表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
番外編 1(本編を先にお読みください)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/81

おでこにキス(蒼人視点)

 大学へ進学して間もなく、麻琴(まこと)に2回目のヒートが来て、俺達は番になった。麻琴いわく、その瞬間は、体中の細胞が生まれ変わったみたい……と、感じたそう。


 でも、産まれた時から距離感バグっていた俺達からすると、正直その後の生活には大きな違いはないように思える。

 ただ、俺から一つ言えるのなら、あんなにかわいい麻琴なんだから、他のやつに狙われるかもしれないという漠然とした不安が、かなり軽減したように思う。


 麻琴のうなじには、しっかりと俺の付けた印。

 俺のモノ。俺だけのモノ。誰にも渡さない。




蒼人(ああと)ー。これ見て見てー」


 麻琴が手にしているのは、一枚の封筒。その中身を出しながら、こちらにパタパタと駆け寄ってくる。


「卒業式の写真、クラスメイトが持ってきてくれたんだー!」


 あの事件のあと、外部との接触を制限していたが、首謀者も特定出来たし、なんと言っても俺達が番になれたことは大きい。

 なので、麻琴の行動制限はほぼ解除されていて、こうやって高校時代のクラスメイトともやり取りをしている。

 その中には、麻琴の事が好きだったと告白したやつも含まれるのが、気に入らないが。


 そんな俺の心の内を知らない麻琴は、そのクラスメイトの名前を出し「Kくんが、写真を撮ってくれてたんだって」と、のんきに俺に言ってきた。

 無意識にムッとして口をへの字にしてしまうが、麻琴はどうしたの?と大したことないと思いながらも軽く首をかしげて聞いてきた。


 コテンと首を傾げる仕草は、絶対に俺を殺しにかかってると思う。世の中に麻琴よりも可愛いものはいるか?……いや、いない。

 こんな些細な仕草でさえ、俺への無自覚な煽りかと思ってしまうほどだ。


 高校まで我慢し続けた鋼の理性も、今は必要はない。とは言っても、麻琴の身体のためを思えば、本能のままに貪り尽くすわけにもいかず、常識の範囲内に留めているつもりだ。


「ほら、これ!」


 数枚ある中で、嬉しそうに取り出した一枚。

 麻琴が俺のおでこにキスをしている写真だった。



「……はっ?!」


 これは麻琴に、『学校での思い出を作りたいから、屋上へ続く階段に行きたい』と言われ、何をしたいのだろうと?と思いながら付いていった時の写真だ。

 漫画やドラマでよく見る、人気の少ない階段の踊り場などで、人目を忍んで恋人同士などがキスをしたりするのを、卒業前にやってみたかったのだと言った。

 そんな可愛いことを言われたら、叶えてやるしかないじゃないか。


 二段ほど高い位置に立ち止まった麻琴は、くるりとこちらを振り返ると、花でも咲いたかのような笑顔を向ける。


「蒼人、大好きっ」


 そして、ちょっと恥ずかしそうな照れた表情になると、麻琴は俺のおでこにチュッとキスを落とした。




「あの時の写真?!」


 卒業式の時の可愛い麻琴を思い出しながら、俺は驚いた声をあげた。周りには誰もいなかったはずだ。


「たまたま通りかかったKくんが、おれ達に気付いて撮ってくれたんだって」


 ()()()()……?


 Kは確か写真部だったはずだ。それに加え、某テーマパークでダンサーがキレイに撮れるようにと、バズーカのような望遠カメラも持っていたはずだ。教室で自慢していたのを見たことがある。


 ……ということは、()()()()そこを通りかかる可能性よりも、俺達がそこにいるのを知っていて、()()()撮った可能性の方が高いだろう。


 一歩間違えれば、犯罪だ。


 麻琴が写真のことまでは知らなかったのは、本当だと思う。

 大方誰かに、思い出に高校生っぽいことをしようと誘われたか、麻琴自身が言い出したかのどちらかだろう。



「おれが太陽(たいよう)に、高校最後の思い出作りをしたいから何かないかなって相談したら、ドラマみたいなシチュエーションでって、提案されたんだよ」


 ──犯人はお前か、太陽!!


「この写真、まるで結婚式みたいじゃないかって言われたんだ。そう思って見ると、ほんとにそう見えてきて……」


 麻琴はそこまで言うと、急に照れたようにもじもじすると、ちょっと背伸びをして、素早く俺のおでこにチュッとキスをした。


 おでこにキスくらいで、こんなに照れる麻琴が可愛い。


 俺達はもうそれ以上の関係だし、心も体も深く深く愛し合っている仲だ。はじめは何も知らずに戸惑い恥ずかしがっていた麻琴も、身体を重ねる毎に、少しずつ俺との行為に慣れてきているはずだ。


 それでも、こうやってほんの少しのキスに照れてもじもじとする姿が、本当に愛おしい。


「麻琴、こっちにおいで」


 俺はソファーへ腰を降ろすと、手招きをした。膝をポンポンっとしなくても、スススーッとやって来て、ポスンと俺の膝へ着地した。


「俺はまだ学生だし、親の援助を受けないと生活していけない。本当は今すぐにでも麻琴と結婚して家族になりたい。……いつか、この写真のように、みんなの祝福に包まれて結婚式をあげたい」


 俺の言葉に、こくこくと首を縦に振る。

 俺の付けた噛み跡が、ほんのり赤くなったような気がした。

 その印に唇でそっと触れると、それに答えるかのように、ビクリと麻琴の身体が震えた。

 俺は何度も確かめるように、うなじの印を吸い上げる。


「んっ……」


 麻琴の口元からわずかに漏れた吐息を合図とし、俺達はそのままソファーへ倒れ込んだ。





「結局、犯人は太陽だったってことだな?」


 俺の言葉に、麻琴はクスクスと笑う。


「犯人だなんて、ひどい言い方だなぁ」


 結局あのあと俺達はさらにベッドへ移動して、今に至る。気付くと辺りはすっかり暗くなっていた。

 ベッドの中で後ろから麻琴を抱きしめたまま、先程の写真の話をしていた。


「どうせ太陽のことだから、オレに任せとけとか言ったんだろ」

「当たり! 良くわかったね?」

「太陽が考えそうなことだ」


 楽しいこと大好きな太陽は、学内外のイベント企画なども請け負うほど、ひらめきや発想が人より長けていて、それをしっかりと形にする企画力も併せ持っている。


 麻琴が相談したことにより、クラスメイトの協力を得て、ドラマみたいなシチュエーションでのキス写真を撮ることに成功したのだろう。


 少々呆れつつも、俺達の思い出作りに協力をしてくれたということで、一応感謝しておこうか。


「あそこで俺が、キス以上のことをしたらどうするつもりだったんだ?」


 俺の意地悪な問いかけに、麻琴は「ふぇっ?!」っと変な声を出した。


「キ、キスいじょっ……?!」


 抱きしめた腕の中にいる麻琴が、動揺のあまり落ち着きがないようにもぞもぞと動く。


「そ、そんなこと、学校でするわけない、だろっ?! ……そういうのは、家に帰ってから、でっ!」


 麻琴は慌てながらそんなセリフを言うけど、無自覚に煽っているということに気付かないのだろうか。


 まさに今、その『家にいる時』なのに。


 一度静かになった俺の心も体も、麻琴を欲して再び熱を持ち出したことに、まだ麻琴は気付いていない。



(終)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