104 十五、終わりなき道
十五、終わりなき道
彌眞は静かに目を開けると、ゆっくりと上半身を起こした。
隣には、卑弥呼の特別なはからいによって、十六夜達がいる。
その十六夜は静かに寝息をたてている。
隣の采乎からも、落ち着いた寝息が聞こえる。
二人を起こさないように彌眞は静かに立ち上がると、弓を持ち居館の一間から外に出る。
やけに外が明るいと気がつき、上空を見上げると満点の星が輝いていた。
彌眞は居館の方に視線を移すと、後ろへ振り返り門の外へ向かおうと歩きだす。
彼の後ろで、声が聞こえた。
「彌眞、どこに行くの」
十六夜であった。
彌眞は振り返り、微笑むと、
「ちょっと」
と言葉を濁すと、再び門へ向かって歩きだす。
十六夜は思い切って言ってみた。
「余波の所へ行くのでしょう」
彌眞はその言葉に立ち止まった。
十六夜は駆け寄る。
「私も行く」
「駄目だ」
「何で」
「・・・何でって、狗奴国の残党がいるかもしれない。それに采乎さんは」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃない」
「絶対、大丈夫」
彌眞は溜息をつき、
「どうして、そんな事が言えるのですか」
「信じているから」
「・・・戻りなさい」
「嫌!」
十六夜はそう言うと、彌眞の正面に立ち瞳に訴える。
彼は大きな溜息をつき、
「どうなっても知らないからな」
「大丈夫、彌眞が助けてくれるでしょう」
彌眞はさっきよりも、大きな溜息をつき、二人は並んで歩きだす。
二人が門に着くと、今だ物々しい警備が敷かれていた。
篝火が何本も焚かれ、その場だけが煌々と明るい。
彌眞は夜邪狗を探し出すと、彼の元へ行き、
「すみません、外に出たいのですが」
と尋ねる。
夜邪狗は彌眞の顔を覗き込み、首を振る。
「馬鹿な事を言うな」
夜邪狗は取り合おうとしない。
彌眞は顔を近づけると、
「仲間を連れて帰りたいのですが」
「あいつか・・・」
夜邪狗は渋い顔で腕を組む。
余波は、今までの奇行は忘れ去られ、獅子奮迅の活躍によって兵士達の間では英雄になっていた。
が、夜邪狗は、それがいまだに信じられない。
「お願いします」
彌眞は必死に頭を下げ、懇願する。
「しかし、こんな夜でなくても」
「一刻も早く、連れ戻したいんです」
「・・・だが・・・」
二人の間に十六夜が進み出る。
「お願いします」
と、訴える。
夜邪狗は彌眞を見ながら、
「この巫女さんは・・・」
「仲間です」
即座に答える彌眞に、夜邪狗は大声で唸ると、彌眞へ松明を投げ渡す。
「よし!行け。ただし危険を感じたら、すぐに帰ってくること」
二人は大きく頷くと、急いで駆けながら、門の周りを囲む兵士達をかき分けて、外へ飛び出した。




