19 チートなマッチとセルア商会と諜報員
10月14日 修正しました。
「ねえスズネ。生活魔法が使えない人って、どうやって火を起こすの?」
冒険者ギルドで、訓練終了時に串焼き片手に聞いてみた。
「え?火起こしですか?普通に『発火石』を使ったりしてますが?」
「その発火石が無かったり。水に濡れたりした場合は?」
「濡れた発火石は使えませんので、乾くのを待つか、乾いた木を拾って『火種』を作るしかないでしょうね・・・」
《 うむ。”生活魔法主体の文化” ってそんな感じかね?》
「ふ~ん。『発火石』って値段どれくらいするの?」
「小さいので、銀貨1枚くらいでしょうか・・・少々高いですが、丁寧に使えば長持ちしますので・・・」
「どのくらい長持ちするの?」
「そうですね、専用の袋に入れておけば2~3年は持つでしょうか・・・」
几帳面に答えてくれたスズネに、俺は数枚の銀貨を渡した。
「スズネ。お金渡すから『発火石』一つ買って来てくれない?メイはギルド受付に行って、クズ魔石貰えないか聞いてみて?1~2個あればいいから・・・あと樹液って手に入る?」
「樹液ですか? 治療院に行けば ”怪我の治療用” に常時置いてあると思います。」
「少し分けてもらえるか聞いてみて?無理なら森で採取してみよう。」
「何?チート?」
「まあね。試しに作ってみようと思ってね。」
素材はあっさりと手に入った。
別邸に戻った俺は厨房に入り、発火石をスズネに渡した。
「これが発火石?どうやって使うの?」
「このように、ナイフの背や硬い石を当てて ”擦る” と火花が出ます。」
ナイフの背で『発火石』を強くこすると、火花が出た。
「まんま、ファイヤースターターだね。」
「向こうの世界の火起こし道具だね・・・出来るかな?」
「何作るの?」
俺は『クズ魔石』をゴリゴリ削りながら、短く答えた。
「マッチ。」
「な~る!異世界あるあるね。」
よくご存じでw
「マッチとは何ですか?」
『前世の記憶』が明確に残っている 俺とメイの間では ”当たり前” に使われている単語でも、スズネには ”意味不明な暗号” に聞こえるのも無理はない。
なので会話の中で分からない『単語』が出て来たら、何でも聞くように言ってある。
話の腰を折られようとも、なるべく解りやすく 説明するつもりだ。
”ハブられる辛さ” は、『前世』でイヤというほど 経験しているからなw
「”安価で簡単に火を起こせる道具” を 作ってみようかと思ってね。」
スズネに 火花が出ないように注意しながら、削って粉状にするように指示した。
過去に異世界に転移もしくは転生した者がいなかったのか、それとも ”そういった知識” を誰も持っていなかったのか?
あるいは『魔法』という ”便利な力”に圧倒されているだけなのかは 知らないが、この程度の小道具で『世界』が大きく変わるとは考えにくい。
『マッチ→爆竹→爆弾』なんて危険性も ”無きにしも非ず” だが、考え出したらキリがないので頭の隅のダストシュートに放り込んだ。
作り方は簡単だ。
『クズ魔石』と、『発火石』をゴリゴリ削って、別々に温めた『樹脂』に混ぜるだけ。
試しに、クズ魔石:樹液を1:2。
発火石:樹液も1:2 の比率で作ってみた。
爪楊枝程度の枝の先に、ごく小さい十字の切れ込みを入れ、『クズ魔石』の粉末を混ぜた液体に漬ける。
付着先端部分だけを乾かして、また着ける。
『積層法』というう奴だ。
その作業を何度も繰り返して、それらしい形を作った。
最終工程として ”発火石の粉末を混ぜた樹脂” に浸して固めた。
西部劇なんかでは、カウボーイは 柱やブーツにこすりつけて 煙草に火を点けていたが、要は『摩擦係数』が大きければ発火は容易いのではと思い、パピルスに強く擦り付けてみた。
「燃えたね~」
「一発成功じゃん!」
「は~、こんな方法もあるんですね~」
「発火点が低いかな?・・・火の勢いが強すぎて、すぐ燃え尽きちゃうね。割合を変えてみようか。」
