↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンチヒーロー A⇒H 【改稿版】  作者: ひげもじゃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/18

第7話 開かれた扉

不墜華グレイスフォールが軽く手を払うと宙に浮かぶ無数の瓦礫が人々の頭上を離れ、誰もいない場所へ静かに降りていく。


「もしかして……

 あの時、助けてくれたヒーローか!?」


「ようやく気付いたの?」


グレイスフォールは得意げに腕を組む。


「そうよ。  

 あの時、あなたを助けてあげたのも私」


普段のおどおどした結衣からは

想像も出来ない強気な態度。

スーツを纏った彼女はまるで別人のようだった。


「表に出てこなかったから

 ちょっと暗めな奴なのかと

 思ってたけど、全然違うな」


「あ、あの日はちょっと

 ”ギュルギュル”だったのよ」


『な、何言ってるの私!?』


「あ~、今日は絶好調ってわけか!!

 よろしく頼む!!」


「ま、任せなさい!!」


『ま、真面目に返さないでよ……!』


その時、

バスティオンが二人へ向かって踏み込んだ。


「随分と余裕だな……!」


だが――その動きが突如止まる。


「……まだお話中でしょ?」


グレイスフォールがバスティオンへ

片手を向けていた。

バスティオンの身体へ強烈な重力が掛かり、

足元の地面が大きく沈み込む。


「もう少し黙ってなさい……

 元“No.1ヒーロー”」


「ぐっ……!」


バスティオンが歯を食いしばる。

身体を押し潰すほどの重力を受けながらも

その両脚は倒れることを拒むように

踏ん張っていた。


「へぇ……まだ立っていられるの?」


グレイスフォールが更に重力を強める。

その瞬間――

バスティオンの全身に力が漲った。


「……!」


押さえつけられていた身体が

僅かに持ち上がる。

一歩、バスティオンが前へ出た。


「嘘……」


更に一歩。

バスティオンは重力に抗いながら

身体を起こし、雄叫びと共に

その力を打ち破った。


「うおおおおおッ!!」


凄まじい衝撃にグレイスフォールの

長い黒髪が大きく揺れる。


「こ、これが……」


先程までの余裕が消え、

グレイスフォールは目を見開いた。


「不屈のアンブレイカブル・ソウル……」


「不屈の魂?」


「受けたあらゆる攻撃を自らの力へ変える。

 それがバスティオンの能力よ」


「…思っていた通りか!」


ジャスティスの中で疑念が確信へと変わる。

避けられる攻撃を敢えて受けていたのも、

戦う程力を増していたのも

全てはこの能力によるものだった。


「……バスティオン、なんで……」


かつて憧れたヒーローの変わり果てた姿に、

再び人々の悲痛な声が飛び交う。

グレイスフォール――

いや、 柊結衣もまたその一人だった。


「……私も子供の頃、毎日のように見てた」


バスティオンを見つめる彼女の瞳は

悲しみに揺れた。


「ヒーローとして活躍するあなたの姿を!  

 あなたをモデルにした映画だってあった」


仲間のヒーローを守り、

どれほど追い詰められても人々を守り抜く。

幼い結衣にとって、その姿は憧れそのものだった。


「私もいつか……  

 こんなヒーローになってみたいって思ってた」


結衣の声が僅かに震える。


「……それなのに、何で……!!」


ジャスティスは人々の声を聞きながら、

バスティオンをじっと見据えていた。


「……グレイスフォール。

 一つ頼みたい」


「……え?」


「アイツは俺が止める」


「バ、バスティオンを!?

 そ、そんなの無茶だよ!」


一瞬、強気なグレイスフォールから

結衣の顔が覗く。


「お前は皆を逃がしてくれ。

 これ以上、被害が出ないように」


「でも……!」


「……皆が憧れた“ヒーロー”を

 これ以上アイツ自身に壊させちゃいけない」


ジャスティスは静かに拳を握る。


「…そんな気がするんだ…!!」


グレイスフォールは暫くジャスティスを

見つめた後、迷いを振り切るように頷いた。


「……分かった。

 後は私に任せて、戦いに集中しなさい!」


グレイスフォールは未だ避難出来ずにいる

人々へ視線を向ける。


結衣は普段、自らの能力を大きく抑えている。

強大過ぎる重力を完全に制御出来る自信が

彼女にはまだ無いからだ。


だが――このスーツを纏っている時は違う。


スーツに搭載された

重力制御補助システム――

 G.C.S.

《グラビティ・コントロール・システム》


重力の出力や範囲、方向の制御を補助することで

結衣は普段よりも大きな力を安定して扱うことが

出来る。


「それじゃあ――皆まとめていくわよ!」


グレイスフォールが両手を広げる。


その瞬間、逃げ遅れていた人々の身体が

一斉に宙へ浮かび上がった。


「う、浮いた!?」


「な、何だ!?」


突然の出来事に人々から驚きの声が上がる。


「暴れないで!

