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18 ヒミツとノワール君?


 串揚げを平らげた俺達は、相変わらず声を掛けてくる冒険者を適当にあしらいながら、家路を急いだ。



 別邸の俺の部屋に集まり、話を続ける。

「まずスズネには、俺達のことを理解してもらうために、前世の話をするね。」

「前世ですか?」


《 いきなりこの話からってのもなぁ・・・色気もへったくれもない・・・》


 「そう。前世。端折(はしょ)った言い方をすると、人は死んだら生まれ変わるんだ。」

 「生まれ変わる・・・」


 《 そのヘンの反応は ”普通” だよな。》


 「まあ、天国に行ったり地獄に堕ちたりして、生まれ変わりにも色々と条件がつくけど、今はそう言うものだと理解してくれればいいよ。時間が出来たら、僕の知る限りのことを教えてもいいけどね。」

 「・・・お願いします。」


 《 あら以外? 興味あんの? 》


 「で、僕とメイの共通点は、前世の記憶があり、おそらく同じ異世界から転生してきたということかな?」


 メイに話を振ってみた。

 彼女は俺のベッドに腰掛け、足をブラブラさせている。


 「そうね。私の記憶は日本の東〇でOLしてたんだけど?」

 「僕は福〇県かな?事故死か何か?」

 「多分、過労死。ブラックだったからね~ 坊ちゃまは?」

 「不明。運転中にいきなり創造神エルサデラ様に呼ばれた。」

 「創造神!? いきなり大物じゃない?あたし呼ばれた記憶さえないよ?」

 「そういうケースもあるのか・・・何が基準かね?」

 「創造神ってどんな人だったの?光り輝いてた?女神様だったり?」


 《 食いつくな~ 流石渋〇系w》


 「その話は。追々ね、スズネが固まってるから・・・スズネ。ごめんね?記憶の擦り合わせが意味不明だったね。」


 「いえ、できれば私にも分かるように話して下されば・・・」

 「そうだね・・・」


 それから俺はこの『ヘマ』と呼ばれる世界とは全く別の『地球』という世界から記憶を持って転生したことや、前世では魔法がなく魔物もいない快適な世界であったこと。文明が発達し、馬車の代わりに『自動車」や『電車』、『飛行機』で移動していたことを話した。