何度かトライ&エラーを重ね、およその比率を出したところで、マッチ箱の外装を考える。
「ムクノキみたいな葉があれば、着火は容易いんだけどな~」
「ムクノキ?知らない。」
「”紙やすりみたいな葉っぱ” があるんだよ。乾かして箱にくっつければ 着火しやすいだろ?」
「ありますよ?」
「「え?」」
「ムクノキというのは知りませんが。ヤスリハという葉は、擦ると木の表面がキレイになるので、大工や木工職人が使ってます。」
「「それだ!」」
早速手に入れて メイとスズネに『試供品』を作らせ、俺は『資料』を作成して父の前で実践して見せた。
「ほう・・・」
「火魔法が使えない人用で、『発火石』よりはるかに火が長持ちします。材料は、『発火石』と『クズ魔石』の粉と『樹液』を使っているので、材料費も低く抑えられます。こちらが ”製法における詳しい資料” になります。」
父は ”試供品と資料” をじっくりと見比べ、やがて頷いた。
「・・・で?何が目的だ?」
「王都の動向を知るために、スズネに探ってもらおうと 思っています。」
「うむ・・・で?」
「『政治』に興味ありませんが、『魔族』の情報や、 ”他国との戦争の予兆” などがあれば逸早く知っておきたいと思います。」
「戦争か・・・あると思うか?」
「無いに越したことはありませんが、 ”政治的対立” や ”後継者争い” とかで『内乱』が起きた時、他国がこれ幸いと ”ちょっかい” を掛けて来ないとも限りません。その『情報料』が必要かなと思いました。」
「私が得る情報では不満か?」
多分、貴族同志の情報交換(お茶会を含む)の話をしてるんだろうが、 ”我欲の強い貴族” は『立身出世』や『利権』にばかり目がいって 視野が狭くなりやすいモンだ。
しかも母は軟禁中の身だ。
自然、外部の情報が限られてくる。
最も正確な情報と言えば、『王族』が頭に浮かんだが、不自然なくらい ”それらしい人” に会えなかったんだよな。まるで 警戒でもされているように・・・
《手の内を見せすぎたか?》
「いえ。決して ”そういう意味” ではありませんが、『情報』というものはある意味『ウワサ』と一緒で一方向から見た場合のみ の話であったり、伝聞の中で ”ワザと事実を捻じ曲げて伝える” 場合が多いのです。そのため、入手した『情報』が正しいか否かを検証するには、いくつかの『窓口』『を用意して真偽を擦り合わせ検討する必要があります。ところで父上は ”王都の情報” を得る為にスズネを使いますか?」
「いや、あくまでメイドとして雇ったし、もしもの時は ”家族を守るように動け” と言いつけているだけだ。」
「ならスズネからの『情報」も取り入れてみては如何でしょう?ただし ”命懸けで情報を取ってこい” とは言えませんので、立ち入ったことは聞けない と思いますが。」
「・・・信頼か?」
「それもあるでしょう。三歳の子供ですし。けど僕が最も必要としているのは『修行』の邪魔にならないように 遠くから見守る程度” の『情報』で、それ以外は 割とどうでもいいのです。」
「ふ・・・どうでもいいのか・・・」
「はい。王宮内のゴタゴタは ”彼ら自身の手で解決される” ことを祈るばかりですが・・」
「解かった。スズネもいいんだな。」
父は俺の後ろに控えるスズネに、視線を送った。
「はい。問題ありません」
「気になる情報が入ったら、私にも教えて欲しい。」
「解りました。」
“草” という組織は『情報』を大事にする『組織』だと俺は踏んでいる。だからこそ依頼があれば命懸けで『情報』を持ち帰ろうとするし、依頼達成の為の『生存術』『にも長けている。それが信頼につながるなら、滅多なことでは『偽情報』を与えることはあるまい。
故意的な誤情報は『組織』への信頼を落とし、それは将来的に ”組織の存亡” に繋がる可能性もあるからだ。
・・・ってか、そうなったらマジで許さんがな!
