107
~数か月後~
邪馬台国に春が巡り、心地よい日和のある日。
門前には、ここを去る彌眞の姿があった。
女王の許可を得て、采乎、壱与、夜邪狗が彼を見送りに来ていた。
彌眞は、みんなに深々と頭を下げて礼をする。
夜邪狗は言う。
「ようやく、クニグニを取り戻し、これから忙しくなるのに、お前は行くのか」
彌眞は、にこりと笑う。
「はい。私は伊都国へ帰ります」
「クニに帰ったら、伊声耆殿の墓前に宜しく伝えてくれ」
「はい、必ず」
壱与が進み出て、
「また、戻ってきますよね」
「勿論・・・いつか」
壱与の顔がぱっと華やぐ。
彌眞は全員を見渡し、采乎を見ると、
「采乎さん、いままでありがとう」
「彌眞様、お礼を言うのはこちらの方です。皆さんのおかげで、こんなにも良くなったのですから」
采乎は少し右足を引きながら、ゆっくりと彼に近づく。
「でも・・・」
「えっ」
「残念ですね」
采乎は続けて、
「十六夜様」
彌眞は戸惑う。
采乎はくすりと笑う。
彼はしどろもどろに、
「そ、そんな事はありませんよ」
どもりながら答える。
「嘘を言ってはいけません」
と、采乎。
「はい」
彌眞が返すと、二人して笑った。
采乎は真顔になると、
「ずっと、行くのを反対していらしたから・・・」
「分かっていました」
「そう・・・ですか」
彌眞はにっこりと笑うと、名残惜しさを振り切るように、
「それでは!」
と、一際元気良く話を切る。
「では、行きます」
彌眞は後ろを見ず、走り出した。
一気に丘を駆け上がると、そっと振り返る。
みんなの姿が小さく見える。
彼は苦笑混じりの溜息を小さく吐き、道の先を見据え歩きだす。




