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「案外、脆かったな」


 薄ら笑いを浮かべると、蘇邑は矛を頭上高く掲げ、振り下ろそうとする。

 素早く采乎は、十六夜を抱きかかえると、横へ飛び逃げる。

 矛の一撃からは免れたが、炎と霧の衝撃が庇った采乎の背中に触れ、一瞬の間の後、血飛沫が舞い上がる。


「ぐっ!」


 背中に焼けるような痛みを感じた采乎は、苦痛で顔を歪める。


「采乎さん!」


 十六夜が叫んだと同時に、蘇邑は第二撃を繰り出そうとする。

 彼女は采乎の上に自分が覆いかぶさる。


「ふ、ははははは」


 蘇邑が、薄気味悪い笑い声で、矛を振り降ろそうとした刹那、


「何をしておる。蘇奴国王、お前はわしの命を奪いに来たのだろう」


 卑弥呼は蘇邑を小ばかにした言い方で、挑発する。

 蘇邑は矛を振り下ろすのを止めた。


「何!」


「お前は、わしの命を奪いに来たのだろうと言うておる」


「お前を阻む者を殺した後、すぐに仕留めてくれるわ」


「やれ、やれ」


 卑弥呼は首を振り、


「それでは、しょうがないのう」


 と、立ち上がり、


「では、わしたちは逃げるとするか。のう壱与」


 母から急に、そう振られた壱与は、咄嗟の事に訳が分からず、戸惑いながら十六夜たちを見た。

 卑弥呼は、そんな壱与にそっと囁く、


「もうすぐ来る」


「えっ」


「しっ・・・起死回生・・・今はただ時間を稼ぐのだ」


 卑弥呼は、蘇邑と対峙しながら、ゆっくりと出口へと歩きだす。

 十六夜もそれに倣い、母と並んで歩きだす。


「・・・逃げるだと」


 蘇邑は卑弥呼を睨みつけたまま、笑う。


「逃げられるなどと、本当に思っているのか」


「ああ、思っている」


「なんだと」


「今のお前の殺気が、分散している状態では、な」


「ほう」


 蘇邑は、十六夜達を睨みつけると、そこから離れ、卑弥呼の前に立つ。

 矛を大上段に構えると、


「よかろう、女王。望み通り、じかにこの矛でお前の心の臓を貫き、我が本懐を遂げてやる」




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