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砂漠の狼と奴隷に落ちた公爵令嬢  作者: 紫宛
神聖王国と砂漠の国
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第33話 目覚め


セレスティナで、魔術師団長グレイと精霊王オルフェリウスが魔力封じの間に閉じ込められている頃、ソルファレナでは報告会が国王の執務室で行われていた。


参加者は、ファルーク、ルーカス、ヴィムク、ローザ、ライラシア、ジェラルド、レンフォード、アルベルト、そしてリチャード。

この場にいないグレッドは、アシャラの部屋の前で護衛をしていた。


話し合いの内容は……

ローザからはシルフィアの事を、ジェラルドからは帝国の事が報告されていた。




みな、頭を抱え悩んでる時、アシャラが目覚めた。ベッドに起き上がり辺りを見回す。

(ナタリーはいないわね)

ベッドの縁に腰かけ床に足をつけると、ふかふかの絨毯が心地よい。夕暮れ時なのか、景色は薄らとオレンジ色に染まっていた。

ショールを羽織り、ドアノブに手を掛ける。


ズキッと左脇腹が傷んだ。

(つっ!ティルクお願い、頑張って頂戴よ)

「話さないと、陛下に、私の事も、帝国の事も……!」

「伝えなければ……、戦争になる…!」


ガチャと扉を開けると、真っ先に鎧が目に入った。視線を上げるとグレッド様が驚いた顔で見下ろしていた。

「っ!アシャラ様!」

「グレッド様……どうして……?」

私の声は掠れ弱々しく響いた。


「アシャラ様、どうしたのですか?部屋にお戻り下さい、医者を連れて参りますから」

「出来ません。陛下に直接、お話したい事があります早急に」

「そこを、どいて下さいグレッド様」


フラフラと部屋から出て、廊下を歩く。ファルーク陛下が、いま何処にいるか分からないのに当てもなく歩き出す。

右手を壁に当て歩いていると、後ろから肩を掴まれ

「お待ち下さい!俺も一緒に行きますから!」

この場所から陛下の居る場所までは、少し離れているらしく、執務室に辿り着く頃には夕暮れから夜になっていた。


グレッド様が、手を貸し案内してくれたから、ここまで、倒れずに来れた。

「感謝します、グレッド様…」

グレッド様に聞こえないよう、小声で感謝を伝えた。けど、グレッド様が微笑んだので、もしかしたら聞こえたのかもしれない。


執務室の前には兵士が立っており、私達を見て驚いた。

グレッド様が、兵士の方に事情を話す。

「申し訳ありません、アシャラ様。陛下は来客の対応中でして……」

出直して欲しいと、兵士は言う。……が、それは出来ない相談だった。

ティルクの力は弱り始めている。ここで引き下がれば、次は何時になるか分からない。もし、手遅れになったら絶対後悔する!

それに、次があるかも分からない。

兵士には申し訳ないが、強行突破するしかない。


強い眼差しで兵士を見遣れば、彼は一瞬ハッとした。その隙に横を通り過ぎ、ドアをノックする。兵士が慌て、グレッド様が『俺に任せろ』と彼に言った。


出てきたのは、宰相ルーカス様で、驚き声を失っていた。

私はルーカス様に、会釈し横を通り過ぎると部屋を見回す。

(そんな気はしてたわ、ティルクがこの国にいる時点で…)

部屋の中は、お父様やお兄様、白薔薇達が揃い踏みだった。


陛下も驚き固まり言葉が出てこないようだ。

「アシャ……ラ?」

お父様達は、私の事を知らない為、困惑しているようだ。

「陛下、来客中に申し訳ありません」

「……アシャラ、顔色が悪い。何故、出てきた。グレッド!部屋に連れて行け」

「陛下!」

「っ!」

「どうしても、話さなければならない事があるのです!」

私の真剣な声を聞いた陛下は、私を見つめ仕方なさそうに頷いた。そして、お父様達に向き直ると軽く頭を下げ部屋から出ていて欲しいと言った。だが、私の話はお父様達にも関係のある話。

だから……

「いえ、陛下。公爵様達もご一緒で構いません」

「寧ろ、公爵様達にも関係のある話です」

(つっ!)

フラッとした……ソファに手を付き、体を支える。息も切れてきた。限界が近づいているのだろう。時間が無い。

(急がないと……!)


陛下と宰相、公爵達が顔を見合わせた。困惑した様子だ。だが、それを気にする余裕は、私には無い。

「陛下、お願いします」

土下座する勢いで、深々と頭を下げる。

短いため息が聞こえてきた。

「ジェラルド殿、ローザ殿、構いませんか?」

「構いませんよ。こんな真剣に頼まれれば否とは言えませんからね」

お父様が了承の意を言うと、ローザ様も頷いた。

ルーカス様とグレッド様も部屋に入ってくる。


ルーカス様が私に席を譲って下さり、陛下は自分の席に座った。私の隣にヴィムク様が座り、陛下の隣にルーカス様が立った。グレッド様が、私の後ろに立つと、目の前にローザ様が座り、横にライラ様が座った。テーブルの横にある1人がけの椅子に、お父様が座り後ろにリチャードが立つ。お兄様達は、私の隣とローザ様の隣にそれぞれ座った。



みんなが席に着くと、私は自分の事を話始めた。

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