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「お母さま、集めてきました」


 その声に、卑弥呼はゆっくりと目を見開く。


「鏡片を集めるのに、二人の手を借りただろう。」


 にたりと卑弥呼は笑った。


「・・・・・・」


 何も言えず、おどおどする壱与に、女王は、


「まぁ、よい。十六夜、彌眞もこちらへ」


 彌眞は、ゆっくりと歩き、女王から離れた位置に座る。

 十六夜は首を振ると、膝元の采乎を見る。

 卑弥呼は頷いて、目でその場にいてよいと伝える。

 

 卑弥呼は壱与が胸元に大切に抱きかかえる四つの鏡片を見ると、感慨深げに、


「ようも、何十年と行く月日を経て、揃ったもんじゃ」


 と、嘆息をあげる。


「壱与、四つの鏡を合わせて見よ」


 と言う。

 女王の言葉に、壱与は力強く頷く。

 壱与は床に、北の玄武。東の青竜、西の白虎、南の朱雀と慎重に鏡を合わせる。

 合わせた刹那、鏡片はそれぞれに光を放ち、広間を眩しく照らしだす。

 その光はやがて激しくうねり、再び一つの鏡となる。

 静かに光は消えて行った。

 再び、広間は薄暗くなる。


「これで鏡は戻った」


 卑弥呼は、じっと鏡を見つめたまま頷くと、


「壱与、鏡を持ち上げてみよ」


 壱与は恐る恐る手を伸ばし、鏡を持ち上げる。

 不思議なことに鏡は完全にくっついて、一つの神獣鏡になった。

 彼女は、驚き、まじまじと鏡を見る。


「それは、お前の鏡だ」


「えっ」


 再び、驚く壱与。


「この鏡は、四つのすべてが揃った今、恐るべき力を持つようになった。それを使いこなすことが出来るのは、お前しかいない」


「・・・・・・」


 鏡を見つめたまま、呆然となる壱与だったが、


「私は、鏡を持つ資格はありません。鏡を持つふさわしい人物は、十六夜と彌眞です」


「それは違う」


 即座に卑弥呼は否定し、続けて、


「壱与・・・そなたは、じきこの邪馬台国を、そしてクニグニを背負わなければならない。それは分かっておろう」


「はい」


「この鏡は、元来、このクニの主となる者の元にあった物だ。私はこの鏡に幾多の窮地を救ってもらった・・・恐らく近いうちに、ワシは死ぬ。そのあと、倭国は再び大きく乱れるであろう。それを治めるには、この鏡の力が必要だ」


「でも・・・」


「誰も今すぐにとは、言うておらん。私の命があるうちに、鏡の所有者になるに相応しい者にならなくてはいけない・・・その為には・・・」


 卑弥呼はそう言うと、十六夜の瞳を見、彌眞の瞳を見、采乎を見つめる。

 そして深々と頭を垂れる。


「今まで、辛い旅、戦いを乗り越え、よくやってくれた。これからも、何卒、壱与を、邪馬台国を見守ってくれ」


 卑弥呼はそう言うと、いつまでも頭を垂れたまま顔を上げようとしなかった。



 



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