思議に思ったってことか」

「そうそう。頬袋がどこまでも伸びるならまだ分かるんだよ。でもあのリス、頬が膨らんではいたけど一定以上は膨らまなかっただろ? それにあれだけの木の実を口に入れたら、その重さだけでも結構あると思うし」

「ああー、確かに変だな? 見た目が変わらずに中身が違う……ん~、例えば空間を弄っているとかは? これならいくらでも入っても不思議では……」


 …………空間を弄る?

 それってつまり……。


 俺と伊波は顔を見合わせた。

 伊波は口を半開きにして、ポカンとした顔をしていた。たぶん、俺も同じ顔をしていると思う。


「――ミライさん待って! ちょっと待って! 調査の前にあのリス捕まえて!」

「拝賀君! 急いで捕まえるんだ! べつに生け捕りじゃなくてもいいから!」


「え? どうしたの急に? そんなに大きな声を出して……」

「小畑さん、伊波さん。落ち着いてください。そんなに大声出すと魔物が寄ってきますよ?」


「これが落ち着けるか! いいから早く捕まえてこい!」

「楓太の言う通りだ! 早く行くんだ拝賀君! 上司命令だぞ!」


「いつになく強権使ってきますね……まぁそこまで言うなら行きますけど」

「二人共、本当にどうしたの? 今は探索に集中すべきでしょ?」


 あほか! 探索なんかやってられるか!

 なんだったらレベリングよりよっぽど重要だわ!!



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― 新着の感想 ―
頬袋でマジックバッグかぁ…… まあアトリエ式錬金で作るなら普通にマジックバッグになっちゃうんだろうなー。 スキル不足とかで製作失敗すると、入れたアイテムが消化吸収されて中身が虚空に消えるトラップアイテ…
更新早くて文章量も多くて、何より面白いです 空間拡張系スキル、来ちゃいましたかぁ しかし頬袋では唾液まみれになりそうでちょっと…… コアラやカンガルーみたいな有袋類のお腹の袋が理想ですよね でもまあ…
更新お疲れ様です。 >危うく溺れそうだった 男だからね、仕方ないね(完全同意) どれだけ文明が栄えようが、ハニートラップという原始的罠が無くならないのは歴史が証明してますからなぁ(笑) 「頬の中が…
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