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蘇邑は邪馬台国を守る兵士による柵上から放たれる弓矢の雨をかいくぐり、巨大な門までやって来ると、鉄矛を一閃した。
矛先から紅蓮の炎と白い霧が同時に起こり、轟音とともに門が木っ端みじんに壊される。
柵上にいる弓兵へと上段に薙ぎ払う。
矛先から放たれる炎と霧に触れた瞬間、兵達は次々と血飛沫をあげ倒れた。
蘇邑は大きく手を振り、促すと兵達とともに邪馬台国へなだれ込む。
「よいか、目指すは女王卑弥呼がいる神殿だけだ!他の者には目をくれるな。積年の怨み、今こそ晴らす時だ!」
蘇邑は頭上にそびえる神殿を指さし、鬼神の如く大喝する。
王の言葉に、兵達は一斉に鬨の声を上げ、神殿へ駆けだす。
邪馬台国の兵は、蘇奴国軍の猛攻を食い止めようとするが、先頭に立つ蘇邑の一振りで仲間の兵士が倒されていくのを目の当たりにして浮足立つ。
「落ち着け!我らには女王がついておられる!」
劣勢に立つ兵達に、一際甲高い声で狗呼は叫んだ。
続けて、
「よく見ろ!敵の兵は少ない。我らが圧倒的有利、女王様を信じて戦え!」
浮足立った邪馬台の兵士達が落ち着きを取り戻す。
数の力で蘇奴国軍を押し込んでいく。
兵士達は住居、居館、神殿へと繋がる門の前でくぐらせまいと、必死に守る。
さらには、蘇奴国の兵士達の後ろには、難升米の副官が率いる一軍が迫る。
(このままでは、挟撃されてしまう・・・)
蘇邑はいかんともしがたく劣勢立たされる状況に歯軋りをする。
傍らの副官に己の覚悟を伝える。
「皆の事は任せた」
「えっ、王は・・・」
「我は単身で、きゃつの首をとる」
「なりませぬ!」
「よいか、この場所をしばし死守しろ。そして卑弥呼亡きあとは速やかに投降し、命を守れ!卑弥呼は我がやる」
「なりませぬ!!」
「すまぬ」
「・・・・・・」
蘇邑は副官に頭を下げ、大音声で
「皆の者一旦下がれ!」
押し込まれる蘇奴国軍は、王の命に従い全力で下がる。
「では、頼む」
副官にそう言うと蘇邑は馬から降り、ぽんぽんと額を撫で労をいたわり放つ。
守る邪馬台国軍と攻める蘇奴国軍の間に、ぽかりと空間が出来る。
その場に一人立つ王蘇邑。
鉄矛を身構え、雄叫びをあげると、邪馬台の兵へ駆けだす。
存分に矛を振るった。
王の気迫により鏡片は輝きを増す。
紅蓮の炎と白い霧が矛先から火柱、霧柱となって兵達を飲み込んでいく。
倒れた兵達の隙間が出来る。
その間を単身潜り抜け、駆ける。
副官は、王の行く手を見届けると、
「行くぞ!王に続け!後方の敵にも注意を払え!」
王の援護をする為、兵達とともに再び、邪馬台国の兵と激突し激戦を繰り広げる。