父は再度資料に目を通し、呟いた。
「うむ・・・『商会』を呼ぶか?」
「小さい商会を・・・いくつか ”他の新商品” も考えてますので、大きな商会より、”小回りが利いて誠実な商会” をご存じないですか?」
父はニッと笑った。
「あるな。俺の従弟で男爵家の三男だが、信用できる男だ。」
◆◆
「売れますよ!コレは!!」
俺は紹介された『商会長』の興奮した勢いに、ちょっとだけ仰け反った。
セルア・トリュデア。
トリュデア男爵の三男である『商会長』は、何度もマッチを擦って興奮していた。
「すごい!すごい!!こんなに簡単に火が点くなんて、世紀の大発明じゃないですか!」
《 『異世界チート』がバカウケしてますが・・・》
「このマッチの『特許』申請は父の名でお願いします。それでセルアさんには『借金』をして欲しいのですが・・・。」
「借金?」
セルアの『警戒心』『が沸き上がったのを感じた。
《 まあね。三歳児に『借金しろ』なんて言われてもなw》
「はい。アストラス領に『ダンジョン』が出来たのはご存じですか?」
「はい。いずれ私もあそこで『店』を持ちたいと 思っておりましたので・・・」
「 『不毛の地』 と呼ばれている所ですが、水脈も発見されて『冒険者』や『商人』の注目の的になっています。そこに『マッチの生産工場』を作って欲しいんです。」
《 ますます怪しい三歳児w》
「アストラス領に?王都では作らないのですか?」
「マッチの原料は・・・今は明かせませんが、燃えやすい『素材』を使用します。いきなり王都で工場を作ると ”大火事” になる恐れがありますので、万一を考えれば 『不毛の地』で生産工場を作り、『技術者』を育ててから ”王都進出” を考えるべきだと思います。」
「なるほど・・・う~ん。」
《 まず領内で売って欲しいんだよね~ 安定した生活基盤の為に・・・もう一押しかね?》
「それにこれは、僕が『アストラス領』に帰ってからの話になりますが・・・。」
「何でしょう。」
「他にいくつかの『新商品』を考えていますが・・・」
「やりましょう!!」
《 被せて来やがったよ。まだ何も言ってないのに・・・》
「失礼ながらグレイ様の御噂はかねがね耳にしております!その『新商品』も ”ぜひ我が『商会』で取り扱わせていただければ” と思います!」
身を乗り出して情熱的に語るセルア氏。
《 目が金貨になってる件について・・・》
《・・・って、噂ってナニ!?》
「聞きたいんですが、僕みたいな『子供』でも ”ギルドでお金を預かって貰える” ことは可能でしょうか?」
細々とした打ち合わせの最中に、ちょっと聞いてみた。
「商業ギルドでですか?可能だとは思いますが・・・」
「『ギルド会員』限定とか?」
「そうですね。お金の引き出しには『ギルドカード』が必要ですから。」
「会員になるには、『年齢制限』や『身元保証人』は必要ないと解釈していいですか?」
「まあ、そうですね。ただ『入会費』と『年会費』は徴収されますから、預けっぱなしだと減っていく一方ですが・・・」
「分かりました。後ほどまた ”ご相談” することがあるかもしれませんが、乗っていただけますか?」
「勿論。よろこんで。」
メイモマキコンデヤレ・・・くっくっく・・・
工場建設地は、一度現地を『視察』してからということになった。
「口座を持つ気か?」
セルア氏が退室すると。父が切り出した。
「僕と、『メイの口座』を作っておこうかと思います。」
「メイもか?」
「今でこそメイは僕の『奴隷』ですが、いつかは開放するつもりです。昨日少し話をしましたが、彼女なりに ”お金の大切さ” を知っているようなので、今のうちから『貯金』させようかと・・・」
「・・・分かった。好きにしろ。」
「ありがとうございます。」
