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アラサーからのダンジョン探索~英雄は目指さない。マイペースに遊びながら稼ぎます~  作者: 迷子
第二章 小畑会結成

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第60話 勧誘②

 今回の遠征で俺の【鑑定】は両方ともレベル5まで上がった。これが実際にどれほどの強さなのかは分からない。しかし成長したことである程度上の実力者にもバレない隠密性と成功率を得ているはず。


 だとしても、コイツが気づかないのはおかしくないかと思っていた。格上でさらに同種のスキルを持っているんだ。他の奴より【鑑定】に対する感度が高いんじゃないかと。


 そしておそらくその理由がコレ。【鑑定(偽)】だろう。こいつは紛い物だ。力を引き出し切れていないから、あらゆる能力が低い。


 間違いなく俺と比べて見える情報量が少ないだろうな。そして俺にとっては都合の良いことに、コイツはたぶん、俺が自分と同等の情報量しか見れないと思っている。


 レベル差があるからだろうな。自分より10も下のレベルの俺が、自分以上の【鑑定】を習得しているとは思ってもいないんだ。実際はお前の力の全てを丸裸にしているというのに。


「俺が【鑑定】を持っていると分かったのは、レベルを見たからですか?」

「ええ。たった一度の遠征でレベルを四つも上げる。10台前半のまだレベルが上がりやすい時期とはいえ、【鑑定】がないと無理な結果です。こうまで違うのかと、正直羨ましく思いましたよ。僕ももっと早く手に入れていればとね」


 やっぱり遠征前に支部で感じた視線は気のせいじゃなかったか。

 川辺が余計なことを言わなけりゃ気づけたってのに。いや、かといってやれたことはないか。

 しかし今の言い方だと、コイツが【鑑定】を身につけたのは――


「僕が【鑑定】を手に入れたのは、今から三ヶ月ほど前です。レベル20からやっと21になり、レベル20台の壁を突き付けられた時でした。もちろんそれまでも努力はしてきたつもりですが、20を超えてからレベルは本当に上がりづらくなるんですよ」


 頼んでもいないのに、ちょうど知りたかったところを拝賀はベラベラと喋ってくれた。本当は誰かに喋りたかったのかもしれない。その気持ちは正直分かる。不覚にもちょっとだけ親近感を持ってしまった。


「これだけ頑張ってようやく21。そう思った時は正直絶望しかけましたね。これ以上、上にはいけないかも。そんな考えが頭によぎった時、僕達が倒したフロアボスが〈オーブ〉を落としてくれました」

「それは……なんだか運命染みてますね」


 俺が【人工生命体創造】を手に入れた時のようだ。

 俺なら自分が主人公になったと舞い上がるだろう。


「流石にそこまでは思い上がりはしませんでしたけどね。ですが天運だと思いました。〈オーブ〉なら望んだスキルが手に入る可能性がある。何かレベルが上がりやすくなる能力を。そう望んで手に入れた力が【鑑定】です」


 拝賀はニヤリと笑った。


「それからは順調でした。【鑑定】があれば適正なレベルの相手を選んで戦える。あれだけ時間が掛かっていたのに、一ヶ月で一つレベルを上げ続けることが出来た。これなら僕達は上に行けると確信しました」

「レベル20台でそれは確かに凄いですね……」


 一ヶ月で一つか。なるほど。なるほどな~。


 ……………………遅くね?


 いや、一般的にはたぶん遅くはないんだ。むしろ早い方だと思う。

 だけど【鑑定】持ちにしては……いや、そうか。


「丁度いい相手と戦えるっていうことがどれだけの優位性なのか。よく分かりますよね」

「ええ、まったく。適正レベルの階層で戦うだけで、レベルは自然と上がっていく。さらに言えば、僕らはその中でも最適な相手を選べますからね。世の探索者はこれを知らないでやっていると思うと、バカに思えてきますよ」


 ククッ、と。拝賀は忍び笑いを漏らした。

 優越感に浸っているところで悪いが、俺はこいつの方がバカに見える。


 やっぱりこいつ、レベルだけで経験値が見えてないな? 正確には魔力保有値だが。


 俺達のレベリングのキモは、適正レベルの相手と戦えることじゃない。レベルの割に美味しい相手を狙って狩れることだ。


 だからこそスライム狩りという反則な手段を見出し、それに匹敵するレベリング相手を見繕うことも出来た。その結果が今回の遠征での合計4レベルアップだ。


 もちろん適正レベルの階層で活動できるというのは強みではあるんだが、それってたぶん他の一流探索者の人なら自然とやってるんだよな。


 あの人達は常に最前線を攻略し続けたからこそ、その強さを得ることができた。本物の探索者なんだ。情報が何もない暗闇の中を、命懸けで開拓し続ける。それがタケさんやトシさんといった一流というクラス。俺には真似できない精神性だ。


