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106

 暗闇が包む広間の中、小さな灯りだけが二人を照らしだしている。

 卑弥呼と狗呼は座り対峙している。

 女王は、弟王から戦いの報告を聞いた後も、ずっと黙り込んでいる。

 卑弥呼は大きく嘆息すると、


「わしも年老いた・・・おいぼれよ」


 自分を卑下し呟いた。


「そんな」


 狗呼は膝を乗り出し言う。

 卑弥呼は首を振り、


「こたびの戦は、とんだ読み違いであった」


「大勝ではございませんか」


「表向き・・・はな」


 卑弥呼は灯の明かりをじっと見続け、


「まず狗奴国王が、この戦に赴いていなかった事、次に神殿聖域を犯されてしまった。そして、それを予測出来なかったワシ・・・」


「それは・・・」


「勝てたのは、運が良かっただけかもしれん・・・奇跡が現実を目の前にして起こった・・・人の心の強さによって・・・ワシは、それを甘く見ていた」


 卑弥呼は視線を天井へと移す。


「されば、如何なさいましょう」


「・・・そうだな、狗奴国王が出征してないなら、此度はかのクニを根絶やしには出来まい。しかし、我らの奪われたクニグニは取り戻さなければいけない」


「はい」


「狗奴国もあれだけの兵を送り込み大敗した後だ。クニグニを取り戻すことは容易・・・」


 卑弥呼は一旦、言葉を止める。


「容易ではあるまいが、一気に押し込んで失地を取り戻す」


「その後は・・・」


「その後?・・・狗呼よ、何を言っておる。それまでだ」


「今こそ、狗奴国に攻め入る好機では」


「・・・ふむ」


「姉上!」


「ワシは老いた。この先は後の者達に、このクニグニの行く末を託したい」


「・・・しかし」


「ワシは、それが出来ると信じる」


卑弥呼は確信した表情で頷いた。

狗呼は女王に疑いのない瞳をむけられて、ただ頷くしかなかった。

やがて、広間を薄明るい光が包み込む。

もう、夜明けを告げていた。



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