ふははは・・・”小銭の海” で溺れさせてやろうw
「・・・ということで、メイ。『口座』持つよ。」
「なにが『ということ』なのかさっぱりなんだけど?」
メイが僕の紅茶を煎れながら、きょとんとした。
「スズネは『口座』持ってる?」
「はい。冒険者ギルドの『口座』は、 ”冒険者資格が剥奪” されても『カード』があれば使えますので。」
「便利だね。でも ”冒険者は年齢制限” があるでしょ?」
「確か、10歳からだったと思います。」
「じゃ、やっぱり『商業ギルド』か・・・」
「商業ギルドに『口座』持てっての?」
俺は紅茶に口を付けた。
うん。イマイチ・・・
「『入会費』と『年会費』は掛かるけどね。何か『チート』考えるんでしょ?とりあえず、真面目に働けば “メイド見習い” として少ないけど『お給金』でるし、ダンジョンに入れば ”稼ぎ” もある。『特許』申請にしても『ギルド会員』になってた方が有利だよ?」
「そゆこと。OK♪」
やる気でナニヨリw
「あと、魔法訓練もしようか。何使える?」
「う~ん・・・生活魔法と・・・風魔法かな? ”意識して使った” ことがあまりないんだよね~」
《 野生児だからな、そんなもんか・・・》
「スズネ。あとで ”ウオッシュ&ドライ” と ”魔力循環” 教えてやってくれる?まずは ”魔法を使う” ことに慣れていこう。」
◆◆
『ロドリゲス・ヘルナンデ』、『ザッカ・タラギュース』という二人の『騎士団員』を引き連れて、サルムンド侯爵が『別邸』に訪れたのは次の日の朝だった。
「「よろしくお願いします。」」
「こちらこそ、よろしく頼む」
父に応接室に呼ばれた俺は。見知らぬ二人をさっそく鑑定。
ブロンドの髪を短く刈り揃えた美丈夫なロドリゲスはレベル22。
ぼさぼさのダークブラウンの髪に地味な顔立ちのザッカはレベル25。
ただし、『ザッカ』には ”諜報部という肩書” が見えていた。
《まんま『諜報部』なんて部署があんの? 隠れてないんだw》
「二人とも、伯爵家の次男と三男でな。『家督』は ”それぞれの長男” が継ぐことになっておる。立場としてはホウレイが上だ。剣の腕はそこそこだが、グレイの護衛には丁度良かろう。」
サルムンド侯爵の紹介に、俺は面接官の気分で質問した。
「お二方とも僕の護衛ですか?」
「そうです。」
「僕の事情を ”どこまで把握” しているか存じませんが、ダンジョンに潜りますよ?」
「聞いております。」
「それは “ダンジョンで死ぬ覚悟がある” と受け取って良いですか?」
「「え?」」
俺は構わず続けた。
「ダンジョンに潜るメンバーは僕と、そこにいる “メイド見習い” のメイと、彼女の ”指導役兼傍付きメイド” のスズネと貴方方お二人。あと『ガイド』が一人くらいでしょうか?」
「あ・・・あのそのメンバーで潜るのですか?」
《 ロドリゲス君。そのメンバーで潜るんですよw》
「サルムンド侯爵閣下。僕の称号は教えていますか?」
「勿論だ。」
「ありがとうございます。最初は『浅層』で周回を重ねるつもりですが、いずれ中層。下層へと降りて、踏破を目指します。それを繰り返すつもりです。」
「・・・繰り返す・・・とは?」
「そのままの意味です。踏破を繰り返す・・・それだけです。」
「あの・・・それに ”何の意味” があるんでしょうか・・・」
《 こりゃ随分と舐められたモンでw》
「勿論、修行のためですし、他にも “魔物の森の縦断” や『北のザブズクルのダンジョン』。『西のラッテルのダンジョン」の踏破も視野に入れてますが? 何か質問はございますか?」
「・・・」
《 はいはい。言いたいことは判ってますよっと・・・》
