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砂漠の狼と奴隷に落ちた公爵令嬢  作者: 紫宛
神聖王国と砂漠の国
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第44話 愛しい思い


伯爵の件は解決した。

俺の暗殺も、帝国に媚びを売りたい伯爵の独断らしかった。

シルフィア嬢が呼び出した鏡の精霊、ミライラの力により伯爵の罪は全て明るみに出る事となった。


あの後、伯爵が兵士に連れ出された後、シルフィアは静かに泣いていた。

『ありがとうございます、陛下。父様や皆様のお陰で、私は解放されました』

そう言って、泣いて笑っていた。

それでも、ずっと、苦しめられて来たのを俺は知っている。伯爵から解放されても、辛い目に合わされた事情が無くなる訳じゃない。苦しみが解放されても、心に負った傷が無くなる訳じゃない。


俺は、彼女に近付き優しく抱き寄せる。

「へ、へいか……」

俺の胸に顔を埋めさせ、泣き止むまで背中をさすってやる。

「今だけは、いくらでも泣けばいい、俺の胸で良ければ貸してやる」

「……、…っ」

苦しかっただろうな、辛かっただろう。

痛くて悲しくて、恨みたくて、でも頑張って耐えてきたのだ。この小さな体で。

支えてやりたい、ずっと傍で……




どれくらい時間が経っただろうか…窓に夕陽が差し掛かっている。

伯爵を罰したのが、昼前だから、かなり時間が経ったのであろう。

いつの間にか、宰相達も居なくなっていた。


「……っ、陛下、も、大丈夫ですわ」

真っ赤な目をした彼女が、俺の胸に手を当て見上げてくる。

声は掠れているが、涙は止まってようだ。


まじまじと眺め

「あまり、見ないで下さいまし、恥ずかしいですわ」

「陛下には、見苦しい姿ばかり見られてる気がしますわね」


恥じらう姿が可愛くて、更に深く抱き締めてしまう。

「へいか?」

俺を呼ぶ彼女の声が、甘く響く。

彼女の俺を見る瞳が、甘く蕩けさせる。


反射的に、彼女の頬に手を伸ばした。

頬を撫で、顎に手をかける。

驚き戸惑う彼女の口を親指で撫でて、上向かせ顔を寄せた。

瞳を閉じて、吸い寄せられるように唇を重ねた。

「……っん」


彼女の唇は柔らかく、このままずっと貪りたい欲求に駆られた。

だが、閉じていた瞳を開け顔を離す…

(しまった……!)

シルフィア嬢は、口に手を当て声にならない声を上げている。

そして、真っ赤になって謁見室から走り去って行ってしまった。


(何をやっているんだ俺は!)

(まだ、思いも告げていない相手にキスをするなど……!)

そこで、ふと、ある事が気になった。

(……思い……?)

(俺は…シルフィア嬢を……?)

俺を庇って怪我をした彼女が、心配で堪らない。辛いと泣く彼女を放っておけない。

泣きたいのなら、俺の胸で泣けばいい。

彼女の泣き顔を、他の男に見られたくない。


(この思いは……)

かつて、ルーカスに聞いた事がある。

あの時、俺は答えを聞かず部屋を出た。

あいつが何か呟いていたが…よく聞こえなかったな『※※、※※※落ちるものですよ』

落ちるとか何とか言っていたな。


婚約もしていない女性に、不埒な行いをした罰も受けねば。

(クソっ)


自分の唇に手を当て、考えてしまう。

柔らかく、あのままずっとキスしていたかった…

もっと、深く貪りたかった……




……ちっ

ダメだ、頭を冷やさなければ

ルーカスの元に行くか……俺の気持ちに蓋をする訳にも行かん。

腹を括らねば、この思いが……


……恋と……愛しいという思いならば。

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