 安全な場所まで運んであげるから!」


グレイスフォールが腕を動かすと、

宙に浮かぶ人々もその動きに合わせて

広場から離れていく。


G.C.S.の補助を受けたグレイスフォール

だからこそ可能な、広範囲かつ

精密な重力操作だった。


遠ざかっていくグレイスフォール達を

バスティオンが横目で捉える。


その腕が僅かに動いた。


だが、何かを仕掛けようとした

その動きを途中で止める。


その視線の先でジャスティスは揺るがぬ眼差しを

バスティオンへ向けていた。


人々の避難はグレイスフォールに託した。

彼女なら必ず守ってくれる。

だから今は――目の前の男を止めることだけに

全てを注げる。


「……紛い物のヒーローの分際で、

 ようやく戦いに集中出来るとでも

 言いたそうな顔だな」


「俺はヒーローだからな。

 今のアンタとは違って」


「貴様……

 まだ言うか……!」


「……まぁ、アンタの言うことも

 間違っちゃいねぇよ」


ジャスティスは重心を落とし、戦闘体勢に入る。


「紛い物か……

 俺はまだ道半ばのヒーローだからな」


「ならば、そのつけ上がった

 なりかけのヒーローを

 俺が潰してやる……!!

 不屈のアンブレイカブル・ソウル

 高まり続けている。

 この状態の俺に勝てるわけなどない……!!」


「へっ!

 ……やってみなきゃわからねぇだろ?」


互いの視線がぶつかり――

ジャスティスとバスティオンが同時に動く!


先に仕掛けたのはバスティオンだった。

更なる力を得た拳が次々と襲い掛かるが、

ジャスティスは防御と回避に徹する。


今までの攻防で

《不屈の魂》の性質は分かった。


バスティオンには攻撃を自らの力へと

変えられる限界が存在する。

その限界を越えればダメージを与えられるが、

同時にバスティオンを更に強くしてしまう。


中途半端な攻撃は逆効果だ。


――なら、一撃で決めるしかない!


ジャスティスは攻撃を凌ぎながら、

右腕へ今の自分が引き出せる力を

少しずつ集中させていく。


チャンスは多くはない。

一撃で決める!


まだだ…!


確実に叩き込める瞬間まで!!


「どうした!

 逃げ回るだけか!!」


バスティオンが一気に距離を詰める。

振り下ろされた拳を紙一重で躱したとき、

バスティオンにわずかな隙が生まれた。


ジャスティスの目が鋭くなる。


――ここだ!!


「うおおおおおッ!!」


溜め込んだ力を乗せた右拳が

バスティオンの腹へ深く突き刺さった。


「ぐっっ……!!」


これまでとは明らかに違う衝撃に、

バスティオンの身体が大きく吹き飛ぶ。


――入った!


確かな手応えがあった。


《不屈の魂》が受け止められる

限界を越え、確実にダメージを与えている。


だが――


「……!!」


バスティオンが踏み止まる。


「くっ……!」


ジャスティスの表情が強張った。


――倒し切れなかった。


それどころか、

ジャスティスの一撃が《不屈の魂》を通して

更なる力をバスティオンへ与えていく。


「これで終わりか……ジャスティス!!」


「なっ……!?」


先程までとは比べものにならない速度で

距離を詰められ、ジャスティスは咄嗟に

両腕を上げる。


直後、凄まじい衝撃が襲った。


「ぐっ……!!」


防御ごと身体が弾き飛ばされる。


体勢を立て直す間もなく

バスティオンが追いつき、

再び拳を振るう。


躱す、受ける、また躱す。


反撃する余裕すらない。

一撃で決めるために放った攻撃が、

逆にバスティオンを手の届かない領域へ

押し上げてしまった。


――どうする……?


攻撃すれば更に強くなる。

だが、このまま防ぎ続けても

いずれ押し切られる。


追い詰められていく中、

ジャスティスの奥底で”何か”が

微かに揺らいだ。

これまで決して開くことのなかった

記憶の扉に僅かな隙間が生まれていく。


その隙間から――


失われていた”何か”が少しずつ少しずつ

流れ込んできた。


『なんだ……?

 俺の知らない“記憶”……?』


――【ゼロ】――


「……ゼロ……?」


無意識に零れたその言葉に、

バスティオンの表情が変わる。


「!?

 やはりお前が!!」


更に強化された拳が

ジャスティスへ振り抜かれる。


だが、その拳は――

止まった。


「……なんだその光は!?」


バスティオンが目を見開く。

青白い光が迸る左腕でジャスティスは

その拳を真正面から受け止めていた。


だが、今は考えている暇などない。

右腕にも青白い光が迸る…!


もっと強く――

もっと重い一撃を。


「………!!!」


青白い光を纏った右拳が

バスティオンへ叩き込まれる。


「ぐぉぉぉぉッ!!」


《不屈の魂》が受け止められる限界を越え、

青白き一撃がバスティオンを捉えた!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。