第57話 遠征⑨
【人物鑑定】
名称:小畑楓太
レベル:14
〈錬金術師〉
【錬金術】レベル4【生産量増加】レベル1【品質上昇】レベル1【人工生命体創造】レベル1
〈鑑定士〉
【素材鑑定】レベル2【人物鑑定】レベル5【魔物鑑定】レベル5【アイテム鑑定】レベル2
〈アイテム使い〉
【アイテム理解】レベル―【アイテムスロー】レベル1
ピーちゃんに迷惑かけておいてなに浮かれてんだ、なんて言われるかもだが。こんなの自重しろって言う方がムリだろ!
ステータス、ジョブに引き続き、とうとう来ちまったなぁ!! スキル情報がよぉ!!
「あっ、レベル上がってんじゃん」
「本当だ。ピーちゃんに気を取られていて気づかなかった。楓太。何かスキルが増えたりしたかい?」
「ん? この〝見通す者〟を呼んだかね?」
「あっ! 伊波さんみたいなことを言ってる!」
「これは絶対に何か覚えたわね」
おっと、バレてしまったか。良い勘をしている。
真なる名でピンと来たらしい。伊波がズバリと言い当てた。
「〝見通す者〟ということは、【鑑定】だね。ということはまさかスキルかい?」
「おっ、マジで? もしかしてスキルのレベルとか見えちゃったりすんのか?」
「ああ。今自分のを見てるけど、一番高いのでも【人物鑑定】とかの5しかないわ。低いと1しかないのもある。【アイテム理解】に至ってはレベルの項目がない」
【錬金術】と【人物鑑定】に【魔物鑑定】。この辺りは使い込んでいるから特にレベルが高くなっているのは分かる。あと奴はこれらに比べれば使い込みが甘かったり覚えたばっかりの自覚はあるから、低くても納得が――
【アイテムスロー】
アイテム投擲時の命中補正が付く。また、アイテム発動時の効果微上昇あり。
「楓太の【鑑定】でレベル5か~。それじゃあスキルのレベルはたぶん最大でも10とか――どしたん?」
「いや、なんか【アイテムスロー】っていうスキル覚えてたわ。アイテムを投げる時に命中補正だとさ。根拠のない自信の正体はこれかと思ったらちょっと……いつ取ったんだこれ?」
便利かどうかって言われると、まぁあったら嬉しけど、これ絶対に必要でもない気がする。これに回すなら他に必要なスキルがあるよなたぶん。
リオドリスを狩ると決める前、ちゃんと出来るかなってチラッと考えたけど。まさかあんなので取得判定が出るの? 嘘でしょ?
俺の落ち込んでいる姿に、七緒ちゃんはなぜかちょっと嬉しそうだった。
「ほら! ねっ! 嘘だって思うでしょ! 自分の意思に関係なく取っちゃう時もあるんですって!」
「いや、七緒ちゃんの【伴奏】は……くそっ。これ言い返せねぇな。ちょっと判定がセンシティブ過ぎやしないか?」
「まぁ〈アイテム使い〉として死ぬスキルじゃないし良いんじゃね? それより俺も見てくれよ。めっちゃ気になる」
「僕も僕も。凄く気になる」
「はい! はい! 私も気になります! 見てください!」
はいはい。順番ね。と言いたいところだが。
「まだやることもあるし、ここで止まり続けるのも危ないから、とりあえずチヨちゃんだけね」
「わーいっ! やりましたっ!」
「贔屓だろそれ! このスケベオヤジが!」
「とうとう本性を隠さなくなってきたね! 見損なったよ!」
「俺のチヨちゃんに対する想いを侮辱するな! 妹を大事にして何が悪い!?」
「人の大事な妹を勝手に妹にしないでください」
まぁ、皆の妹みたいなもんだし。そこは甘く見て欲しい。
そんじゃ【鑑定】と。
【人物鑑定】
名称:七海八千代
レベル:14
〈調教師〉
【テイム数増加】2【テイム可能種族開放】鳥系、獣系【テイム可能レベル上限開放】レベル1【意思疎通】レベル―【テイムモンスター強化】レベル3【テイムモンスター成長率上昇】レベル4【テイムモンスター能力拡張】レベル3【愛の手】レベル4
「はぇ~。なるほどね。分かりやすいわ」
「え? なんですか? どんな感じなんですか?」
思わず呟いてしまった一言に、チヨちゃんがますますワクワクとした反応をする。
全てのスキルを伝えると、チヨちゃん以外の三人も、ああっと納得した声を上げた。
「なるほど。これは確かに分かりやすいわ」
「うん。チヨちゃんらしい」
「大きくなぁれ、って感じですね」
まさにそれ。今の七緒ちゃんの言葉が全てを現している。
テイム数や可能種族。あと【意思疎通】。この辺は〈調教師〉ならデフォルトで備わってる能力だろう。肝心なのは後半のあたり。
【テイムモンスター強化】
戦闘時、魔物のステータスのバフ。
【テイムモンスター成長率上昇】
レベルアップ時の成長補正。
【テイムモンスター能力拡張】
魔物の可能性を広げる。パッシブ。
【愛の手】
テイムした魔物を撫でることによるリラックス効果。疲労軽減効果。回復力促進。信頼関係の強化。
所持しているスキルを意識して見たら、その効果も分かった。今一つ分かり辛いのもあるけど、スキル【鑑定】便利だな。まぁ俺のことはどうでもいい。
チヨちゃんのスキルの中で特にレベルの高いこの四つだけど、【テイムモンスター強化】を除けば育成、成長に関わるスキルだ。たぶん全部パッシブ。常時発動しているタイプかな。
それだけ意識しているから、ここまで成長しているのだろう。まるで〝すくすく育て。立派になーれ〟と言わんばかりだ。
というか【愛の手】ってこれ、日常生活で使うスキルじゃね? 戦闘では一切役に立たねぇだろ。なのにそのレベルが一番高いって……。
「私【テイムモンスター強化】なんて持ってたんですね。それに、私の手にそんな力が……?」
ほぉぉ、とチヨちゃんは感動したように自分の手を見ている。
随分と嬉しそうだが、無自覚だったんかい。ああでも、意識して発動しないから気づかないこともあるのか?
