第24話 動き出す刻
最近、投稿が不定期ですみません。
夜遅く、誰かが傍に来てくれた気がして目が覚めた。目を擦りながら起き上がると、去っていく狼が見えた。
(また、来てくれたのね)
再び横になり目を瞑ると、昼間の事を思い出した。伯爵に連れられて出た町中で、お兄様の声を聞いた気がしたのだ。この国に居るはず無いのに、セレスティナでお父様の補佐をしてるのに。何故だか、お兄様だと思ったのよ。
物思いに耽りながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。
翌朝、ローゼス様に起こされ薬を貰った。
今日の昼過ぎに伯爵が帰ってくるとも聞いたので、きっと1番にここに来て嬉嬉として鞭を振るうだろう。
この屋敷に来てから毎日続いていた拷問が、この3日間無かった。それだけで、頑張ろうという気力が湧いてくるから、不思議だ。
伯爵が屋敷に戻って数日、その日は屋敷が騒がしかった。
聞き耳を立てなくても、聞こえてくる声は
『旦那様は?!』
『お出かけなされてから、まだ戻っていません!』
慌ただしく使用人達が走っている。
(何が起きたの?)
暫くすると、伯爵が帰ったのか、ローゼス様の声が聞こえてきた。
『旦那様、王宮より召喚状が届いております』
『なんだと?!なぜ今、召喚状が……!』
(召喚状?)
『……しかも奴隷も連れて来いなどと……』
(私も?)
『くっ、仕方あるまい。明日、召喚状に応じると連絡しておいてくれ』
『畏まりました』
ローゼス様が離れた後、伯爵が何か呟く。
『計画を早めねばならんな』
(計画?)
そう言うと、足速に離れていった。
その夜、ボソボソとした声が聞こえ目を覚ます。
「ん……な、に?」
『計画……る』
『分かった、しかし大丈夫なんだろうな』
『問だ…失敗……』
『そうか、なら良い』
複数人いるみたいだけど、1人は伯爵?
伯爵の声は、かなり抑えているのか聞こえが悪い。
『国王は毒殺…で構わないな』
(!!)
『ああ、奴隷を離すからその間に殺れ』
『罪は全て奴隷に着せる…か、考えたな伯爵様』
彼らは、計画を確認しあって離れていった。
(なんて事を…)
伯爵は明日、陛下を暗殺し罪を私に着せると言った。
陛下に伝えないと…でも、奴隷の私が簡単に会えるお方ではない。ルーカス様なら?
いえ、いつ伝えるの?間に合わなかったら意味はない。
(どうしたら…)
考えに耽っていたら、いつの間にか朝になっていた。
(もう、こんな時間…答えは見つからなかったわ)
アイナとマイナが来て、王宮に行くから、と支度をしてくれた。温かい布で体を拭き、質素なワンピースを着せ、髪を後ろで1つに結った。
伯爵が来たが、今回は鎖を付けなかった。
恐らく、計画の為なのだろうと思う。
伯爵は馬車に乗り、私は御者台に一緒に乗せてもらうことになった。
馬車の車輪には、大地の精霊石が埋め込まれてるらしく、砂地でも快適に走っていく。
精霊石は安くないから、伯爵はかなり上位の貴族なんだろう。
1時間ほど走らせた先に、王宮が見えてきた。
久しぶりに見た王宮は、変わらずの雄大さだった。