表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海神  作者: 葉月 優奈
三話:イチゴの香り
31/56

031

(TENMA‘S EYES)

この中で、一番疑われても仕方がない。

鵤 うねには、柚乃との結婚を反対された。


恨む理由は、はっきりと俺には存在していた。

それこそ、俺が一番疑われる理由、動機だ。

だからこそ、俺は犯人を捜さないといけない。


柚乃と話をしていた砂川は、店を閉めるからと再びカフェに戻っていた。

時刻は22:10、すでに閉館時間は過ぎていた。

彼女は、最後の店じまいをして俺と柚乃の前に来ていた。


「印南さん、そういえば明日のことですけど」

「ああ、今日のこともありますし」

「マニュアル通りだと……」

砂川は印南に話を始めた。

ここを仕事場にしている二人は、そのまま仕事モードで話を続けていた。

警備員の彼もまた、本来の業務に戻っていく。

彼もまた、この神戸タワーの展望室は職場なのだ。


「ああ、こらちょっと」

「柚乃、まだあの二人が犯人だと決まったわけじゃない」

離れる二人をよそに、俺は柚乃といた。

そばには、眠っている鵤の婆さんをそばで見ていた。

近くでは、ベンチに座ってスマホ片手に薬栗が仕事をしていた。


そのそばで、鵤は青白い顔で眠っていた。

苦しそうな顔で、そのままベンチのそばで寝ていた。

だけど、俺はさっきからずっと俺の背中越しに視線を感じていた。


「だが、俺を遠くから見ている女がいる」

俺が指さした先には、一人の人間。そこには背の低いOLだ。

出てきたのは水色のスーツ。

険しい顔で、俺を睨んでいた。


「やっぱり、あなたが一番怪しいから」

「俺が殺したわけじゃない」

「あなたは、瀬奈とも関係を持っていた。

本当に、若い娘が好きなのね」

「そうじゃない、そうじゃないんだ」

背の低いOLは、俺に冷たい言葉を投げかけた。

彼女は伊丹、二人組のOLの一人。

若杉と一緒にいた伊丹は先輩だが、俺の知り合いでもあった。


だが、何より俺と若杉 瀬奈との関係を彼女は知っていた。

瀬奈は忘れていたが、伊丹はしっかりと俺のことを監視していた。

後輩を振った男。それこそ、この俺だ。


しかも、若い子好きのヒモ男性。

印象は最悪で、反対していた祖母も殺された。


「ちょっと何を言っているの、おばさん!」

俺をかばうように、柚乃が前に出てきた。

柚乃は顔を赤くして、伊丹に迫っていた。

だけど、勝気の柚乃に対して伊丹もひるまない。


「おばさんじゃないわよ、このガキ!」

「柚乃はガキじゃない!」

「うるさいわね、あんたとそのヒモ彼氏がどうせ殺したんでしょ」

「違うわよ、大体どうやって?」

「生物兵器」遠くから聞こえた声。

その声は、男の声だ。

渋い声で聞こえたそれは、一人の会社員の声だった。


「お前は、波多野?」

グレーのスーツを着た男性が、右手をポケットに突っ込んで歩いてきた。

その様子は、どこか怪しさを感じさせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