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【変転(?)の第二章完結】代理聖女ミコはわが道を行く――その辺にいる事務員でしたが間違って王妃になりました  作者: 赤城ハルナ
【第一話】聖女召喚に巻き込まれたら肝心の聖女様がヒャッハーと叫んで逃亡しました

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4/12

聖女見習いと副神官長と聖騎士副団長

聖女見習いミコの一日がはじまります。

「「ミコ様、起床の時間ですぅ」」


 頭に響く甲高かんだかいアニメ声が聞こえた。

「う〜ん、もう?」


 まだ薄暗いじゃない。

 勘弁かんべんしてぇ。

 ガランゴロン鐘が鳴っている。起床の合図かな?

 教会みたい、行ったことないけれど。


「お顔を洗ってお着替えですぅ、そしたら朝食ですぅ」

「……分かりました」


 双子の巫女みこちゃんによって洗顔・丁寧なブラッシング(わたしもロン毛です、背中まであります)が済むと聖女服の着付けをされ、ダイニングルームに運ばれた朝食を三人で食べる。

 出されたのはベリーたっぷり蒸しパンとゆで卵とチーズ、はちみつ入りハーブティー(ティザン)でした。


 聖女服は何枚もの衣服を重ねる仕様で、下着は綿の胸当てにノースリーブチュニック、ゆったりした五分丈パンツ。

 上には白地のロングスカート、ミディ丈の紺色チュニック、さらに床を引きずる白いマント。頭には薄絹うすぎぬのヴェール。靴は革の編み上げサンダル。

 生足です。

 ローマというよりは、ギリシャ?

 床暖があるのか足元は暖かいのだけど。


「ミコ様が着ていたお服とお荷物はクローゼットにしまいましたぁ」

「ありがとうございます」

「珍しいお服とカバンなんですぅ!」

「そうですか?」


 スマホは……ここにいる限り使えないだろうな。


 宿舎は神殿裏をコの字に囲んでいて、正面から見て左側が神官棟、右側が巫女棟。真ん中は上級神官・上級巫女・聖女棟、双子ちゃんは特別にココ。

 せい騎士きしは別棟。

 妻帯者は自分の家を持っているとか。


 中庭に出て驚いた。


 中世的な丸屋根付き巨大神殿

 ドォーン!


 フードをかぶったグレーローブ姿の修道士

 ドォーン!


 バケツかぶととロングチュニック、ラメ入り防弾チョッキ姿の聖騎士団

 ドォーン!


 謎の彫刻だらけの噴水付き中庭

 ドォーン!


 す、すごい、圧巻!

 昨日は夜も更けていたから、外の様子なんて分からなかったわ。権威の高さがうかがえる。


「おはようございます、ミコ様。ふく神官長しんかんちょうのアンドレアス・パパスです」

「お、おはようございます?」

「副神官長様、まさか朝っぱらから待ち伏せですかぁ? 前の彼女さんとはどうなったんですかぁ?」

「人聞きの悪いことを言わないでください。あなたがたはもう下がりなさい」

「「はぁ~い」」


 爆弾発言でうろたえているのは副神官長様ですね、覚えていますよ。グレーのローブ姿がデフォなのね。優しそうな微笑みがまぶしいわ。女性関係が派手なの?

 待ち伏せではないわよね?


「まずは神官長様と巫女長様に挨拶、それから祈祷きとうです。一通り説明いたしますので」

 案内ということですね、わたしったら自意識過剰。反省。


 祈祷は大広間で。

 大きなつぼを肩で担ぎ、ウッカリ水をこぼしている『温泉の女神像』に向かって両手を組む。わたしは……[異世界で殺されませんように、悪者はダークマターで消滅しますように]と祈った。


 祈祷が終わると神殿関係のお勉強。

 中年の巫女さん(巫女の教育係らしい)から、礼儀や儀礼について習う。

 そしてシンプルなランチ。これは何だろう、雑穀がゆ?


「ミコ様、午後は参拝者の治癒ちゆに当たっていただきます。やり方を説明いたしますので、参拝廊さんぱいろうの先にある聖女塔せいじょとうへどうぞ」


 案内されたのは、大神殿の門と大広間をつなぐ外廊下そとろうか。その先に丸い建物があって、聖女はここで参拝者の癒しや相談に乗る。

 中央の台座に大きな女神像付き椅子。ここに座るの?

