代理聖女ミコの婚約者候補
聖女お披露目パレードの日程や内容の検討が進んでいる今日このごろ。
最近は特に問題もなく聖女塔でのお勤めを果たしています。
先日切られた腕の傷はすっかり消えました。
聖女の力は代理でもすごかった。
強力な液体絆創膏+傷スプレー+手かざしヒーラーといったところか。
(いつまで聖女業をすればいいのかな?)
そんな疑問に答えてくれる人はいない。
正社員みたいな立場だと思うから、退職までなんだろう。
目立たない事務員をしながら温泉巡りで楽しむ、できれば結婚もしたい、引退したら家庭菜園をしたい、というわたしのささやかな人生設計は大幅に狂った。
退職年齢は何歳なのか、年金は出るのか、その前に、わたしは結婚できるのか、家庭を持てるのか。
異世界で一生独身、独りぼっちで死ぬのは寂しいよね。
そんなことになったら、大神殿を呪ってダークマターで消滅させたいよね。
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「ミコ様、お披露目パレードの前に結婚相手を絞りませんか?」
神官長様に言われた。
突然ですね、お見合いの話ですか?
「各方面からいらぬ横槍を入れられる前に、婚約者候補だけでも決めておく必要があります」
これは、結婚できるかもしれないということですね。
待ってました、神官長様、サンタクロース様!
「横槍とは具体的に?」
「過去に、他国が聖女を奪うという事案が起きたことがあるのです。それを阻止したい」
確かに。
ネット小説では、召喚に巻き込まれた人が国に虐げられて追放され、他国へ渡るという話があったかも。でもそれは国での扱いが雑だからであって、巻き込まれただけのわたしへの待遇はものすごくいいです。
婚約者候補……ウ〜ン。
恋愛といっても出会いがないし、そもそも恋愛そのものが面倒だし、まだこの国に慣れていないし、神殿が適当に見繕ってくれるのならその話に乗りたい。後ろ盾はしっかりしているしね。
「それでしたらぜひお願いします」
神官長様から告げられた婚約者候補は三人。
・副神官長アンドレアス・パパス様 三十三歳
→ 大神殿ほか、各神殿の祭祀に出席しなければならない
・聖騎士副団長イアソン・クセナキス様 三十歳
→ 戦勝会や各種試合観戦に出席しなければならない
・第一王子レオン・アンドシウス・ミカエリス様 二十歳
→ 王室と神聖国の各種イベントに出席しなければならない
いやいや待って。
そんな華麗な肩書の男性なんて面倒でしかないわ、もれなく厄介な社交がついて回るんじゃないの?
わたしのスローで穏やかなライフからほど遠い方々だわ。普通のリーマンで良かったのに。家同士や職場同士の小さな交流があるくらいの人でお願いしたかったのに。
因みに第一王子よりは楽そうな第二・第三王子様はいませんでした。
「わたし、その辺の官吏・騎士・神官くらいの人がいいんですけど」
「それではダメです。その辺の人が聖女様を娶ったとあらば、その辺の人ではなくなってしまいます」
どんな理屈なの?
「なるべく神殿関係と縁を結んでほしいのですがね。第一王子殿下は王宮からの推薦でして、断れなかったのですよ」
どうやら王子様は推薦したくないみたい。王宮への対抗意識なのかな。
❖ ❖ ❖
神官長様の言った通り、一番避けなければならないのが王子様だわ。
そりゃあ、あの王子様はショタ系で可愛いですよ?
毎日ヨシヨシしたいですよ?
――弟みたい?
でも、そんな人と結婚なんかしたら将来王妃でしょ。あり得ない。もしかしたら育児は乳母まかせなんじゃないの?
ナイナイナイナイ。
(暇そうな側妃ならイケるかもしれない。子供が産まれたら王族の母として裕福な暮らしができるかもしれないし、子供が産まれなくてもそれなりに暮らせるかもしれないし、片手間にパート聖女をすればいいわけだし)
「はて、『側妃』とは?
第二妻とな!?!?!?
そ、そんなとんでもない制度はわが神聖国にはありません! それに、聖女様が第二妻などという立場になってはいけません!」
神官長様が絶望的な顔をして叫んだ。
神聖国は一夫一婦制なのね。
ネット小説の読みすぎだったわ、反省。
「聖女様の地位を万全なものにするためにも、この三人の誰かと婚姻を結んでほしいのです、できれば神殿関係でお願いします」
イヤ~!
わたしは地味なスローライフが夢なのよ。そうだ、地主がいいわ、地主。土地はたくさんあるから憧れの家庭菜園ができるしね。
「それなら真・聖女ミカ様は?」
「ミカ様を婚姻させたとなれば、わたしが勇者殿に殺されてしまいます」
ええっ、そういう関係?
ソ、ソウデスカ〜。
よくよく考えてみれば、代理とはいえ聖女のわたしがその辺の人と結婚したら、婚家に迷惑がかかるかもしれない。
だとしたら副神官長様か聖騎士副団長様?
副神官長様は女性関係がアレみたいだし、副団長様はちょっと暑苦しい感じだし。
かと言って王子様は無いな。
ところが、そこに滑り込んできた大物がいたのである。
「王宮より急使でございます! ミコ様婚姻の件で!」
赤いチュニック姿の王宮近衛兵だった。
「いきなり何なのだ? 王宮は大神殿の人事に横槍を入れるつもりなのか?」
わたしの結婚は人事なのか。
「とりあえず、この書状をご覧いただきたい!」
神官長様が震える手で書状を見ながら読み上げた。
『大神殿神官長殿
我々王宮は、聖女の配偶者選定を見届けあるいは見極めることにした。神聖国聖女の婚姻となれば、こちらとしても看過できない。
大神殿もそのつもりで事に当たるように。
神聖国国王 ミカエル・アンドシス・バシレウス』
「何ということか! 真・聖女様はギルドに奪われ、今度は王宮がミコ様を奪う気なのか!? 神殿への冒涜ではないか!?」
――わたしの意向を尊重してほしいんですけど。
といった経緯で、わたしに三人の夫候補者ができたのであった。しかも王宮(中央政府)がでしゃばってくるとは。
わたしはこれからどうなってしまうんだろう――不安しかない。
※これで【第二章】は終わりです。ミコはスローライフができそうな理想の夫を手に入れることができるのでしょうか。
※なぜ短編だったどうでもいい話をこんなに伸ばしているのかということなのですが、無表情であまり動じない『冷徹ミコ』『氷のミコ』を書きたかったからです。それから変な王様や前王妃様も描きたいです。戦う王妃・女王は過去に何人かいたようです。
※【第三章】の前に、真・聖女ミカ・ブルーマンスの活躍(ギルド視点・前王妃含む)を入れる予定です。バディーストーリーになります。続きは秋以降になるかと思います。