「正直に言いますと、下級貴族が “称号持ち” を二人も抱えるんです。当然、国も警戒するでしょうし、密かに監視もするでしょう。それはそれで構わないのですが、俺達の ”後を付け回した” あげくに ”巻きこまれて” 死んだりすると『後味』が悪いんですよね。それなら ”最初から目の届く所” にいてもらった方が諦めもつくし、ついでに、まだ弱い僕等の護衛兼人柱になってもらうのが目的です。身も蓋もないでしょう?」
「「・・・」」
「サルムンド侯爵閣下。」
「なんだ。」
「覚悟のない『監視者』はいりません。名誉のない犬死覚悟の者か、僕等を見捨ててでも ”自分の命” を優先できる者がいいです。」
「良いのか?見捨てても・・・」
「構いません。『英霊ソリアン様』『も、ダンジョンごときで死ぬ者に ”指導を受ける資格” はないとおっしゃってましたので・・・」
サルムンド侯爵は 少し目を剥いたが、やがて納得したように父を見た。
「・・・解かった。ホウレイ、出立はいつだ。」
「早ければ明日にでも。」
「うむ。ロドリゲス。ザッカ。お前達に一日猶予をやる。グレイと行動を共にするか否か、今日中に決めるがよい。」
「閣下。不躾ながら ”もう一つお願い” があります。」
「・・・申してみよ。」
「もし彼らが、任務を辞退しても ”責めない” でください。僕等が ”これからやろう” とすることは正気の沙汰でないことは重々承知の上です。最悪、僕一人になっても ”歩み” を止めるつもりはありません。この国の黄昏を止めるには、そうするしかないと ”信じて” いるからです。」
「あい分かった。お前達も聞いたな。辞退したところで咎められることはない。重々考えたうえで答えを出すがよい。」
翌朝。
父と俺達を乗せた馬車は、数人の『私兵』を引き連れて別邸を後にした。
王都の出口に待っていたのは『ザッカ・タラギュース』一人であった。
《さすが諜報部w》
「おはようございます。お一人ですか?」
馬車を下りた俺は、短く聞いた。
『ザッカ』は馬の手綱を引きながら答えた。
「おはようございます。どうやらそのようですね。」
「僕は構いませんが、護衛としてですか?監視に徹しますか?」
「ははは。恥ずかしながら『監視役』『に回ろうかと・・・」
「構いません。その代わり、自分の身は自分で守ってくださいね。お互い死なない程度に頑張りましょう。」
俺は返事を待たずに踵を返した。
これで彼の立場は明確になった。
俺は馬車に戻り、短く父に報告した。
馬車はゆっくりと動き出した。
道中は大した事故もなく・・・ということもなく・・・
「・・・盗賊ですか」
「盗賊ですね。」
「盗賊だな。」
「テンプレねぇ」
『気配探知』で複数の人の『気配』」を感知した俺達は、父を残して馬車を下りた。
「弓何人?」
「三人ですね。」
「スズネ。メイ。そっちは任せていい? 僕は残りをやるよ。」
「はい。」
「了解。」
”二人のメイド” が走り出したのを確認して、俺は馬車を残して テクテクと歩いた。
《道の真ん中に大木転がして “通せんぼ“ か・・・鬱陶しい・・・》
盗賊は・・・見える限りでは、十数人。
派手な魔法でビビらせてもいいが、少しばかり規格外な力で『環境破壊』も気が進まない。
手っ取り早く ”アイツラが何か言う前” に “風魔法” で周囲の気圧を一気に下げた。
いきなり『呼吸困難』に陥った盗賊達が、バタバタと倒れる。
《 まとめて寝てりゃんせ ♪》
ここで一句w
《♪ 盗賊の~野太い声に~興味なし~ ♪》
周囲の呆気にとられた視線は無視・・・というワケにもいかず・・・
「あ、死んでないので縛ってもらえます?」
『私兵』『が慌てて駆け出した。
《 なんか『荷物』が増えた・・・ゴメン・・・》
見るとザッカ氏が馬上で、あんぐりと口を開けていた。
《 ブッパしちゃうぞw》
「いま、ナニしたんです?」
