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 アルセリーナ様との話が終わり、薄暗い廊下を歩く中。ふと外が気になりました。国が変われば、王都の夜というものも変わります。レクサリアの夜はどちらかといえば静かな夜です。もちろん酒場など夜だからこそ賑わう場所はあるのですが。それでも一部のみが賑やかなだけで、静かなのです。

 ジェンキンズの夜はというと、いろんな場所に灯りが付いていてとても賑やかです。貴族の屋敷が多いこの辺りまで賑やかではないのですが。それでも賑やかな夜というのが分かります。

 国民性も関係しているとは思いますが、ここまで違いが出るのはとても面白いものです。


「レティア」

「クロードどうしたのですか」

「戻ってこないから探しに来たんですよ。外を見ているようですけど、何か気になることでも?」

「夜なのに賑やかでしたから、見ていたのです」

「確かにエングラストもレクサリアも静かでしたからね。私はこっちの方がなじみ深いです」

「そうですね。クロード、聞きたいことがあるのですがいいですか」

「私に聞きたいことですか、なんですか?」

「まだクロードは、婚約者のことが好きですか」


 先程までアルセリーナ様と話していた際、アーサー様が嫉妬をなさっていると聞いた時。私はクロードに対して嫉妬をしたことがなかったと気づきました。そして私の知る限りではクロードも。

 クロードは私の事を愛してくれていると、日々の言動で示してくれるので嫉妬をしたことがないのです。

 ですが、私が言動で表せているかと言えばそうではなく。私自身できているとは断言できません。なので嫉妬の一つや二つ、クロードが感じてもおかしくは無いのですが。今のところ嫉妬をしているようには見えません。

 私はともかく、クロードは元々婚約者がいてとて仲が良かったそうですから。普通に嫉妬などするはずなのです。私は前世の記憶があるせいか、感情の動きが薄いので仕方ないのですが。

 そして現状、嫉妬など見て取れないのには理由があると思いました。

 もしかしたら、まだクロードは婚約者のことが忘れられないのではないかと。髪を触るとき、料理を食べさせてくれる時。クロードは私のことを見ながらも何かを思い出しているようでした。授業や生徒の事だろうと思っていたのですが。もしかしたら、私に婚約者を重ねていたのではないかと。

 もちろん私の勝手な憶測なので、間違っている可能性もあるのですが。


「母から聞いたんですね。レティアのほうが好きですよ」

「それはわかっています。聞き方を間違えてしまいましたね、まだ忘れることができていませんね」

「そんなこと……」

「あるんです。私の覚えている限りでは。私の髪を触っているとき、料理を食べさせてくれる時、膝枕をしたとき。身に覚えがありませんか」

「レティアに嘘はつけませんね。そうです、まだ忘れきれてません。どうしても、どうぢても影がちらつくんです。彼女のテイネことが」

「話を聞かせてくれませんか、部屋に戻ったら。ここは少し寒いですから」

「っ! 幻滅していないのですか。昔の婚約者のことが忘れられない私のことを」


 部屋へ向かおうとする足を、クロードの問いかけによって止められて。答えはすぐに口から出てきました。


「別にクロードの心の中に誰がいようとかまいません。私の事を愛してくれていることに変わりはありませんから。それに私は苦しんでいません」


 そう、私は苦しんでいない。クロードの中に私では無い他の女性がいると知ったのに。私の心は動かない。冷たい心。


「苦しんでいるのは、クロードの方だと思いますから。それこそ、幻滅されるのは私の方でしょう。本来なら罵倒や手の一つでも出るであろう状況で、私はそのどちらもする気は無いのです。嫉妬心も怒りも持ち合わせていないのです。覚えがあるでしょう、言葉とは裏腹に顔が動かないことがあったはずです」


 例えば恥ずかしい時、悲しい時、嬉しい時、怒っている時。確かにそういった感情を抱く時もありますが、それは稀にです。

 恥ずかしいだろう、悲しむだろう、嬉しいだろう、怒るだろう。普通ならこうなるだろうと声を出す、それが普段の私。いつもの私。


「あなたが好きだと言うこの気持ちだけは、本物です。それだけは変わらないのですが。その他は嘘偽りであることが多いんですよ」


 自分言葉に酷いと思いつつも、そう思った感情すら嘘のようで。何が本当で、何が嘘なのか。それすら分からなくなっていく。


「部屋に行きまっ」

「レティア」

「後ろから抱きしめられると、部屋に帰れませんよ?」

「このままだと、レティアがどこかに行ってしまいそうだからですよ」


 声は平坦としているのに、そのに込められた思いだけが重く私の心に響く。

「おかしな人ですね、あのようなことを聞いても抱きしめるなんて」

「レティアには言われたくありませんね」

「そうですね、私は元からですし。ではこのまま部屋に帰りましょう、それならいいでしょう」

「そうですね」


 クロードの前でだけ、私は私という心をさらけ出せる。本当の偽りない私を見せてしまう。これが愛のせいだと言うなら、悪いとも、いいとも言うことはできませんね。



誤字脱字は下の方からお願いします。いつも助かっています。

この話の最後、2つ考えています。全てをレティア視点で書くか、ゲームとしてのストーリーが始まるまでをレティアで、始まってからはティア様視点で別作品として書くか。悩んでおります。

全てをレティア視点で書くのが本来なのですが、分けてしまってもいいのではないかと言う考えもあり。

どちらが良いか、もしくはこうしたらいい。そういったものがあれば教えていただけると助かります。ゲームとして始まるのがおそらく二十話以上先のことではあるので時間はあるのですが。

何卒ご協力お願いします

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