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 十六夜は息を殺し、二人の戦いを見続けている。

 それは尋常な戦いではない。

 炎と光が激しく交錯する。

 しかし、炎を纏った蘇邑が、光を纏う彌眞を圧倒している。

 炎に押し込まれ、光が弱弱しくなっていく。


 十六夜は無意識の内に、蘇邑へと走る。

彌眞への左腕の拘束を外そうと、その腕へ体当たりする。

 が、絞めあげる腕は外れる事がなかった。

 彼女は必死にそれを解こうと、両手で左腕を離そうと引っ張る。


 蘇邑は、そうさせまいと頭突きを繰り出す、十六夜は軽い脳震盪をおこし膝から崩れ落ちる。

 王は、それを契機として、さらに握力を強める。

 彌眞は危うげな意識の中、何とかしようと右手を伸ばし蘇邑の顔面を押さえつける。


 意識が戻った十六夜は、額から血を流しながらも、たどたどしい足取りで、蘇邑の腕にしがみつき、噛みついた。

 王は怒り、何度も十六夜に頭突きを繰り出す。

 必死に耐え、噛み続ける。

 

 彌眞は薄れる意識の中、十六夜を見る。

 

(十六夜を・・・!)


 最後の気力を振り絞り、首への締め付けを両手でほどこうとする。

 彼の強い意思に、鏡片が反応し光が輝きを増し、炎を圧倒しはじめる。


 蘇邑は、攻勢を封じようと、必死に左腕に力を込めるが、それを阻止するかのように白い霧が、王の胸元の鏡片から発生し視界を奪う。

 刹那、左腕の力が抜ける。

 彌眞は最大限の力を出し切って、拘束から逃れる。


 彌眞はその場から脱すると、矢筒から矢を取り出す。

 再び、蘇邑へと飛びかかる。


「うおおおおおぉぉぉっ!」


 彌眞は雄叫びをあげ、矢の先端、(やじり)を王の喉元へと突き立てる。

 矢が金色へと輝く。

 蘇邑は、刹那笑った。

 鏃が、喉元へ触れると彼は絶息した。

 彌眞は、鏃を王の喉元に突き立てたまま、微動だにしない。


 十六夜は決着を見守ると、意識を失った。

 次第に炎と光の交錯がおさまる。

 彌眞は矢を抜き取ると、その場から動くことが出来ずに、呆然と腰砕けになる。


 卑弥呼は静寂の訪れた場所で呟く。


「これで、戦は終わった」


 壱与は身体を震わせながらも、一部始終見ていた。

 采乎は気を失ったまま倒れている。


 気付けば、薄暗くなり、夜の帳が邪馬台国を包みこもうとしていた。

 時は今も流れている。



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