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代理聖女ミコはわが道を行く――その辺にいる普通の事務員です  作者: 赤城ハルナ/アサマ
【第一話】聖女召喚に巻き込まれたら肝心の聖女様がヒャッハーと叫んで逃亡しました

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聖女見習いと神官長と第一王子――現役・次期〇〇談合その二

とうとう(?)お忍び王子様がやって来ました。

「勉強会がしんどい~。やっと大学を卒業したのに、また勉強?」


 本当に辛いんです。まるっきり違う世界、違う風習。しかも強制ですよ? 拒否権がないんですよ?

 大神殿でのオリエンテーションが終わると、神殿の仕組みや神様(多神教なのでたくさんいる、ナンダコレな神様もいる)の詰め込み。


 せっかく温泉旅行へいけるはずだったのに。お風呂が温泉なので、ある意味温泉旅行っぽくはあるのだけれど……旅行ではなくお仕事付き永住。

 健康保険は? 年金制度は?


 お勉強会で色々教えてくれるのは、アラフォー巫女長様。夫も子供もいる黒髪ロン毛の妖艶ようえんなお姉様。

 ここは神聖国しんせいこくの王宮と大神殿とギルド本部がある城塞じょうさい都市。あらゆる権力が集まっている。世界遺産が集合しているローマ歴史地区みたいな所だね。

 巫女長様から聞いたことによると、神官長様はお孫さんが二人いるおじいちゃんでした。


 大神殿は明治神宮くらいの敷地がありそう。

 本殿や庭園で物を食べてはいけません。水はミネラルたっぷりの鉱泉こうせんで、各施設に引かれている。人によってはお腹をこわすかもしれないです。わたしは平気でした。

 さらに温泉も各棟に引かれ、料理や床暖やお風呂に使われている。


「ミコ様、来週あたり首都観光へ行ってみましょう。案内します」

 副神官長様に誘われた。

「ぜひ行きたいです」

 ちょっと楽しみ。


 こんな感じの忙しい毎日。


 聖女のお仕事とは、神殿での祈祷きとうのほかに、お賽銭さいせんを持って参拝に来る人たちの傷やちょっとした体の不調をいやすことがある。わたしはというと……傷なら治せますよ。聖騎士せいきし副団長様の出血講義で教わったから。スッとでると傷がふさがるの。我ながらすごいと思う。

 でも、熱やせきや胃の不調となると……わたしは医者ではないし、薬も持っていないので、たぶん治せていないと思う。

 それでもわたしを頼って来るから困る。わたしはドクターではないんだけど。


「ミコ様、もう少し聖なる力が増すといいのですが……」と、朝礼で神官長様に言われた。隣にひかえる副神官長様はというと、困った顔をしている。


 無理ですけど。無理なものは無理なんです。ないものはないんです。


「申し訳ありません、自分の努力でどうこうできることではないと思います」

「……それもそうかもしれませんねぇ。あの聖女様は今ごろどこでどうしているんでしょうか」


 シランガナ!(ミコ心の声)



❖ ❖ ❖



 今日も聖女塔せいじょとうにて癒しという治療をする。お金を持った参拝者が聖女塔担当の巫女さんによって案内され、不調を訴えてくるのです。しかも訳の分からない悩みまで。


「わたしが勝手に助言してもいいんですか?」

「大丈夫です、ミコ様のお言葉でしたら問題ありません」


 本当に? はぁぁ~、責任重大なんですけど。胃が痛い。


「ミコ様、どうぞあたしの悩みを聞いてください」

「はい、何でしょうか」

「実はあたし……ときどき死にたくなるんです……」

「自律神経がイカれてますか?『健全な精神は健全な肉体に宿る』と言われますし、生活全般を見直しましょうか?」


「オレは……先月のことなんですけど……婚約者を断罪したら、家から追放されちゃって……」

「三文小説の読み過ぎですか?」


「わたしぃ……聖女だと思ってたのに違ったみたいでぇ……どうして無表情で可愛げのないアンタが聖女なの?」

鑑定室かんていしつへ行きましょうか?」


 待って。

 なぜお悩み相談が中心になっているの? 三番目は悩みでも何でもないんだけど。


 ……カウンセラーの経験なんてないのに。

 ……もう思考が停滞しそう。

 ……疲れた。


 巻き込まれ召喚から一週間――わたしは聖女塔で倒れた。



❖ ❖ ❖



「ウ〜ン……」


(ミコ様……まだお目覚めではない?)


