10・王都
私は心の中で叫ぶ「ここは何処だ」と、声に出さないのではなく声にならなかったのだ、驚きすぎて……。
いや、おおよその予想はつく、だけどその予想は当たってほしくはない。
何故ならここは……。
「王都ですエリーさん」
「王都ですお姉様」
うん、やっぱり王都ですよね……それで何で私が王都に連れて来られたのかしら?
ちなみにシオンの転移魔法で一瞬でここまでやって来たのだった、そうこの王国の首都である王都に……。
転移ポイントは王都の外ではなく王都の内にあり、しかも転移ポイントの直ぐ目の前には白く立派な建造物がそびえ立っていた。これはアレですね王様とか住んでいるお城とか言われる建物……そりゃ驚くわ!
「こちらが王城ですエリーさん」
「さぁ参りましょうお姉様」
はい? いやいや待て待て、何でよ?
「シオン様、アンジェラちゃん、私はこんな格好なんですよ。お城なんて入れませんって」
シェスさんから貰った革鎧は確かに良いものだったが、使い方が悪かったのか結構あちこちが痛んでいて、はっきり言って王様の住む城に入れるような姿ではない。
なので、お城はパスね。
「では、私の店に寄って着替えてから行きましょう」
そう来たかアンジェラちゃん。でも私はお金に余裕がないから、城に着ていく服なんて買えないからね。
「あ、お代は気にしないで大丈夫ですよ。父もきっとそう言いますから」
ぎゃあああ! 何でか考えが読まれてるんでけど!
確かにアンジェラちゃんのお父さんあるシェスさんは太っ腹で、私に高価なマジックバックをくれたくらいだし、あながち嘘とは言いきれない。
「じゃあ俺は先に城に行って報告を済ませてくるから、アンジェラはエリーさんを間違いなく連れてきてくれよ」
「ええ、任せて下さい。肌身離れずしっかりとくっ付いていますから安心してください」
「あ、ああ、頼んだ」
アンジェラちゃんは私に抱きつき腕を絡ませる。そんなにくっ付かなくても逃げないから。ほらシオンも引きつった顔で呆れてるよ。
そんな訳で私はアンジェラちゃんに引きずられて、とある店の前へ……。
「アンジェラちゃん、この一角を占める巨大な店はまさか……?」
「はい、ようこそシェスタ商会王都本店へ、お姉様」
やっぱり! 殆ど豪邸と見まごうばかりの大きさと豪華さだよ。アンジェラちゃん、正真正銘のお嬢様じゃん。
えっと、でも何でシェスさんとアンジェラちゃん、行商人なんてやってたの? 訳わかんないよ、全く。
それにしても確かに以前、シェスさんが大商人だって話は出てたけど、ここまでとは思わなかった。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
大きく立派な飾り付けをされたドアから店内に入ると、上品で落ち着いた衣服に身を包んだ男性がアンジェラちゃんを出迎える
「ただいまロラント。お父様かお兄様いる?」
「残念ながら、シェス様は商工会の会合でお出かけになられてます。イアン様は商談のため隣国に出られておられます」
「そう、ではロラント、この方は以前大変お世話になった方です。失礼のないように頼みますよ」
「かしこまりました。ではこちらに」
ロラントと呼ばれたナイスミドルのおじ様に先導され、広大な店内を素通りして応接間に案内された。この応接間の豪華なこと、なにこのVIP待遇は?