 「は~ とても信じられません。魔物がいない平和な世界なんて・・・」

 「だろうね。僕も最初は戸惑ったよ。魔法が普通にできて、森に魔物がうじゃうじゃいる世界なんて、PCでしか見たことなかったし・・・」


 「だよね~。私も何度も食べられそうになったよ。よく今まで生きて来れたわ。」

 スズネと俺の感想に、メイがしみじみと呟いた。


 《・・・だろうね。『勇者』という称号に助けられた部分も、かなりあったろうしね。》


 気になったのでメイに話を向けてみた。

 「物心ついた時から一人だったの?」

 「そう。知らない人から母乳貰ってたかな?少し動けるようになったときに、盗賊に襲われちゃってね。一人で逃げるのが精いっぱいだった。」


 「それはまた、大変だったね。」

 《 まんま野生児だったか・・・》


 「生まれた時点で捨てられたようなモンだけど、育ててくれた村の人達には感謝してる。もういないけど・・・」

 「忘れないでいてあげてね。」

 「わかってるわよ。坊ちゃまはどうだったの?」

 「ん?僕の両親は健在だよ?」

 「じゃなくて、前世の話。リーマンだったの?」


 「リーマン?」

 メイの単語に、スズネが首を傾げた。


 《 こらこら・・・スズネの知らない単語で遊ぶんじゃない。説明が面倒だろうが。》


 「商店に勤める人のことだね。正確にはサラリーマンって言うんだけど、数年間ほど派遣社員とかやってたけど、結局、歯医者に落ち着いたかな。」


 「歯医者?」

 「そう。歯医者。虫歯なんかを治療する職業だね。」


 「へ~ アタマ良かったんだ。」

 「ピンキリさ。スズネ。官僚なんかにも()()()()()()()()()とそうでないのがいるだろ? 僕は自慢できるほどの、デキのイイ方じゃなかったよ。」


 「とてもそうは見えません!だって『ビート粉末』や水車小屋を開発したり魔族を単独撃破したり、素晴らしい活躍をなさったではありませんか!」


 《 まあオチツケw》


 「ありがとう。でもそれは、所詮前世の記憶を参考にしただけだよ?話が脱線したね。戻そうか・・・で、僕たちは『勇者』の称号を与えられて生まれ変わったんだけど、今世において複数の『勇者』が出てきたのは『魔王』と『魔神』が同時に復活するらしいからだとさ」


 「・・・初耳なんだけど・・・」

 「王宮では教えてくれなかったか・・・とにかく、そういうことで天界では非常事態として『複数の勇者』を地上に降ろすことにしたらしいね。」

 「それでか・・・私の他にも、もう一人『勇者』がいたらしいけど、アイツいまドコに居るんだろ?」


 「もう一人?そっちが初耳なんだけど?」


 《 新情報・・・機会があったらサラフィナ様に聞いてみるか・・・》


 「一回だけ会ったかな?すっごく横柄なヤツでさ、酒と女と博打に夢中だって噂だったよ?」

 「そりゃまた羨ま・・・んん!自由な人だったんだね。」


 メイの瞳がじとっと俺を見た。

 あら?


 「・・・ねえ、聞いていい?」

 「ん?」

 「前世では幾つで死んだの? 時々、すっごい年上に感じるんだけど?」


 《・・・あっさりバレたw・・・》


 「・・・63・・・」

 「へ?」

 「享年63歳でした。」

 「うっそ~~~じいさんジャン!」

 「じいさん言うなシ! 今世はまだ三歳だっての!」

 「前世含めて66ジャン!?『坊ちゃんサギ』じゃん!」

 「うっさい!」


 「メイ!いい加減にしなさい!不敬ですよ!」

 「はーい。」


 「コホン!ま、そういう事だから、当面の目標はダンジョン踏破(とうは)かな?その後のことは追々話すよ。それでスズネに協力してもらいたいことは、僕達がアストラス領に戻った後の王宮の動向が知りたいんだ。」


 王宮の話になると、スズネは少し緊張したようだ。

 「・・・と、おっしゃいますと?」


 「王宮もおそらく一枚岩じゃないよね? 今は教会の権威が低迷して国王陛下は喜んでいるけど、貴族の中にも過激派だの穏健派だのがいるんじゃないかな?跡継ぎ問題でも、さらに派閥が分かれるだろうし・・・」

 「その通りです。流石のご慧眼(けいがん)。感服いたしました。」


 《 異世界あるあるだからね~ メイ笑ってるし・・・》


 「はっきり言えば僕達はそんな些事(さじ)に振り回されたくないんだよ。『魔神』や『魔王』が勝てば、人族はおろか、亜人も含めて絶滅の危機だしね。・・・それに魔族の情報も王都に集中しやすいだろうから、調べて欲しいかな?」

 「畏まりました。他の“(くさ)”とも連携をとり、動向を探ります。」


 「王国のゴタゴタを些事(さじ)で片付けちゃうんだ」

 メイは呆れたように俺を見た。


 「些事(さじ)だよ。政治を(あなど)るワケじゃないけど、ソレは全て ”生きててなんぼ” の世界だからね。」

 「そりゃそうだけど・・・」


 「『勇者」の称号が与えられている以上、僕らはイヤでも『魔族」と敵対することになる。彼らにとって『勇者」は脅威(きょうい)以外の何者でもないからね。”生き延び” たいなら、まず強くなることに集中すべきじゃないかな?」


 そこまで言うと、俺は今度はスズネを見た。

 「あまり深く探らなくていいよ?僕は出世だの権力だのには興味ないし、アストラス領に迷惑が掛からなければ王宮内で()()()()()()()()()()()()って思ってる。あ、でも戦争が起きそうなときは早めに教えて?場合によっては、どっかに亡命することも考えなきゃね。」



