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 余波が狂気の瞳を宿し、喜悦の笑みを浮かべた瞬間、彼の視界が消えた。

 視線に映った火柱が見えた刹那、彼の命が刈り取られた。

 蘇邑の鉄戈の怒りの一撃により、首と身体が切り離され宙高く舞い上がり、蘇奴国王の乗る馬の前足の蹄あたりに落ちた。


 蘇邑は鉄矛についた返り血と炎を払うと、忌々し気に彼の首を睨む。

 凄惨とした場をつくりあげた余波は虚ろ気な顔をして、蘇邑を見ている。


「なんという事だ!このわずかの間に我が兵が!くそっ!」


 語気を荒げ蘇邑は叫ぶと、馬の蹄で余波の首を蹴飛ばす。

 ころころと転がる彼の首。


「ん?」


 蘇邑は馬の近くに光る鏡片を見た。


「これは・・・」


 王は、鏡片を拾う。

 副官が駆けつける。

 蘇邑は言った。


「男、一人に殺られた」


「まさか・・・」


「そのまさかだ」


 蘇邑は鏡片を副官に見せる。


「鏡片・・・では、あの時の男!」


「では、ない」


「それでは・・・一体」


「鏡片は四つ。一つは俺、あとの二つは、彌眞とか言う若者と巫女・・・こいつは最後の鏡片を持つ者であろう」


 蘇邑は顎を動かし、地に転がる余波の首をしめした。

 それから、自分の持つ鏡と、彼が持っていた鏡片を合わせる。

 二人の鏡片が、かっちり合わさる。


「間違いない」


 王は、余波の鏡を首にかける。


「しかし・・・」


 副官は苦渋に満ちた表情で、言葉を絞り出すと、


「これだけの兵を失っては、女王に一矢報いることも・・・」


 蘇邑は副官の言葉を遮る。


「よい、それでも」


「えっ」


「我が、必ず卑弥呼をしとめる・・・しとめる・・・必ず!」


 自らを言い聞かせるように繰り返し言う。

 蘇邑の目が妖しく光った。

 踵を返すと、


「皆の者、臆するな!これより一気に邪馬台国に攻め入り、卑弥呼を討つ」


 王は馬腹を蹴り、邪馬台国へ駆けだす。

 副官も兵士達も沈んだ空気を吹き飛ばし、王の勢いに押されて、次々に後を追う。



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