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 十六夜は采乎の前に飛び出すと、抱きついて采乎をかばう。

 蘇邑は躊躇いなく、矛を一閃した。

 卑弥呼は、その刹那、かっと見開き、壱与は予想される惨状に目を背ける。

 一瞬の静寂がその場を包んだ。


「なっ!」


 蘇邑は、予想だにしなかった光景に驚愕する。

 命を奪ったはずの十六夜の周りに、見えない壁が現れ、炎と霧の一撃を防いでいる。

 采乎は、不思議な出来事に唖然とし、言葉を失う。

 十六夜は采乎の胸に顔をうずめ、死を覚悟したまま、助かったことに気づかず、目を閉じている。


(生きている。十六夜様も私も)


 采乎は小さな安堵感が、込み上げ、十六夜をゆっくり揺さぶる。

 十六夜は恐る恐る顔を上げると、采乎を見た。


「・・・・・・」


「・・・よかった」


 采乎は呟いた。

 互いの無事を喜ぶ二人だが、蘇邑の叫び声に変わらない危機的状況を思い起こす。

 

「何故だ!」


 十六夜は、王の声に振り返ると、蘇邑をじっと見つめ、采乎の前に立ち両手を広げる。

 彼女と対峙する蘇邑は、胸に光る鏡片を見た。


「そうか、鏡片か」


 蘇邑は納得し、頷いた。


「蘇奴国王よ、卑弥呼様、皆を傷つけることは許しません」


 凛として、十六夜は言うが、蘇邑は全く請け合わず、


「お前も死ね」


 蘇邑は、力に任せ、何度も見えない壁に、矛で突き、斬りつけ、叩きつける。

 鬼の形相と矛が壁にぶつかる斬撃音に、十六夜、采乎は恐怖で固まる。


「ふ、はははは、お前が作った壁なぞ、壊してくれるわ!」


 叫びながら、ひたすら壁を叩きつけ、


「ふふ、鏡持つ巫女よ。同じ鏡片を持っていた男のように、壁を壊したら真っ先に首を刎ねてその鏡片を奪ってやろう。その後、卑弥呼の首を刎ねて、皆殺しにしてやる」


 十六夜は、蘇邑の言葉に凍りつく、彼の胸元には二つの鏡片がある。


(彌眞!・・・いや、余波だ)


 鏡片に白虎を見た。

 一瞬、ほっとした十六夜がいた。

 蘇邑は、矛を一閃する。

 彼女の不安と気の緩みで、壁が崩れ去る。


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