 「亡命するの?」

 メイは不安げに俺を見ている。

 無理もない。

 せっかく見つけた ”屋根のあるの生活” から、また ”逃亡生活” に逆戻りするかもしれない不安は、ある意味 "恐怖” だ。


 「人族同士の争い加担するつもりはないよ。・・・王様の()()()()()()()戦争が止められるなら、王宮に乗り込むことを考えてもいいけどさ。国同士が本気になって剣を抜くときは、そんな単純な話では終わらない段階まで話が(こじ)れてしまってる場合がほとんどだからね・・・そうなると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ。巻き込まれないうちに逃げるのが一番さ。」


 「そっか・・・だよね。」


 《 ま、戦争になったら年齢関係なく『勇者』が前線に送られそうだからな~・・・頼んますよ王様~》


 「スズネ。僕はスズネ以外の“(くさ)”を故意に探さないようにする。向こうから接触してこない限りね。勿論、どういう組織かなんてのも興味ない。ただ僕の依頼に対して危険なことはして欲しくない。言ってる意味は解るね?」


 「・・・承知致しました。」

 スズネは神妙に頭を下げた。


 「情報料については。僕の小遣いと、これから稼ぐダンジョンの稼ぎからなんとかするよ。少ないけどね。」


 俺がそう言うと、メイが不思議そうに頭を(かし)げた。

 「『ビート』とか?『水車小屋』とか? “チート”のアイデア料は?」


 《 目敏(めざと)いねw》


 「あれは全部アストラス領に渡すことになってるし、魔族退治の報奨金も『水車小屋』建設に回すからね。あってないようなもんさ。何か新商品考えるかな?」

 「太っ腹ね~ 私ならせっせと貯め込むこと考えるのに・・・」


 《 だね~。俺もそうしたかったよw》


 「貴族ったってお金が無限に湧いて出てくるわけじゃないよ。ましてやアストラス家は下級貴族だからね。君が思ってるほど蓄えはないよ?」

 「世知辛いわね。 ま、私も何か考えてみるかな?」


 《 お? ”異世界でソノ気になったブラックOL” ナニする気でしょうねw》


 「うれしいね~ 孫に助けられるジサマの気持ちがよく解る。」

 「自分でジサマ言うなし!」


 「へいへい。と、さらに話題をもう一つ投入しておこう。ノワール君出ておいで。」


 俺は足元の自分の影に声を掛けた。

 足元の影がにゅっと変形し。一匹の猫になった。


 真っ黒で、尾が二つに分かれている。

 『ネコマタ』ってヤツだ。

 黄金色の、まん丸い瞳が、なんとも愛くるしい。

 「にゃ!」と鳴くと、俺の頭に駆け上がった。


 「わ!ナニコレナニコレ!カワイイ!」

 「これは!魔獣ですか?」


 《 二人ともオチツケw》


 「いや、神獣だね。闇の神様のペットらしい。昨日の夜生まれて契約したんだ。名前はノワール、よろしくね。」

 「へ~ 神獣か~ 闇の神様とも知り合いなんだ~」

 「直接会ったことはないけどね。『恥ずかしがり屋さん』だって。」

 「闇の神だけにね。誰からもらったの?」


 《 鋭いね。もう ”直接(もら)ってない” ことに気付いてる・・・》


 「“サラフィナ神”様という光の神様?・・・かな?属性神じゃない気がするけど。」

 俺の呟きにスズネが答えた。

 「“サラフィナ神”は一般的には“光の神”とされていますが?」

 「そうなの?まあ、いいけど・・・」


 メイさん呆れ顔だ。

 「大雑把ねぇ。相手の情報くらい把握しときなさいよ。」


 「軽口叩く程度の会話で終わらせてるからね。根掘り葉掘り聞くのも失礼だろうし、今度会ったら聞いてみるかな?」

 「気軽に会えちゃうんだ。『勇者』じゃなくて『神子』じゃないの?称号合ってる?」

 「そんな大層なもんじゃないよ。しっかり『勇者』だよ。()()()()()()()()()かます人だよ。」

 「難儀な称号ねぇ。」


