第43話 罪を暴く
だから、今回
アシャラ様が、シルフィア様だと知った時、驚愕した。追放、剥奪、奴隷……ルーカス様より聞かされた真実に、セレスティナに、伯爵様や貴族に腹が立った。
私達の命の恩人の為に、
自分に何が出来るのか考えた末に……シルフィア様を、あの頃の美しい姿に戻す事を心に決めた。
毎日、髪を体を優しく荒い、傷薬やクリームを塗り、整え続けた。
シルフィア様が、部屋に戻ってからは余程の用がない限りお傍を離れなかった。
次第に彼女の髪は、以前のような青銀を取り戻していたのだ。
「私に付けられた魔道具も、ローザ様達が鍵を手に入れて下さり取れましたわ」
「お陰で、ティルク達花精霊の力が全身に行き渡り、早く目覚める事が出来ましたの」
首元に手をやり俯く彼女に、寄り添う2人の淑女…
「残念ながら、力を使い過ぎた花精霊達は深い眠りに着いてしまいましたが…」
回復し目覚めるまで、かなりの時間がかかりそうです……と彼女は言った。
「伯爵様、貴方様が奴隷に対し行った仕打ちの数々は私が証明出来ますのよ」
『我が瞳に宿りし精霊よ
精霊王より賜りし鏡の精霊よ
我が前に姿を現し真実を映し出せ』
シルフィアの瞳が、眩い光を放ち出す。
光の中から、大きな鏡を持った精霊が、怒りの形相で伯爵を睨み付けながら現れた。
『許さない……王様の大事な姫さま傷つけた、許さない』
「この子の力が、貴方様の悪事を全て暴きますわ」
優雅に階段を上り、精霊を呼ぶ。
「陛下に鏡を」
『はい、姫さま』
陛下の隣に立ち、宰相に視線をやる。
ルーカスは、1つ頷き伯爵を睨むと質問を投げかけてきた。
「ロンデール伯爵を、これより尋問する」
「嘘偽りなきよう答えるように」
「1つ、奴隷がシルフィア嬢と知って買ったのか?答えよ」
「いいえ、知りませんでした」
ビクビクしながら、答える伯爵。
ファルークは、伯爵が答えたあと鏡を見る。
鏡の中には、今見ている光景が見て取れる。
鏡の中の伯爵が答える。
『知りませんでした』
「!」
伯爵は、ビクッと肩を震わせた。
宰相が、次の質問を投げかける。
「1つ、奴隷を拷問しましたか?」
「…………」
伯爵は、答えない。
(答えなければ、問題ない!)
「答えたくなければ、答えなくても大丈夫ですわ」
「鏡は、正直ですもの」
(な……に?)
どういうことだ?
『しました……私は奴隷共の泣き叫ぶ姿が好物なのです。奴らを嬲ってると興奮します』
「!!」
(なぜ……)
「1つ、かつての奴隷を死なせ、殺したのもお前だな?」
『仕方ないのです。最初は加減が分からず、少し嬲っただけで死んでしまいました…死なせない様加減したのに、奴らは自害したんです。私の責では無い』
殴りたくなる様な内容だ。
鏡を持つ手が震える。
鏡から視線を外し、本物の伯爵を見ると、彼はもう脱力し項垂れていた。
「1つ、陛下を…………、……」
『…………』
ルーカスは、質問を続け、鏡は正直に答えていく。隣のシルフィアを見ると、気丈に振る舞い伯爵を見据えていた。
……
…………
尋問は終わりを告げ、伯爵の罪は全て暴かれた。彼は身分を剥奪、死刑となった。当然だろう、多くの奴隷の命を奪ったのだから。伯爵の家は取り潰され、財産は全て国の物になる。
執事のローゼスには、前もって伝えてある為、メイド達の処遇は彼が取り計らってくれるだろう。
最後にシルフィアが伯爵に伝えた言葉は
「貴方様が行った仕打ちを、一生許す事はありません。幾度となく受けた拷問の数々、それにより亡くなられた奴隷の皆様。貴方様の処遇は、当然の報いですわ」
「……ですが、貴方様の魂が無事女神の元に召される事を祈っていますわ」
だった。