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別メニュー

僕への別メニュー。それは魔力器官の安定だった。僕の魔力器官は聴覚。まだ出力が安定していないが五感を代償に持つ者は膨大な魔力が付き物。故に魔力器官の安定は必須なのだとか。


エクサレムが他の生徒たちと何やら楽しそうに会話しているのを横目に僕だけ魔力器官がある聴覚に集中しフェルムを蝸牛の辺りにイメージする。そして有毛細胞が感知し電気信号に変換。その後蝸牛神経へと伝達する。伝達した電気信号は大脳へ。そんなイメージを持ってフェルムをグルグル回していく。


フェルムが通った跡は少し温かくなるので分かりやすく聴覚がどんどん正確に澄んだ音を拾っているような気がし始める。


「じゃあ魔力量から測りましょう。皆さんも集まってください。」


エクサレム先生の周りに全員が集結する。無論僕も呼び出された。


そして僕達は代獣を召喚する。代獣は代償器官の身代わりとして自身の体の一部を主人に融合させる。融合させると召喚獣の様な仕様となり、必要な時に召喚するスタイルとなるのだ。


「では…まず代獣の頭に掌を翳してください。目を瞑り体の代償のある場所を想像して下さい。そして私に続いて唱えるのです。ティルアン・ティルメン・スパーシア!」


「「「「「ティルアン・ティルメン・スパーシア!」」」」」


それぞれの代獣の体がボワッと光り、僕らの手の甲には黄金に輝く文字が浮かび上がる。


──魔力量 23億──


へ?23億?なに?これ?少ないの?


この世界の単位は英数字だ。本来23億なら2300000000と表示されるはずなのだ。


この【億】というのはなんなのだろう。読めるが意味は分からない。


「クアナさんは12000。セイロス君は8850。リズさんは100300と。かなり多いですね。ロアン君は777ですか……。少ないですがこれから頑張りましょう。で……問題はイース君ですねぇ。23?その後に書いてある文字はなんなのでしょう?今まで見たことも無いですが……。」



──やっぱりか。【億】って読めないんだ。この単位は古代語、精霊語、異世界日本語のどれかだろう。


うーん。どうしよう。分からないが読めることを打ち明けるか?黙っておく方がいいか?少し悩む。するとエクサレムが痺れを切らしたように声を発した。


「……まぁいいわ。イース君は少し規格外だから考えても仕方ないわね。イース君以外は魔力器官の安定の練習で代獣に魔力を与えておきなさい。自分の最大魔力量の80%を目安にね。その後は英霊達と会話しこれからの修行内容を決定すること。英霊達の話にしっかりと耳を傾けるのですよ?分かりましたか?では私はイース君には更に特別メニューを課さねばなりませんので。少し席を外します。」


「「「「はい!分かりました!」」」」


4人は性格が変わったように従順になっていた。まぁ元々の性格はそのままなので自然と壁の方に吸い寄せられている者もいたが。それにしても特別メニューってなんなんだよ。


「じゃあイース君行きましょうか。」


──へっ!?ど、どこへ?


エクサレム先生は僕の手を引っ張ると部屋を出てそのまま建物からも出た。まぁ席を外すって言ってたしな。どこかへ行くんだろう。そして森の中を無言で歩く。少し歩き僕は振り返った。するとまだそんなに離れている訳じゃないのに僕たちがいた掘っ建て小屋みたいな物はその存在を消していた。


「──隠蔽の結界が張ってあるんですよ。流石に生徒たちに危険が及ぶのはマズイですからね。」


「そ、そうなんですね。えっと…この森って危険なんですか?」


「まぁ危ないと言ってもせいぜいBランク程度の魔物が出るくらいですよ?ここに生息する中で最も凶暴な魔物が暴食熊(ハングリーベア)ですね。」


──ハングリーベア。通称……村喰い。人間を好んで食べる魔物で凶暴性が高く人間の集落を見つけると皆殺しにして死体を保存する性質を持つ。悪食で腐った肉すら好んで食べる。


それってヤバくない?ロココ村の規模だったら蹂躙されてもおかしくない魔物じゃん。それを大した魔物じゃないみたいに言うなんて……エクサレム先生も相当強いのかな……?


「はい。着きました。ここでイース君は特別メニューです。」


暴食熊についてあれこれ考えながらエクサレム先生について行っているといつの間にか目的地に着いたようだ。


「ここは──」


静かな森の中にある唯一の水源なのか様々な動物達がこの水場に現れている。優雅にせせらぐ澄んだ水が流れる小さな川。


そしてエクサレム先生はいつの間にか取り出した杖を構えて僕に言ったのだ。


「貴方…何者ですか?」と。

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