9月17日 仲間に夢を見させ続けること
昨日の湯浅を見て思った。自分は、このままだとイケナイ。ただ、自分にとって都合のいい奴を見つけも自分自身がよくない奴なんだと。湯浅は、俺とは違って友だちがいないかもしれないけど、彼女はいる。しかも、BIG3の矢田が相手なんて。実際に会ったことがないから、どんな人かはわからない。それでも、湯浅と付き合い続けるということは、それだけ魅力があるという証拠だ。俺は、このままでいいのか?何もない人間にはなりたくなかった。
俺 「お前の目標は、何なの?」
湯浅「俺は、とりあえず大学で投げることだよ」
あまりにも低いレベルすぎて、何も言えなかった。
俺 「何だよそれ」
湯浅「お前みたいにストレートも速くないし、変化球もたいしたことねぇからな」
そんなものなのか。コイツにとって野球なんて。
俺 「そんなこと言ってたらレギュラーなんてとれねぇぞ」
湯浅「まぁな。お前みたいな才能があればな」
さっきから才能才能、うるさい。コイツは、才能がなければ野球ができないと思うのか。たしかに、ここらへんの地区じゃあ、俺の敵となるバッターはいないだろう。けど、そんなものはごく小さな世界だ。そんな中でしても仕方がないのだ。
俺 「もっと自信をもった方がいいぜ、お前は」
湯浅「結果も出てないのに自信なんてもてるかよ」
成功体験が湯浅にとって大事だったのか。意外だ。てっきりもっと失敗してどうこうする人だと思っていた。
俺 「そうか?」
湯浅「当たり前だよ」
言おうとしていること自体はわかるけど、そんなもの考え方一つで大きく変わる。
俺 「もっと、お前には自信をもってもらいたいよ」
湯浅「自信?」
俺 「ああ。お前は、高校の時ベスト4の時でエースしてたんだろ?凄いじゃねぇか」
少し照れているみたいだ。けど、今の言葉は嘘じゃない。もぅと堂々としてほしい、湯浅には。結果だけでいえば、俺よりも全然凄いのだ。
湯浅「そうなのかな?」
俺 「そうに決まってるだろ」
とても笑顔で俺の方を見てくれた。
湯浅「それは嬉しいな」
俺 「そりゃあ、お前にも夢を見せなきゃならないからな」
野球ノートに書かれていた最後のことだ。"仲間に夢を見させること"。これを成し得てこそ、本物のエースと言われるのだろう。正直、高校でそれはできなかった。