「『初級風魔法』で一時的に ”呼吸” ができなくしたんです。便利ですよ?」
「『初級風魔法』・・・そんな使い方が?」
「川に溺れたようなもんです。 ”尻でも蹴っ飛ばせ” ば起きますよ?」
それだけ言うと、俺は再び馬車に戻った。
「・・・見事だな。」
「スズネとメイが フォローしてくれたので楽でした。」
「あの二人も『ダンジョン』に連れて行くんだったか・・・」
「そのつもりです。あと、”セルアさんに頼んである工場” に『拠点』を置くつもりです。」
「・・・なるほどな・・・」
「いけませんか?」
「よい。好きにしろ。ただし、定期的に帰ってこい。ミレイが寂しがるからな。」
「はい。必ず。」
「旦那様。失礼します。気になることが・・・」
私兵の一人が声を掛けてきた。
「ここでいい・・・申せ。」
「は。盗賊の輩ですが、妙に身綺麗で、『装備』も上等な物を 身に付けているようです。尋問しますか?」
「そうだな・・・」
父はそう答えながら、俺を見た。
頷いた俺は、馬車の窓から顔を出した。
「ザッカ・タラギュース様。盗賊は誰かに ”雇われた可能性” がありますが、どうします?」
「ザッカでいいですよ。そうですね、気にはなりますが ”大した情報” は得られないと思いますが?」
「聞くだけ聞いてみます? お任せしても?」
ザッカは頭をぼりぼり掻きながら、面倒臭そうに馬から下りた。
「全く ”働かない” ってのも気が引けますし、やってみますか・・・」
《 あ、コイツ俺と同類かもw》
顔を引っ込めた俺は父に報告。
「”タダ飯食い” は気が引けるそうですw」
「くく・・・そうか・・・」
結果として。雇い主は顔を隠しており判らないということだった。
盗賊の何人か ”手足の爪” が無くなってしまったようだが、首を切られて投げ捨てられるよりはマシだろう。
魔物も寄ってくるしな。
大分大人しくなった『盗賊』等を歩かせながら、次の町へと急いだ。
「誰の差し金でしょうか?」
「さあな。私達を快く思わない者だろうが、彼奴等を証人として突き詰めても『貴族』なら ”知らぬ存ぜぬ” で逃げ切るだろうな。」
「厄介ですね。」
顔を隠した依頼人も、ただの『傍付き』で黒幕ではあるまい。
「探りますか?」
スズネが静かに口を開いた。
「いや、たぶんだけど『ザッカさん』が何とかすると思うよ。」
俺は窓の外を確認しながら、呟いた。
「そうなのか?」
父が警戒した声で聞いた。
「勘ですが、”リーダーらしい男” に耳打ちしたとき、賊の顔が青ざめたように見えたので・・・」
「ザッカ・タラギュースが犯人を知ってると?」
スズネの目が吊り上がった。
《 オチツケw》
「憶測だけで ”決めつけ” るのは良くないよ。ザッカさんが話さないのは、王宮が絡んでいるから。そして僕は ”そういう連中” と関わりを持ちたくない事は 知っているからね。彼が僕と ”良好な関係” を持ちたいと思うなら 何とかするんじゃないかな?」
町はすぐそこだ。
町の衛兵に事情を話し、盗賊を引き取ってもらった。
どうやら賞金首もいたらしく、『報奨金』は『冒険者ギルド』を通して支払われるらしい。
ドンビシャスの『ギルマス』の仕事が増えたw。
「僕とメイの『商業ギルド』の入会金が出来たね。『年会費』も先払いできそう。」
「日頃の行いが大事よねw」
「メイ。口のきき方。」
「失礼しました。」
《 野生児がなんか言うとるww》
余談だが・・・
”数匹のオークが ”商人の馬車” を襲っている所に出くわしす” というイベントもあったが、俺が魔法を使う前にメイが「おにく~♡」と飛び出し、瞬く間に倒してしまったのは ”内緒” だ。
スズネにしこたま怒られてたけどなw
野生児め。
もちろん皆で美味しく頂きました。
次回 3月11日更新予定
そろそろネタが・・・




