19.体質に関する考察
グラシエルは数日で怪我を完治させたリョウを見ながら、「以前はこんなに治癒力が高くなかったんだけど」と言っていたことを踏まえて腕を組んだ。個室を用意してもらったからか、いつもよりリョウが穏やかそうに見えた。
候補となる理由は三つほど見つけた。
(一つは竜の血を飲むこと。人体の仕組みを内側から変えてしまうが、驚異的な力を得ることができる……その代わりに多くの場合は狂気を宿すという)
シルヴィアという竜が側にいる以上、あり得ない話ではない。あれは亜人の形をしているが、その本性は竜であることを彼は察していた。
(一つは、何か神や精霊のようなものから力を得ること。……こればかりはリョウに詳しく話を聞かなければわからないな)
昔と比べて信じる者は少ないが、そういった人ならざる者、世界に影響を与える存在は確かにいる。
だが、多くの場合に彼らはもう『ヒト』とは関わらない。関わりたくないと考えている。
神は昔、魔王という存在が現れて世界存亡の危機の際に、異世界から勇者を呼び寄せる術を与えたという。結果として、魔王は倒された。
けれど、ヒトは愚かだった。
世界の危機が去れば、次は異世界人を都合の良い『兵器』として扱い、戦争を起こそうとする国々が現れたのだ。
そのことでヒトは神の眼差しを失った。同時に精霊や妖精といったものたちも姿を消していった。
だから、可能性は低いと言える。
(最後に、リョウが異世界人である可能性。正直なところ、これが一番可能性が高い)
神からの寵を失ったというのに、いや、失ったからだろうか。テイヒュル王国は以前から異世界人を召喚している疑惑があった。
いきなり、短期間に強くなることがあった。テイヒュル王国は戦力を整えると、このドラッフェ帝国の国土を奪おうと兵を差し向けてきていた。
休戦期間とは、彼らが戦を仕掛けてこないだけの期間だ。多くの国では、異世界人の召喚なんて非道な術は失われている。だが、あの国であれば残っている可能性があった。
その理由は結局のところ、本人に尋ねなければわからない。
意を決して、リョウの名を呼び、彼の体質に関する考察を話す。
彼は大人しく、冷静にその説明を聞くと疲れたような顔を見せた。
「なるほど。じゃあ、多分理由は最後の異世界人だから、になると思う」
「やはりあの国は……」
「召喚を行っているよ。俺は無能……何の力もないと放り出されたけど、他にあと2人。勇者と聖女だとかいうのが召喚されてる」
吐き捨てるようにそう言ったリョウ。
彼に何があったのか、きちんと聞ける機会は今しかない。グラシエルはそう判断して尋ねる。
リョウの口から聞かされた『今までの出来事』は彼が人間不信になるのももっともだという内容だった。
そして、彼のシルヴィアに対する仮説が、確信へと変わる。
(やはり、あの方は)
リョウたちの信頼に応えなければ、失うものは大きい。
グラシエルはそう判断し、次に話す内容をゆっくりと脳内で整理した。
一応この場にシルヴィアもいる。
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