 だれ? その声は……神官長様?


(この人がミコ様? 巫女じゃなくてミコ?)


 あぁ、神聖国しんせいこく語でも女性神官は『巫女ミコ』って言うからね。ややこしい。


(はい、さようでございます、名前がミコなのです、殿下)


 ……殿下? その殿下がなぜわたしの手を握っているの? どういう状況?


(でもこの女性は本物の聖女様ではないんでしょう?)


(この方も聖女様です。同時に二人召喚されたのです。いやしの力は若干弱いですが、日々人々を癒しております)


(でも、本物ではないんでしょう?)


(今は見習いですが、本物の聖女様です)


 チョット待って。

 わたしの寝室で男二人が何の話をしているの。わたし伏せっているのに。


(真・聖女様はどこに?)


 真・聖女様……はじめて聞く言い方。あの人のことよね。


(……捜索中です)


(……逃亡?? 真・聖女様を王宮にお招きしたかったのですが、残念です)


(申し訳ありません、殿下……)


 神官長様が口ごもった。神殿としてはあまり表沙汰にしたくはないわよね。


(真・聖女様にお会いしたかった……)


(ところで殿下、真・聖女様は男性ですが……)


(んんっ!? それを早く言って……!)


(言ったらどうされましたか?)


(コほん、僕はミコ様とお話がしたい)


 気のせいか、握りしめた手が震えているわ。手袋越しでも分かる。


「ではミコ様、そういうことですので」


 待って、どういうことなの。わたし何も言ってない……。

 わたしはたった今目覚めたふりをして殿下の手を振り払い、ベッドから起き上がった。

「あ、あの……」

「「ミコ様、お目覚めですか」」と、神官長様と殿下(と呼ばれる人)。

 親しくもない男性がわたしの寝室にいること事態が大問題だわ。招き入れたのは……双子ちゃん?


「双子ちゃん……巫女長様か副巫女長様を呼んでもらえますか……」

「はいですぅ」


 双子ちゃんが寝室から出てまもなく、巫女長様が大股でやって来た。


「乙女の寝室に勝手に入った殿方、今すぐ出て行け!!」



❖ ❖ ❖



 そんなこんなで巫女長様じきじきに介護され、通常業務に戻った翌日。この国の王子様――ひとりしかいないのに第一王子様と呼ばれている――が、聖女塔を訪れた。


「昨日は大変失礼いたしました。僕は第一王子のレオン・アンドシウス・ミカエリスです。聖女見習いミコ様とはぜひお話をしたい」

 なるほど、殿下と呼ばれていたのはこの人なのね。金髪ウェーブヘアーの、いかにもイケメンな王子様。お肌ぷにぷにで可愛らしい感じだわ。まだ十代かも。


「ええと、どのような?」

「後日機会を設けていただければ。日時はこちらでセッティングしますので」

「はい……」


 お悩み相談ではなかったのね。王子様、行動が自由すぎない?


 わたしは日々言われたことを実行するだけ。体調がすぐれなかったら休む。自分から何かを提案するということはない――ただの事務員だから。



☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞


「あsdfghjkl;:!」

「オマエ、ここで何してんの?」

「あsdfghjkl;:! オマエ!」

「ウオッ、ちょっと待てよ、女のくせに足速いな?? それに見たこともない生地のドレス……って、男だったんか〜い!」


☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞



※本物の聖女様ミーツ……。

※真・聖女様が出会ったのは……。

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