 で、そんな彼らと比べてコイツなんだが……プラシーボだろうなぁ、たぶん。


【鑑定】を使えるようになったおかげって思い込んでいるようだが、おそらく効率は一流の人達とそこまで変わらない。


 レベルが見えることでモチベが上がって、パフォーマンスも上昇。それでようやく一流の人達と同じことをするようになったから、当然レベルが上がったってだけで。


 それはそれで凄いことなんだが、おそらくコイツが今までしてきた努力ってのも、一流から見ればたかが知れてるっていうか。凡人が僕は頑張りましたっていうソレと変わりないというか……。


「【鑑定】の力を知り理解しました。かの森山さん。そして知る人ぞ知るサトウさん。あの人達は間違いなく【鑑定】の持ち主です」

「えっと、そうなんですか?」

「そうでないとあの強さは説明がつかないでしょう? 努力で周りを突き放そうにも限度がある。イカサマに近い何かがないとああはなれません」


 それはまぁ確かにそうかもな。

 コイツを見る限り【鑑定】ではない可能性は高そうだが、それに匹敵する何かはありそうだ。


「ですが【鑑定】を手に入れた今、僕も同じ資格を得たということになります。今までは見上げることしかできませんでしたが、その気になれば僕もあの域に立つことも不可能ではなくなったということです。正直、それを思うと興奮しますね」


 ねぇよ、そんな資格。

 だって君、本質的に何も変わってないもの。


 呆れというか、哀れみというか。俺がどっちつかずの感情を持っているのも気づかず、とはいえ――と、拝賀は続けた。


「今から追いかけたとして、僕があの二人に追いつくのは難しいでしょう。一度ついた差は決して埋まらない。僕が追いかけている間に、あの二人もどんどん強くなり、先を行く。だからこそ僕は、あの二人にはない力を手に入れようと思っています」

「ほう。と言いますと?」

「影響力です。僕は【鑑定】で得られる情報を餌に、ギルド、あるいはクランといった団体を立ち上げようと考えています」


 ほう、ギルドにクランね。男の子としては心躍る名詞だ。

 まるで小畑会みたいだなぁ……!


「適正な狩場の情報。これがあるとないとでは、レベリングに天と地ほどの差が出る。この情報が手に入るとすれば、僕の仲間になりたがる人はいくらでもいます。信頼できる仲間を増やし、全員で強くなる。全員が中堅レベル以上の探索者集団。そのリーダーともなれば、国すら無視できないほどの影響力を持つはず。いずれは僕の意志で社会を動かすといったことも可能になるでしょうね」


 どうしよう。なんかすっごく聞き覚えのある話なんだが。


「あの二人は【鑑定】を秘匿するメリットを取ったようですが、僕は違います。戦闘力と影響力。その両方を狙っていく。お二方とは違った形で探索者の頂点を取る。今の僕ならそれが出来る……!」


 わぁ、凄い野心家だな~(棒)

 はぁ~。いや、どうすっかなこれ……一応突っ込んでみるか。


「仮に森山さんとサトウ氏が【鑑定】の持ち主だとして。秘匿したのは圧倒的な差を付けて、自分達の優位性を保つ為だと思うんですよね。となると、それを崩そうとするあなたの存在が知られれば、消されてもおかしくないのでは?」

「ええ。その可能性もあるでしょうね。なので最初は出来る限り秘密裏に動きます。ある程度の仲間を集め、中堅レベルの数を揃えてから、大々的に僕のやろうとしていることを発表します。大事になれば流石に暗殺は出来ないでしょうし、それでも僕を害するようならあの二人の方が社会に出られなくなるでしょう」


 ん~。まぁ対策としてはありか?

 そもそもあの二人が【鑑定】持ちかどうかはかなり疑わしいけどな。


 でも、大々的に発表というのは駄目だな。この一点だけで小畑会がこいつを排除するには充分な理由になっている。


「自分の仲間にそれを教えてしまうということは、貴方自身と彼らでそう実力に差はなくなることを意味します。それでもいいんですか?」

「ふふっ。小畑さん、貴方も分かっているでしょう? 【鑑定】の所持者である僕達は、同種の魔物でもよりレベルの高い相手を選んで戦うことが出来る。確かに極端な差は出ないでしょう。ですが、確実に僕らは仲間よりも一回り上の強さは維持できますよ」


 いや、ちょっとレベルが高いだけなら、同じ魔物なら経験値にほとんど差はない。むしろ探して狩ろうとする分、何も考えずに狙った魔物を片っ端から戦い続ける方が絶対に効率は良いぞ。


 この子はつくづく、肝心なところを間違えているというか、なんというか……。


「既に準備は終わりつつあります。この三ヶ月、レベルを上げながら都内数か所のダンジョンの二十階層まで、魔物のレベルを調べました。あとは仲間を集めて勢力を拡大し始めることになります。ですが、この計画を崩しかねない存在が居る」

