表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/81

20 これからも一緒に

 〜♫


 オレが凛太郎(りんたろう)に電話をかけると、近くからかすかに聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。

 この着信音は、まさか……。


「……凛太郎、そこにいるのか?」


 オレは音楽が聞こえた方を向き、声をかけた。

 突然立ち上がったオレに、びっくりしたように麻琴(まこと)は、ポカンと口を開けている。

 今まで気づかなかったけど、いつの間にか近くに座っていた人物の背中が目に入った。

 顔は見えないようにしているけど、間違いない。


 縮こまったその背中は、一瞬ビクッと肩を振るわせ、ゆっくりと振り返った。


「凛太郎……」

「凛太郎くん!」


 オレの少し低めの声と、麻琴の嬉しそうな高めの声で、同時に凛太郎の名を呼んだ。


「あはは。……こんにちは」


 バツが悪そうに、凛太郎はゆっくりと手を上げてから、軽く会釈をした。


「ちょっと、こっちまで来い。聞きたいことがある」

「まぁまぁ、太陽(たいよう)、そんな声出さないのー! 凛太郎くん、久しぶりだね。こっちにおいでよ」


 蒼人(あおと)の膝の上に座ったままの姿勢は崩さず、麻琴はオレの言葉を制して、凛太郎に手招きをした。

 オレは珍しく態度に出てしまったけど、麻琴の声にふっと体の力が抜け、深呼吸をすることにした。


「蒼人さん、麻琴さん、お久しぶりです。その節は大変お世話になりました」


 麻琴がその場の空気を和らげてくれたおかげで、凛太郎も少し躊躇しながらもこちらにやってきた。

 そして、麻琴と蒼人に挨拶をすると「ここいいですか? 失礼します」そう言って、オレの隣に座った。


「太陽さん、すみません。用事があると言ったのは本当です。でもまだ少し時間があるから、少しだけ様子をみようと思って……」

「それは仕方がないな。友達とはいえ、恋人が他のアルファに会ってるんだから、気になるのは当然だろう」

「そうですよね、蒼人さん!」

「アルファなら当然だ」


 思わぬ蒼人からの助け舟に、凛太郎は全力で同意を求めてくる。

 そんなの、ベータのオレにはわかんねーよ。

 オレは心の中でひとりごちて苦笑した。


「そんなもんなのかね」

「そう言うもんなんです!」


 さっきまでバツが悪そうにしていたのを、すっかりと忘れた様子の凛太郎は、その後も『好きな人にはこうしたい』という、アルファなら特に感じる衝動とやらを力説された。

 アルファもベータもオメガも、好きな人のことは心配するし、そばで見守っていたくなる……その気持ちは、少しはわかる気がするけどな。


 その後も、麻琴と蒼人……特に麻琴からばかりだったけど、オレと凛太郎のことについて、根掘り葉掘り聞かれた。

 今まで縁のなかった、オレの恋バナに、麻琴のテンションは上がる一方だ。


「麻琴、もうその辺にしとけ」

「えー、なんでーもっと聞きたいのにー」


 ぶーぶー反論する麻琴に、蒼人は耳元で何か囁いた。その言葉に麻琴は一瞬で黙り、頬をピンク色に染めた。

 おいおい、何を耳元で言ったんだよ。


「すみません、もう行かなくちゃ。お話に混ぜていただき、ありがとうございました」


 凛太郎は時計を見ると、急いで立ち上がった。


「ああ、気をつけて行けよ。帰ったら連絡する」

「はい、待ってます。……それでは失礼します」


 凛太郎は大袈裟にお辞儀をすると、バタバタと急いで駅に向かって走っていった。


「騒がしいやつだなー。ごめんな、急に乱入したみたいになっちゃって」

「大丈夫だ。麻琴が会いたがっていたから、タイミング良かった」

「うんうん、話せて楽しかったよ〜。凛太郎くん、かわいいねー!」


 特に深い意味もなく言った言葉なんだろうけど、蒼人のこめかみがぴくっと動いた気がした。

 そして、なんの悪気なしにそう言う麻琴の耳たぶを、蒼人はパクッとかじった。

 こんなところで何やってんだよ、蒼人は!


「蒼人、くすぐったいよー」と、きゃっきゃとはしゃぐ麻琴は、蒼人の執着を全く気が付いていないらしい。


「じゃあ、そろそろ解散するか」

「そうだな。凛太郎とのこと、報告できてよかったよ」

「ああ、太陽にもようやくって思うと、感慨深いよ」


 蒼人にそう言われて、オレは苦笑いをした。

 うん、もう33歳になったしな。

 苦笑いをしているオレに、蒼人はいつものスンとした顔ではなく、ニヤッと笑って言った。


「アルファの相手は大変だけど、まぁ頑張れよ」

「は? それ、どう言う意味――」


 オレが蒼人に問いただそうとした時には、蒼人はもう立ち上がり、麻琴と手を繋いで歩き出していた。


「……アルファの執着、舐めるなってことだよ」


 そう言って、珍しく蒼人は声を上げて笑うと「じゃあな」と言って手を振り駅の方に向かって歩いて行った。


「アルファの執着……か」


 それは、痛いほど感じている。

 凛太郎は、中学生になったばかりの頃から、ベータであり10歳も年上のオレに、ずっと執着してきたと言っていた。

 自分の守るべき対象と判断した者への執着は、たとえ相手がベータでも関係がないと言うことか。


 初めはそんな凛太郎の態度に戸惑ったオレだったけど、今はその執着が心地良くなっているなんて、まだ凛太郎には言ってやらない。

 もう少し、ゆっくりゆっくり関係を築いていきたいんだ。

 第二の性に囚われることなく、心と心で繋がりたいと願うから。


 オレは、スマホを出して、凛太郎にメッセージを送った。


 『帰ったら、うちに来いよ。夕飯、一緒に食べようぜ』


 すぐ既読になったのを見て、オレはニヤッと口元を緩ませた。


太陽の話、お読みいただきありがとうございました。

この次は、本編の続きを書けたら良いなと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