あれ、服を選びに来たのに何故かお茶をしている私達。まぁ王城に行くは嫌だしここで時間を潰すのは大歓迎だけどね。
アンジェラちゃんとの会話は主にシェスタ商会についてだった。と言うか私が聞いたんだけどね。こんな御殿と言っても信じるような豪華絢爛な店だよ、気になるじゃん。それにさっき王都本店って言ったよね、それって他に支店があるって事でしょ、どれだけの大商会なんだか。
シェスタ商会は元々王都に店を構えてはいたのだが、こじんまりとした小さな商店だったらしい。それを先代のシェスさんが一代で一気に大商会に発展させ、現在息子さんのイアンさんが引継ぎ店主を務めているそうだ。アンジェラちゃん、とは結構歳が離れているらしいけど、それでもまだ若いはずだ。本当に凄いよね、私には絶対に真似できないよ。話を聞くとかなりのやり手らしい。
一方シェスさんは基本的には隠居していて、店を息子に任せ趣味を兼ねた行商であちこちをフラフラしているとか。私と出会ったのもその趣味の行商中だったというわけだ。
ちなみに店名は元々は違った名前だったらしく、シェスさんが大商店に発展させた功績で、シェスさんの名前にちなんでシェスタ商会と名を変えたそうだ。
シェスさんって凄い人だったんだね。
話がひと段落すると、丁度店員さんが私達を呼びに来た。私の服を見繕っていたらしい。私達は応接間の奥の部屋へ向った。そこで私は予想外の展開に驚くやら呆れるやら……。
「よくお似合いですよ、お姉様!」
「えええ……」
ヒラヒラふわふわとした羽のような布、煌びやかな装飾、私が今纏っているのはどう見てもドレス……そう、ドレスなのだ。どう見てもそれ以外の衣装には見えない。
いやいや、お似合いだって? アンジェラちゃんじゃないんだから私には似合わないよ! お世辞を正直に受け止めるほど私はお馬鹿ではない。
大体私は普段ドレスを着れる程の高貴な人間ではないですよ? 普通の町娘が初心者冒険者になった程度の庶民の範囲内の人間だ。私はちゃんと身の程をわきまえているんだよ……なのでこれでお城なんて勘弁してください。
どうでもいいがアンジェラちゃんの横でこのドレスを選んだ女性店員がドヤ顔で鼻息を荒くしていた。ちょっと目が怖い。
「え~と、ドレスはどうかと思うんだけど?」
「「え?」」
次に私に着せるためのドレスを手に持ったまま、私の意見に目を丸くするアンジェラちゃんと女性店員。
え? 本気でドレスでお城に行かせようとしてたの? 舞踏会に行くわけじゃないんだからさ! あっても行かないけど。
結局冒険者らしく革鎧に落ち着いたわけだが、私が今まで装備していた革鎧より明らかに高価とわかる代物だった。まぁ城に行くんならこのくらいは普通なのかもしれないけど……。ついでとばかりにマントや短剣等も私に装着させていくアンジェラちゃんと女性店員。おーい、城に行くのに武器はまずいんじゃない、武器は。え、大丈夫なの?そうなんだ。
いくらお代は気にしないで下さいと言われても、これだけ高価な品だらけだと気にならないはずがない。しかしアンジェラちゃん曰く、あの空飛ぶ大トカゲ……ワイバーンのしかもたった一匹の買い取り価格でお釣りがくるそうだ。いやあれが本当にワイバーンならね。今でも私はあれは空を飛ぶ変わった大トカゲじゃないかと思ってるんだけど。
さていい時間になったことだし行きたくはないけど、そろそろ城に向わないといけなんじゃないかな。その旨をアンジェラちゃんに伝えると「お姉様との時間が楽しくて忘れてました!」と慌てて私の手を取って出入り口まで出て行く。冗談なのか天然なのか、意外とお茶目なアンジェラちゃんだった。
出入り口でナイスミドルのロラントさんに見送られる時に、私は以前シェスさんから貰った紹介状があったことを思い出し彼に手渡した。新品の装備も頂いたしもう必要ないと思うしね。
「こ、これは 大旦那様の紹介状ではないですか!」
ロラントさんは目を見開き大声を上げながらブルブルと震えている。
「し、失礼いたしました。今の旦那様はイアン様でした。つい驚いて動揺してしまいました……」
「そ、そうですか」
「どうしたのです、ロラント?」
驚いた顔のままのロラントさんにアンジェラちゃんが不思議そうに頭を傾げる。
「申し訳ございません。このシェス様のしかもこの特別な印が押された紹介状をお持ちになった御仁には、最大限のおもてなしをせよと事ずかっておりまして……」
あら、シェスさんが気をきかせてくれてたんだね。でもまぁ十分にお持て成しはしてもらってたけど。
「それと、特注品の武具をお渡ししろと申しつけられておりました。直ぐにお持ちいたしますので暫くお待ちを……」
「待ちなさいロラント。今日はもう時間がありません。後日お姉様に受け取りに来ていただきましょう」
「そ、そうですね。では準備してお待ちしております。いつでもお越しください」
私の話なのにロラントさんとアンジェラちゃんが話をどんどん勧めていく。私は頷くだけだ。いや楽でいいけどね。