 恥ずかしい。参拝者を見下ろす感じじゃない。しかも入り口には聖騎士、うしろには巫女さんが控えている。


 大会社のメンタルヘルスカウンセラーかな。社会福祉士や臨床りんしょう心理士の専門知識や実務経験はないんだけど。


「わたしにできるんでしょうか?」

「はい。ミコ様にはいやしの力がありますので」

「……?」

「試してみましょうか。そこの神官、副団長を呼んでもらえますか」

「はい」


 やって来たのは……背が高くイカツイ聖騎士さん。この人が副団長様らしい。バケツかぶとを取ったら……おおぅ、メチャたくましい格闘技系イケメンさん。今まで稽古でもしていたのかしら、カールした黒髪が汗で濡れているわ。お風呂に入れて全身をタオルで拭いてあげたい。


「何か用か、副神官長」

「ミコ様がお呼びだ。ちょっとそのごつい手を切ってくれ」

「ごついだと?」

「いいから切ってくれ」


 待って待って。手を切るって!?


 ガシッ、ブシャー!


「キャ〜〜〜ッ!!」


 副団長様が左手の甲を自分の剣で切った!

 血がドクドク流れている!

 頭おかしいの?

 信じらんない!


「どうぞミコ様、こいつの手を治癒してください。できなければできないで構いませんので」

「いいえ、ミコ様。ぜひ治していただけませんか」


 エエエ〜……。


「でも、どうすればいいのか分かりません……」

「傷口をその可愛らしい手ででてくださればよいのです」と、副団長様。


 仕方なくわたしは副団長様の傷口を、泣きそうになりながら撫でた。


 うわぁ~、大きな手。撫でがいがあるわ。わたしの二倍はありそう……スリスリ。

 すると――驚いたことに、次第に血が止まり、傷がふさがったのだ。


 エエエ〜!


「さすがでございます、ミコ様。俺はイアソン・クセナキス、聖騎士団の副団長、ど・く・し・ん、三十歳です。これからは生涯ミコ様をお守りいたします、守らせてください」

 副団長様が片膝かたひざをつき、わたしの両手を握りしめた。

「ええと……」

 な、何だか恥ずかしいな。


「副団長、ミコ様が困ってらっしゃる。手を離せ」

「フン! ではミコ様、また俺の傷を癒してください」

「はぁ……」


 副神官長様の方が副団長様よりも上なのかしら。上下関係はちゃんと把握はあくしないと。人間関係を円滑えんかつにするためにも。



❖ ❖ ❖



 参拝者の訴えを聞き流し(何を訴えているのかよく分かりませんでした)、傷や火傷やけどなんかを撫でていたら、あっという間に夕方になった。聖女塔へ参拝に来る人たちは体にダメージがあるのね。医者になった気分。巫女さんたちはナース。

 新しい職業は医者兼メンタルヘルスカウンセラー。

 治癒力は追い付いてないかもしれない。


「お疲れ様でした。ミコ様、明日もよろしくお願いします」

「よろしくお願いします、副神官長様」

「顔色が優れないようですが……大丈夫ですか? こちらにいらしたばかりですし」

「それは……はい。でも仕方ないですから」

「ミコ様の前の聖女様もそうおっしゃってらしたと聞いております」


「前の聖女様?」


 はて?


「何かありましたらわたしにご相談ください。すぐにでもミコ様のお部屋へ飛んでいきましょう。同じ上級者棟なので」

「いえ、そこまでは……」


 神官が聖女部屋に来るのは風紀的にマズいのでは。この国の神殿はゆるゆるなの?


 ヘトヘトになって自室に戻り、双子の巫女ちゃんと夕食。夕食だけは豪華。ベリーたっぷり蒸しパンに加え、野菜シチューと蒸し謎肉ソース添えと果物があったから。

 もう立っていられません、お風呂(温泉でした!)でゆっくりしたらベッドへダイブ!


 二年前に新入社員になって研修したばかりだったのに、また新入社員研修。しかも、訳の分からない世界と経験のない仕事。

 続けられる気がしない……。



☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞

「あsdfghjkl;:!」

「オイ、マテ!」

「あsdfghjkl;:!」

「オイ、オマエ! オマエだよ!」

☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞ ☞


挿絵(By みてみん)

※画像は大神殿の代理聖女ミコのイメージ画像です。AI Geminiで作成しました。なんとなくギリシャっぽい世界です。

※次回、第一王子様が現れます。

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