「それが俺、ということですか」


「はい。あくまでこれは僕の仲間だけにやるから意味がある。無作為にレベルの情報をバラまかれては、ここまでの苦労が水の泡になってしまう。それだけは避けなければなりません。だからこそ貴方の勧誘をしに来たのです。貴方が仲間になってくれればその懸念も消えることになりますから」

「……もし断ったら?」


「既に計画は動き出している。障害は取り除かなければなりません。たとえどんな手段を使っても」


 静かな口調ではあるが、拒否は許さぬ、といった強さがある。殺気混じりの目が、その本気を伺わせた。


 そっかー。断ったら殺しにくるかー。

 それじゃあ俺も対処するしかなくなっちゃうなぁ……。


 目を伏せつつ重苦しい息を吐き、俺は戸惑ったように言う。


「話は分かりました。決して無謀な計画ではないことも。ですが正直、話が大きすぎて……そんな物に俺が関わるかと思うと、怖気づいてしまう自分が居ます」


「お気持ちはお察しします。誰だって同じですよ。ですがそこで一歩進めるかどうかが、成功者の分かれ道です。そして何より、この計画が成功すれば僕達が日本の頂点に立つということになります。得られる報酬の大きさを思えば、今感じている不安は些細な物だと思いませんか?」


 拝賀は労わるような口調で俺に言う。そして、冗談を言うように続けた。


「それに心配することもありません。実行するのは僕達です。小畑さんは今まで通りの活動をしてくれればそれでいい。ただ魔物のレベルに関する情報を黙ってくれていれば、それだけでいいのです。欲を言えば、そうですね。小畑さん達が行ける範囲でいいので、僕がまだ調べていないダンジョンを調べてくれるとありがたいかな。あとは僕達にもポーションなどを融通してくれれば」

「そうですね。確かにそれだけなら……」


 それはつまり、自分達はレベルを上げるから雑用はお前がやれ、ってことだな? ついでにポーションも寄こせと。ははははっ、こいつぅ! ぶっ殺すぞお前。


「分かりました。とはいえ、今返事をすることはできません」

「ほう、それはつまり――」


 眉を顰める拝賀の前に、すっと手を差し出す。

 そして、俺は照れくさそうな笑みを浮かべた。


「俺はリーダーですけど、威厳が無くてですね。何も言わずに決めると怒られるんですよ。仲間にちゃんと話して説得してから、返事をさせて頂きます」

「……ふふふっ、なるほど。そういうことでしたか。確かに気の強そうな女性でしたからね。分かりました。こちらが連絡先になりますので、話し合いが終わったら連絡をください」

「はい。必ず」


 良く分かってるな! 七海姉妹もそうなんだけど、小畑会(みんな)気が強いんだ!


 ちゃんと小畑会(なかま)と相談してから連絡するからな! 説得はするけど、失敗しても許してくれよな!


「ただ、すみません。あの子は本当に気が強くてですね。最悪数日かかりそうなんですけど、大丈夫でしょうか?」

「ふむ。それなら僕が出てもいいですが?」


「あっ、いえ! ムリヤリだと禍根が残ってしまいますから! それにあの子達も俺達の大事な仲間なんで、あんまり手荒な真似はしたくないんです! お願いします! どうか俺に任せてくださいっ!」

「そうですか……。それなら渋谷ダンジョンで簡単な依頼でも受けて時間を潰しましょうかね。仲間になる相手ですし、小畑さんの顔を立てることにします。ただし僕もそこまで暇ではありませんから。あまり時間がかかるようなら、その時は――いいですね?」


「はっ、はい! ありがとうございます! 必ず説得しますので! あっ、それからこれ! 拝賀さんなら大丈夫でしょうが、念のため持っていってください!」

「おや、なんだかすみませんね。ありがたく受け取っておきます。それではまた後日」


 俺は慌ててバッグからポーションを取り出し、ヘコヘコと頭を下げながら拝賀に渡す。

 拝賀は満足そうにポーションを受け取り、そのまま部屋から出ていった。


 拝賀が部屋から出て十秒ほど経ち、川辺と伊波はなんともいえない表情を俺に向ける。


「なぁ、楓太。あの拝賀なんだけどよ……その、なんていうか……」

「僕もまさかとは思うんだが……」

「ああ。まぁ二人が思ってる通りよ」


 無駄に警戒していたのがアホらしくなってくる。


「所詮まだ若造。策士気取りのセコイやつ。典型的な小物だわ」


 もう怒るとかの前に、親近感すら覚えたわ。


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― 新着の感想 ―
でけえ組織を数日で作ったメリットもうでた 弱い組織は潰せるって
「クランを立ち上げるなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」
鏡見ろ案件ですね。んで質が数段下がるおまけつき(笑)
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