さてさて私はアンジェラちゃんに引きずられ王城の正門までやって来た。私が「そろそろ城に行かなくちゃいけないんじゃないの」と言ったものの、城が近付くにつれて憂鬱な気持ちになり足が重くなっていった、はぁ。
白く巨大な城に見合った門の横に、これでもかっという程の立派な鎧を着た騎士が直立して私達を見ている。
いきなり「怪しい奴め、立ち去れ!」とか言われない? まぁ言われたら大人しく立ち去りますけどね。でもアンジェラちゃんがいるからそれはないと思う。
案の定、追い返されることなく私達は出迎えられた。何故なら……。
「ようこそエリー殿、お待ちしておりました」
何処かで見たことがある騎士だった。顔は平静を保ったまま記憶を引き出すために頭の中を高速回転させていた私。ギリギリ返事をする直前に思い出した、そうそう確か勇者パーティにいた騎士だ。名前は確か……。
「お出迎えありがとうございますキース様」
私がそう答えるとにっこりと微笑む。むぅ中々のイケメンだねぇ、きっとシオンよりモテるんじゃないかな。私には縁のないタイプだけど。
「アンジェラもよく来て下さいました。どうぞ中へ、自分が案内します」
「ありがとうございますキース様。さぁ行きましょう、お姉様」
騎士の方々が至る所に立つ警備の厳重な城の中に入る。通されたゲストルームには見た顔がずらりと並んでいた。
勇者パーティの面々だ。実は最近知ったのだが、勇者パーティの方々は普通の冒険者と違って別の称号を持っている。確か呼び名は……。
「お待たせしました勇者シオン様。お久しぶりです賢者クリス様と聖女アリス様。御案内ありがとうございました聖騎士キース様」
私は勇者パーティの面々に低姿勢で挨拶をかわす。それはそうだろう彼等彼女等はこの国、いやこの世界の希望であり、魔王に対抗する最大戦力で英雄になることが約束された人達なのだから。私とは違うのだよ私とは。
「わたくし達の事を覚えていただいてて光栄ですわエリーさん、いえ勇者エーコ様」
「まさか前勇者だったとは驚きましたよ。ボクは最初から只者ではないと思ってましたけどね」
「記憶を失っていたとはいえ、貴殿の圧倒的な武力に感服していました。流石は前魔王を倒した勇者ですね」
あーもう、何で私が勇者エーコと同一人物ってことになってんのよ!
前にも言ったけど、私は魔法使えないよ? それだと只の戦士ですよね、それに戦士だとしても屈強とはほど遠い見た目ですよ私。
おいそこ勇者シオン、私を見て目をキラキラさせるな! 現勇者なんだからもっとライバル視したらどうなの? まぁ私、勇者じゃないんだけど。
勇者パーティの方々と交流を深めていると、突然バンッという音を立ててドアが勢いよく開け広がれた。
「エーコ。勇者エーコは何処?!」
この部屋に駆け込んで来たのはキラキラという表現がぴったりの美少女。頭の上には宝石付きのティアラ、アンジェラちゃんの店で私が着ていたドレスより更に派手で高い素材を使ったと思われるフリフリのドレス。
うん、誰がどう見ても『ザ・お姫様』だ。
そのお姫様、つまりこの国の王女様と思われる少女が私を見つけると、文字通りジャンプして飛び込んできた。凄い身体能力だ、見た目に反してお転婆なお姫様ですね!
「あああ、長く美しい黒髪に深く神秘的な黒い瞳、小鳥のような澄んだお声、何よりこの香しい匂い、間違いなくエーコですわ!」
髪と瞳、声はわかるが、匂いって何だ、匂いって! ええい、顔を擦りつけて匂いを嗅ぐんじゃない! もう美少女が台無しだよ。
「ああ、そのゴミを見るような目で私を見下す視線、正にエーコですわ!」
私がドン引きしてると、身震いしながら私を見上げそんなことを呟く。これがいわゆる残念系美少女というものなのか……。
「あの、すみませんがどちら様でしょうか」
誰だか見当はつくが、一応そう尋ねてみた。
王女様の顔が途端に曇る。
「エーコ、本当に私のことを覚えてないのですね。記憶喪失だというのは事実なのですね……」
悲しそうな顔で俯く少女、こうしてると絶世の美少女なのに。
「すみません……」
私が悪いわけではないと思うが、つい謝ってしまった。美少女を困られる趣味はないからね。
「私はエカテリーナ。この国の第一王女エカテリーナ・サイデルアス、貴方の親友ですわ」
やっぱり本物のエカテリーナだ。
仮に百歩譲って私がエーコだったとしよう。親友だった彼女から譲ってもらった彼女の名が刻まれたを杖を所持していたために、記憶の無かった村ではその名を名乗ることになったのだ。名無しでは困るだろうと村長がそう提案してくれたからである。
「エカテリーナ様、エリーさんはやはりエーコ様で間違いないのですね。
「間違いありません。確かに性格がかなり穏やかになっていますが、恐らく記憶喪失の影響でしょうから」
成程、私が勇者エーコかどうか確認に来たんだね。エーコと王女様は親友同士だと言ってたから。
う~んでも確認するなら王女様直々でなくてもいいよね? 数年前には勇者エーコはこの城にいたんだろうし、他にも確かめられる人がいたんじゃないの?
