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「おはようございます」

「おはようございます」

「全員揃っていますね。それでは授業を始めます」


 一夜明け、今日から本格的な授業が始まります。初めの数時間は確認の授業になるでしょうか。

 ここにいる生徒は、皆習ってきた環境にばらつきがあるのでそれを知らなくてはなりません。

 貴族と平民では知り得る情報に、明確な差がありますからね。ある意味平民のためと言ってもいいでしょう。


「それでは授業を始めます。まずは皆さんの知識を確認しましょう」


 今の時間は算術の時間。これから確認することは足し算引き算です。貴族の生徒は恐らく四則計算は出来ると思いますが、平民の生徒にそれを求めるのは酷というものです。それでも足し算引き算は出来るでしょうからその確認です。


「今から問題の書かれた紙を渡すので、問題を解いてください。終わり次第私に提出して、この授業は終わりにします。初日から忙しなく授業をしても、いいことはありませんから。あと、今日の授業は全て同じように行うので覚えていえ下さい」


 今日の授業は算術の他、歴史、魔法、言語。午後は体術、神学となっています。言語は国語のようなものです。神学は簡単に言えば神について知る学問です。神学は魔法と密接に関係しているので魔法を知るのもなら皆が知っているものです。


「見事に別れましたね」


 私は職員室で結果について考えていました。結果は概ね予想通りでした。どの学問において貴族の生徒の正解率は高く、平民の生徒の正解率は低くありました。それでもその差は大きくはなく、これからどうとにでもなるでしょう。体術に関しては貴族が平民にやや劣るという結果でした。

 体術の授業で使う運動場を走らせたのですが、走り終わったあと平民の方が余裕がありました。貴族も何かと体力が必要なのですが、まだこの段階では日頃動いている平民に軍配があがったようです。

 これを元に授業の計画をしなくてはならないのですが、元から考えていたものに少し手を加えるだけでよさそうです。

 基本的には平民に合わせて進めていきます。平民は新たな知識を、貴族は今まで学んだことの復習になります。貴族の生徒に合わせると、平民の生徒がついてこれなくなりますからね。

 多少不満が出るかもしれませんが、我慢してもらいましょう。基礎を固めなくては応用も出来ませんから。


「レティア先生、お疲れ様です」

「アルパタ先生こそ、お疲れ様です」


アルパタ先生は私の隣のクラスを担当しています。専攻は歴史、二年ほど前から学園に在籍しているようです。高学歴に加え家が高位貴族である為貴族意識が高いそうです。


「大変ではありませんか、全ての授業をお一人でなさるのは。平民も混ざっているようですし」

「大変ではありません。ほかの先生方もクラスは違えど毎時間のように授業をなさっていますから」

「そうですか、頑張ってください」


何をしに話しかけてきたのでしょうか。確かにこの学園ですべての授業を一人でするのは私だけです。専門外のことまで教えれる教師はいませんから。

労いのようには感じませんでしたし、わかりませんね。さて、ここにいてもしょうがないですし、早く終わらせて帰りましょう。


終わりが近づいた頃、ここにいるはずのない人の声が聞こえてきました。


「レティア君頑張ってるね〜」

「アルビーネ教授どうしてこちらに」


本来アルビーネ教授がいるのは高等部のはずです。エングラスト学園は十二歳から十五歳までの初等部。そこから更に高みをめざしたい十五歳から十八歳までが行く高等部に別れています。

本来であれば高等部の教授であるアルビーネ教授が初等部にいるはずがないのです。


「新任祝いに来たのさ」

「わざわざ、ありがとうございます。ですが手紙でも良かったのでは?」

「確かに手紙でも良かったんだけどね。新任祝いに食事に誘っても来ないだろう?だから直接会って物を送ろうと思ったわけさ」

「物ですか?」


教授が私にくれる物となると、普通のものではなさそうですが。


「はいこれプレゼント」

「腕輪ですか?見たことも無い魔術式が刻んでありますが」

「新作の魔術式さ。危険なものでは無いから安心するといいよ」


教授の新作ですか。見たところ金属に魔術式を刻んだだけで、装飾もありませんね。危険はないとは言いますが、効果が分からなくては判断がつきません。


「リリースと言えば発動する。でもここでやらないでくれたまえ。修練場まで行こうか」

「これを終わらせるまで待っていただけますか?」

「ああ、そうだね。仕事優先だ」


残りの仕事を片付け、教授と共に修練場に向かいます。


「初めてだしそうだね、正面に腕輪を着けた腕を出すんだ」


言われた通りに腕輪を着け正面に構えます。そして


「リリース」


私の声に呼応して腕輪は形を変えていき、厚みのある三十センチ程の短剣になりました。


「これは、短剣ですか」

「そう、簡単に言えば護身用のものさ。腕輪だから武器だとバレることもほとんど無い。だから取り上げられることもないだろうしね」

「ありがたいですが、いいのですか?まだ発表していませんよね?」

「君は私の教え子だからね。問題なんてどこにもないさ。使い勝手はどうだい?」


一通り振ってみましたが扱えなくはありませんね。


「使う分には問題ないですね」

「さすがに重かったかな?魔術式をいじれば形状は変えられるよ。元となる武器が必要だけどね」

「形状記憶ですか。でもそれだけではありませんね。腕輪とこの短剣では質量が違います。圧縮ですか」

「他にも細々と組み込んでるけど大まかにはその二つだね。さすが」

「現象は分かっても原理までは分かりません」

「何が起こってるかわかるだけでも凄いものさ。知りたくなったら後で教えてあげるから、研究室まで来るといいよ。それじゃあねレティア先生」

「その時は伺わせて頂きますアルビーネ教授」


思わぬタイミングで新任祝いを貰い、そのまま家へと帰りました。

誤字脱字のご報告ありがとうございます。


誤字脱字は下に専用のがあるのでそちらからお願いします。


感想は私のモチベーションに直結してるので頂けると泣いて喜びます。面白いの一言でも大変うれしいです。


次話は生徒同士の衝突がありますよ。その前にティア様視点があるかもしれません。


リーアの恋人はどのタイミングで(ボソッ

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