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無能勇者と竜の姫君  作者: 雪菊


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18/27

18.彼女の性質



 助けてもらったことを契機に、リョウはちょっとだけグラシエルと仲良くなった。ちなみにグラシエルはリョウが19歳であるとまだ信じていない。そのせいでやたらと弟分扱いされていた。

 それを少々不服に感じていたのはシルヴィアだった。



「私だけのリョウなのに」



 ぷくっと頰を膨らませている姿は愛らしい。だが、その言動に強く出ているのは激しい独占欲である。

 可能であれば閉じ込めて、繋ぎ止めて、誰にも見せないようにしたい。それは竜としての彼女の本能に近い。

 ふとその感情に気付いた時、シルヴィアの心を不快なものが満たした。舌打ちをしたい気持ちを抑えて、自分を落ち着かせようとゆっくりと深呼吸する。



「私は、違う。私は、ただの獣なんかじゃない。獣じゃない。あの女とは、違う」



 自分の感情だけで動くな。そう言い聞かせた。

 実際のところ、シルヴィアは自分がかなり感情的になる性格で、他人と積極的に関わって変わっていけるような性格でないということには気がついている。恋に狂えばストッパーが外れるのが竜の特性が出た者の定めだった。けれどシルヴィアの場合は逆だった。恋が彼女のストッパーになった。



(嫌われたく、ないもの。まぁ、リョウは私のことを嫌ったりしないと思うけど)



 リョウはシルヴィア以外の異性には笑顔を見せない。それは、彼が以前に陥れられたせいである。

 しかしそのことは、シルヴィアの安心感につながっていた。嫉妬深く、過激な本性はそのおかげで他の誰かに牙を剥かずに済んでいる。

 愛しい、と。そう伝えてくる眼差しも、声も、シルヴィアだけに向けられるもの。だから自分を抑えられる。



(本当に厄介な性分だわ)



 そう自嘲していると名前を呼ばれる。

 振り返れば、愛しい人が穏やかに微笑んでいた。



「どうかしたの?なんだか少し、不安そうな顔をしているけど」


「ううん。平気!だってリョウがいるもの!」



 まだ腕が動かないのか、包帯が痛々しい。けれど、それでも異常なまでの回復の速さを見せている。

 骨を折って数日だというのに、もう足は治っている。

 リョウ自身も不気味に感じているが、この点はグラシエルが「調べてみる」と言っているので任せている。



「そう?シルヴィアが辛くないなら良いんだけど」



 自分のことよりもシルヴィアを優先するリョウに、彼女は苦笑した。



「私のことよりも、怪我人のリョウの方が心配だよ。向こうでゆっくりしよ?」



 無事な方の手を引くと、リョウは頰を少し染めて嬉しそうに彼女の横に並んだ。

読んで頂きありがとうございます!!

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