まぁそれは親友である王女様が直接確認したいって言ったのかもしれないし、別に大した問題ではない。
問題は勇者エーコの性格の方だ。
さっき王女様が性格が穏やかになったって言ってた……冒険者ギルドでも規律に厳しく云々という話が出たよ、どんだけキツい性格してたのよ勇者エーコは!
エカテリーナ王女に連れられて城の中にある一室に向かってる。ある一室とは他でもないエカテリーナ王女の部屋、つまり私室にだ。
部屋に到着して案の定、驚いた。まぁある程度は予想はしていたが、その予想を上回る広さと豪華さだった。いや最早個人の部屋の範疇を超えている。私だったらこんな広間みたいな部屋、絶対に落ち着かないし嫌だけどなぁ。
エカテリーナ王女自らの案内で部屋に案内されたのは、私とアンジェラちゃんそれから勇者一行だ。部屋には王女様本人と私達の他に王女のお付きの侍女達が数人部屋の隅で姿勢正しく直立して控えていた。
王族ならこれが当たり前なんだろうけど、これもまた私だったら落ち着けない状況だ。だってさ起きている間、常に傍に誰かが居て見られてるんだよ? 正直、苦痛以外のなにものでもないよ。まぁ個人的な意見だけど。
私達はエカテリーナ王女に勧められるまま、パーティー用かと思うくらいに広いテーブルの席に着席する。こんなに広いのに何故かエカテリーナ王女は私の横の席に座り、しかもその椅子を近づけている……え~、もうちょっと余裕をもって座ろうよ。
席に座ると王女の侍女達がお茶を運んでくる。むむっ、既に香りが違うよ? 早速頂くと先日高級宿で頂いたお茶や、アンジェラちゃんの店で頂いたお茶より明らかに美味い。お茶の美味さは経済力と比例するのだろうか? このお茶に比べたら私が働いていた定食屋のお茶なんて、ちょっと渋いだけのただのお湯だよ。
きっと今しか飲めないので、高級茶を堪能する。はぁ落ち着くねぇ。
おっ、エカテリーナ王女が私をジッと見つめてるな。私が見つめ返すと両手を頬に当てニヘッとにやけた。うん、相変わらずの残念王女だ。
私の怪訝な視線に気付き、エカテリーナ王女はコホンと咳払いをしてから口を開く。
「さて、王女である私が直々にエーコかどうか確認しようとしたのは、本物でしたら私が直ぐにでも会いたかったということもありますが……実はエーコを知る人間はこの城にはあまりいないのです……何故なら」
そこでエカテリーナ王女は言葉を一旦切り、私の目をジッと見つめる。はて、勇者なのに王城にはエーコ知る者が少ないと? おかしな話だね。
「……以前のエーコは性格上敵味方がはっきり別れる方でして、エーコを支持する者は彼女と共に魔王討伐に向われる事を希望し、実際に一緒に旅立たれました。ですがその者達の殆ど全てが魔王討伐を成しえた代償として帰らぬ者となったのです」
つまり勇者エーコと親しいものはお亡くなりになったというわけですな。
「そしてエーコに反感を持っていた者達は、最初からエーコと殆ど顔を合わせることもなくエーコもまた彼らと接触をしようとはしなかったのです」
ふむふむ、成程ね。
エカテリーナ王女はその後に、エーコは城に戻ってきても滞在中はエカテリーナ王女と一緒にいることが多く、他の者達とは積極的に交流を持とうとはしなかったと教えてくた。
「なのでエリーさんを王女殿下に直接会わせるのが手っ取り早いと考えたのです」
シオンはそう言うが、もし私が偽物で、王族に害する者だったらどうするつもりだったの? ちょっと不用心すぎない?
本物か偽物かと言われれば私は勇者エーコのそっくりさんで、偽物じゃないかと自分では思ってるんだけど。
だって記憶を失ってるとしても人は基本的な性格は変わらないと思うんだ。そう考えてみると絶対に私みたいな人間は勇者向きではないよね?