もしかして、パッシブのスキルって気づかないままの人も多いんじゃ? 俺だって【アイテムスロー】には気づかなかったしな。人によっては思わぬスキルを持ってる可能性もあるのか。
「チヨちゃんらしくて良いとは思うけど、ちょっと弱点も見えちゃったかもな」
「え!? 私、駄目ですか!?」
「駄目って訳じゃないんだけど、爆発力がないなって」
ピーちゃんやマルがこれからとんでもなく強くなるのが確定しているようなもんだから、そこはいいんだ。特に【モンスター強化】まで持っていたのは嬉しい誤算といえる。二匹ともやけに強いとは思っていたけど納得した。
ただ、〈調教師〉には【限界駆動】や【狂化】みたいな、強制的に魔物の能力を引き出すスキルもあるらしい。戦闘後に行動不可になったり、コントロールが利かなくなったりといったデメリットもあるが、これらのスキルによる強化率は普通じゃないとか。
戦闘を専門とする〈調教師〉はそれらのスキルを使って積極的に戦う人が多いらしい。魔物の限界を超えさせた結果死なせてしまうこともあるらしいが、それに見合う戦闘力があるとか。
流石に同じことをやれとまでは言わないが、欲を言えばそういった今この瞬間に強力な一撃を与える、みたいなスキルが欲しいところだった。だけど、たぶんチヨちゃんにはムリかもな。
だって〈調教師〉のそういうスキルって要するに、〝魔物に限界を超えさせる〟ってことだから。
ムリせず育ってね。健やかに育ってね。そんなことを考えている女の子が、そんなスキルを覚えるか?
必然的に育成特化ビルドの〈調教師〉になることが確定してるんだよな。それはそれで強みがあるからいいんだけど、まさかチヨちゃんの優しさが仇になる時が来ようとは。
俺の考えを述べると、チヨちゃんはむむっと、ちょっと悩んだようだった。
「確かにムリして欲しくないとは思っていました。でもそんな問題があったなんて……私どうすればいいんでしょう?」
「どうもしなくてもいいんじゃね? 既にピーちゃんもマルも役に立ってるし」
「うむ。それにいずれは二匹共が通常攻撃が必殺、みたいな合理性が極まって逆にロマン溢れる存在になる可能性もある。それにはちょっと時間がかかるというだけの話だ。当然だし、気にするほどのものでもない」
「私だって、ピーちゃんとマルにムリして欲しいなんて思ってないからね。今のままでいいわよ」
俺も皆とおおむね同じ意見。ただ、ちょっとだけ違う点があるとすれば、育成特化ビルドを阻害しない程度に、なんらかのアクティブスキルが欲しいってことくらいかな。
「チヨちゃんはさ。なんかこう、自分がピーちゃんやマルに何かしてあげたいとか、そういうことはないの?」
「え? そうですね~。……いっそ私も一緒に戦いたいと思いますけど」
それは絶対に止めるんだ。確実にビルドに影響が出てしまう!
「流石にそれはムリだって分かってますから――あ。怪我しないで欲しいとか、怪我を治したいとか思いますね! その、最近ピーちゃんの怪我が多いので」
「その節は大変申し訳なく……」
出来れば攻撃系と思ったんだが、これは何も言えんわ。チヨちゃんが心配するのも無理は無いし。
仮に本当に防御系とか回復系のスキルが生えたとしたら、俺には責めることはでき――あ。
【人物鑑定】
名称:七海八千代
〈調教師〉
【守護命令】
使用時、防御ステータスの一時上昇。防御行動全般に能力補正。
マジで増えやがった。
たぶんチヨちゃんも俺と同じで、ステータスが低い分スキルが育ちやすくなっているんだろうが……こんな簡単に覚えちゃうの?
明確に自分のスキルを自覚すると、なおさら成長に反映されやすくなるのかもしれない。これは迂闊にスキルについては話さないほうがいいかもしれないな……。