 「キミもね。それはさておき、このノワール君だけど、生まれたばかりでまだ何ができるか分かってないんだ。僕の陰には潜れるようだけど・・・」

 「では、そのノワール君?の能力も把握といけませんね。」


 《 おっとスズネさん? 動物虐待はオマワリサン事案でっせ? 〇護団体がスキップしながら押し寄せまっせw》


 「そだね。でも今はまだ様子見かな? 外界に慣れさせないといけないから、ぼちぼちでいいよ。」

 「承知しました。あの・・・触ってみても?」

 「ノワール君。スズネの方に行ってみる?」


 ノワールは「にゃ!」っと一声鳴くと、スズネの胸に飛び込んだ。


 《 おおう! なんて羨ましいヤツ!!》




 二人とも思いもかけないサプライズに大はしゃぎだ。


 「わ~!か~わいい~!・・・って、この子“女の子”じゃん!?」


 《 ナンテコッタ!》









 その日の夜


《 夢か・・・》


 はっきりと “夢” と自覚できる “夢”


 広々と芝がと生い茂る大地に ”地平線の彼方” から延びる満天の星空。


 生まれて初めて王都に向かう途中の野宿でも、輝く月と星空に感激したものだが、ここはソレを上回ると言っていい。


 “何も無いようで全てがある”


 虫の音一つない広大な空間が、それを思わせた。




 「・・・綺麗だ・・・」

 呟くのが勿体ないと思えるくらいの感動だった。


 「・・・ありがとう・・・」

 声に振り替えると、少女が静かに立っていた。

 黒く伸びたストレートな前髪。

 黒いワンピースから延びる白く、細い手足。


 前世の日本で大ヒットするとともに一代ムーブを巻き上げたホラー映画を思わせるいでたちだが、恐怖感を(いだ)かせるようなものではなかった。



 「・・・コレ、キミが創ったの?」


 「・・・そう。ここは私が創った世界。」


 「すごいね・・・すごく綺麗だ・・・」

 陳腐な表現だが。それしか言えなかった。


 「・・・うれしい・・・」



 気が付くと、目の前にテーブルセットがあった。

 木目の美しいテーブルに、紅茶が湯気を立てている。


 「・・・どうぞ・・・」


 「ありがとう。」

 アールグレイの仄かな香りが鼻腔をくすぐる。

 「・・・おいしい・・・」


 素直な感想に、少女は微かに微笑んだ。


 訪れた沈黙が不快ではない。


 「・・・ここは “始まりの地”? それとも “終り” ?」


 「・・・両方・・・」


 《『生まれ生まれて。生の始めに冥く、死に死に死んで、死の始めに冥し』・・・誰が詠んだ言葉だったか・・・》


 「・・・違う・・・似てるけど違う・・・それは “人の世の世界”・・・」


 「・・・そっか・・・ゴメンね。勘違いしてたかも・・・」


 「・・・構わない・・・」


 怒ってはないようだ。

 再び、静かな時が流れた。




 「・・・()()()()が、僕を呼んだのは何故?・・・」


 「・・・お礼を言いたかった・・・」


 「・・・お礼?・・・」


 「・・・私のペット・・・」


 ノワールか。


 「可愛い子だね。素敵なプレゼントをありがとう。」


 少女が再び微笑んだ。


 「・・・きっと “役に立つ” はずだから・・・」







 暗闇が帰ってきた。







 朝日がまぶしい。

 目覚めは快適だった。


 「ノワール・・・居る?」

 にゅっと出てきた黒猫が、大きなあくびをした。

 「コメン。まだ眠いか。君の御主人に会ったよ。綺麗な子だった。君が生まれて喜んでたよ。」


 ゆっくりと撫でる。

 不思議そうに見上げる黄金色の目が愛おしい。

 「ふふ・・・今日もよろしくね・・・」

 黒猫は「にゃ!」と一鳴きすると、陰に戻った。


 さて、

 今日も元気にシバかれますか!




卵生のネコマタww


次回 3月8日更新予定です。

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