「鑑定の水晶が直ぐにでも使えれば、エーコだと証明できるのでしょうけど……」
「鑑定の水晶ですか?」
なんでも、人でも物でもその状態や性能、資質等を文字や数値にして表記してくれるプライベートや個人情報はどこいった? と叫びたくなるほどのとんでもない魔道具らしい。国宝で王の許可がないと使用させて貰えないとか。
ちなみに鑑定の水晶の劣化版である鑑定の石板は、冒険者ギルドや商業ギルド等の機関にあるそうで、私も本冒険者として登録される際には鑑定されるはずだったらしい。
劣化版なのでそこまで詳しい情報は記載されないが、ただ冒険者カードに記載して身分証明書代わりに使えるようにするために鑑定情報が必要だったようだ。
残念ながら今私が持っている冒険者カードは仮冒険者のカードなので、身分証明としての機能はないことになる。
「ええ、精度の低い鑑定の石板でしたら、鑑定魔法と大して精度は変わりませんし」
おっ、あるんだ鑑定魔法。あ~、収納魔法や転移魔法があるくらいだから驚くほどではないか。
「失礼だとは思いましたがエリーさんに鑑定魔法を使ったことがあるのですが、残念ながら失敗しました。鑑定魔法は魔力地場が安定していないと使えない鑑定の魔道具とは違い何処でも使える利点はありますが、術者より遥かにレベルの高い者には成功しない欠点があるのです」
説明お疲れ様です。エカテリーナ王女に代わってシオンが詳しく説明をしてくれた。
……いや、それより私に鑑定魔法使ってたの? そう聞くとあまり気持ちのいいものではないなぁ。
「城にある鑑定の水晶の使用許可をお父様に申請しております。使用は明日で、その後に父、王との謁見になるかと」
え~、やっぱり王様と謁見するの? 嫌だなぁ。
あっでも鑑定結果で私は勇者エーコではなく只のそっくりさんと判明したら、謁見しなくていいんじゃない? うん、きっとそうだ。
ただこの場合は城から追い出されるだろうし、最悪な場合はエスナの町に帰らないといけなくなるかもね。あっそうか、行く場所は別にエスナの町じゃなくてもいいのか、私もう冒険者だしね。
お堅い話はそのくらいにして、その後はちょっとした世間話となった。
勇者パーティを強化するのにアンジェラちゃんが勇者パーティ候補だったとか聞いた時は驚いた。実は商人がパーティ参加すること自体は珍しいことではないらしい。パーティを経済面から支え、武具やアイテムの見立て等、サポートが中心だが、意外と戦闘力もあって侮ることはできないらしい。
「もっと修行しないといけないのですけどね」
アンジェラちゃんが舌を出し肩を竦める。まだまだ少女と言える年齢だからこれからだよアンジェラちゃん。しかし一々仕草が可愛いなぁ。
他にも勇者パーティの面々の話や、エカテリーナ王女による勇者エーコの武勇伝等の話で会話が弾む。エーコについての話はとんでもないものばかりで、ちょっと盛りすぎじゃない? と思わなくもないが。
「エカテリーナ様、そろそろお時間です」
「え~、今日は私、エーコと一緒に居るの!」
「いけません、そのエーコ様とこれからも一緒に居られるための話し合いが、あるのですから」
え、何の話し合い?
部屋の隅に控えていた侍女が王女に時間だと告げると、エカテリーナ王女はぷぅと頬を膨らませた。
「明日の王への謁見と鑑定の水晶の使用許可についての話し合いですよ。事前会議みたいなものです。俺達も参加しないといけないのでエリーさんは明日までゆっくりとしていてください」
シオンが私ににっこりと微笑みながらそう言ってくれた。他の勇者パーティの方々も頷く。
「私は折角なので店に戻って明日、お父様がお姉様のために用意した武具をお持ちします、ロラントの不手際で遅れてしまいましたが……」
いやいや、あれは不手際とかじゃなくて、単に私が紹介状を出さなかったからだよ。ロラントさんは悪くないよ。
名残惜しそうな目で何度もこちらを何度もチラチラ見ながら、シオンに背を押され部屋から出て行ったエカテリーナ王女。主人のいなくなった部屋にいつまでも居るわけにはいかないので私も部屋から出ることにする。
「エーコ様、ご案内しますのでこちらへ」
残った侍女がそう私に言って先を歩き出す。私は彼女から離れないように大人しくついて行った。王城は広いので私一人では確実に迷子になる自信がある。
しかし侍女の私への呼び名もエーコなんだね。
まぁいいけどさ。




