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(YUNO‘S EYES)
柚乃は怒っていたし、悲しんでいた。
私のおばあちゃん、鵤 うね婆ちゃん。
確かに会社を作って偉い人だったかもしれない。
でも、うね婆ちゃんは殺されてはいけない。
うね婆ちゃんは、体が弱いわけでもない。
殺したのは誰だ?一体誰が、私のうね婆ちゃんを殺したんだ。
疑問と、悲しみと、怒りが、同時にこみあげてきた。
展望台のベンチで、うね婆ちゃんは眠っていた。
苦しそうな顔をしていて、心臓が動いていない。
死んだうね婆ちゃんは、柚乃の大事な祖母だ。
そんなうね婆ちゃんを唯一恨んでいるのは、確かに成沢 天満だけ。
天満は、結婚を反対されて愚痴っているのを知っていた。
でも、天満は違う。
天満は、そもそも女子トイレに入っていない。
柚乃と、ずっと一緒にいたのだから。
(じゃあ、誰が一体?)
柚乃は、ずっと考えていると一人の人間が近づいてきた。
「香月さん」
それは、黒いスーツ姿の女性。
凛とした顔のカフェ店員、砂川が柚乃に近づいてきた。
バーテンダーの格好をした彼女は、閉店したカフェからこっちに向かっていた。
「何か用ですか?」
「あなた、これを落としていませんか?」
砂川が持ってきたのが、大きな金属のフックだ。
爪のような金属の金具に、柚乃は見覚えがない。
「いいえ、違います」
「そうですか、お客様のおられた席で見つけたのですが」
「違う」
だけど、柚乃はあの女に聞きたいことがあった。
「あのさ、あんた」
「なんでしょうか?」
「柚乃のうね婆ちゃんの第一発見者は、あんたでしょ」
「いいえ、あちらのお客様です」
指をさしたのは、二人組のOL。
といっても、今は背が低い伊丹しか子のフロアにはいない。
「でも、あなたはこのタワーで働いているのでしょ。
つまりはおばあちゃんの会社と、つながりがある。
ずっとおかしいと思ったのよね。あなたの行動」
柚乃は、目の前の女バーテンダーを指さしていた。




