昇進正銘のトンデモ展開です!
軟禁生活、一日目。
今日は、学校を休んだ友香さんのお見舞いに来たら、なんと軟禁されてしまいました。どうやら彼女もまた変態さんになっていたようで、私に盗聴器なるものを仕掛けていたようです。
彼女が仕掛けた盗聴器によると、私と友香さんは何度も変態さんに襲われているようなのですが、如何せん私にその記憶が無いため実感は湧きません。果たしてその記憶はどこに行ってしまったのでしょう。とか、どうやら私は一度、この街の銭湯に行っているようなのですが、その記憶も然り。銭湯に行く、などという一大イベントを私が忘れるはずが無いのに、その思い出は何処へ? 等々、疑問は多々あります。
しかし、長い物には巻かれろ、という言葉もありますので、私はとりあえず無駄な抵抗は辞めました。友香さんの話を聞いている限りだと、彼女が私に危害を加える事は無いとのことなので、安心です。
しかも晩御飯までご馳走になりました。手錠があるため檻ごしに「あーん」して食べさせてもらったのですが、いくらか恥ずかしいものの、特に困る事はありませんでした。
軟禁生活二日目。
朝起きても私は檻の中で手錠に繋がれたままでしいた。それでも快眠を得ることが出来たのおは、一重に絨毯が素晴らしいからかと。
友香さんのお母さんが用意してくれたのであろう朝食を頂いたら、お袋の味なるものを思い出し、ホームシックになりかけました。しかし私は現在軟禁中のため、諦めました。
今日は金曜日なので学校もあるのですが、私は元より体が弱く、病欠も稀にありましたので、皆勤賞がっ! と躍起になる必要もなく、すんなりと諦められました。
軟禁生活三日目。
今日は素敵な土曜日です。朝目が覚めて、にこにこと私を観察していた友香さんに挨拶をします。すると彼女はすぐにご飯を用意してくれて、「あーん」にてご飯を食べさせてくれました。お姫様になったみたいで少し楽しいです。
あと、友香さんのお部屋には、どこに隠してあったのか、沢山の漫画がありました。昨日から、友香さんがどこかに出かけている間はずっと漫画を読んでいるのですが、読むものが絶えません。男性同士の恋愛という少々イレギュラーなものも多々ありましたが、なかなかどうして面白いものです。気付けば夢中になって読んでいました。
軟禁生活四日目。
あれ? これ、軟禁じゃなくて監禁じゃね? と気付いたものの、瑣末な事でしょう。気にせず一日を過ごしました。
そして夜。
「おやすみ、小町ちゃん」
と、どこか疲れた様子で友香さんは言いました。
「おやすみなさい、友香さん」
疲れてますね、なんて、軟禁生活三日目からずっと言っていることです。毎度毎度同じように「正義のお仕事をしてきたの」と返されるだけなので、今では彼女を気遣って、余計な詮索はしないようになりました。
すぐに寝息を立て始めた友香さん。部屋は暗く、もう漫画は読めません。しかし全く疲れていないため眠れません。
「…………運動、したいな……」
このままでは太ってしまいます。明日、そのことを友香さんに相談しましょう。
ふと、閉ざされていたはずの窓が勝手に開き、心地よい風が頬に触れました。振り返ると窓ぶちに、月影で照らされた幼女のシルエット。暗いため顔こそは見えないものの、いわゆるゴスロリ的な服装をしているのであろう人が居ました。
「どなたですか?」
首を傾げて問うと、何故かそのシルエットは呆れたように嘆息。そして、
「なんで監禁を受け入れてるんですか」
と、私そっくりな声で言いました。
その影はひょいと檻を飛び越え、入り口の前に立ちます。すると、月の逆光が無くなったおかげで顔が見えました。
「こんばんわ」と私は言います「どうして『私』が檻の外に居るのですか?」
しかも魔法少女みたいな服を着て。
「自分が目の前に居るのに動揺しないなんて……」
驚愕の表情を浮かべる私のそっくりさん。いえ、勿論動揺はしていますよ? でも、大きな声を出すわけにはいかないじゃないですか。
「私が驚いたらご主人様が起きてしまうではありませんか。ご主人様は疲れているようなので、不必要に起こしたくないんです」
それ以前に、人が寝ている時は静かに、なんて、常識じゃないですか。
しかし『私』は「有り得ない事を聞いてしまった」みたいな表情を浮かべて一歩だけ身を引きます。
「ご、ご主人、様……?」
「友香さんの事です。今、とてもお世話になっているので」
「ちょっと待って下さい。貴女は今、監禁されているんですよ?」
「みたいですね。でも、ご飯も寝床も用意してくれますし、お手洗いの時は手錠付きとはいえ檻から出して同行までしてくれるのですから、思いっきりお世話になっているじゃないですか」
着替えも用意してくれて、しかも着替えさせてくれるんです。友香さんはとても優しい。だというのにもう一人の私は戦慄したように頭を抱え「駄目だ、こっちの私は既に想魔に毒されている……」と呟いていました。想魔? なんですか、それ。
その後も彼女は色々と呟いていました。「どうしてこんなことに」「こんなはずじゃなかった」「もうあと二回くらいしか魔法が使えないのに」等々。この『私』はいったいどうしたのでしょうか。言葉が全く理解出来ません。変態さんなのでしょうか。
ふと、檻の外に居る『私』はがしっと鉄柵を掴み、
「いいですか? 今から状況を説明しますので、落ち着いて下さい」
と、話し始めました。
そして彼女は、まるでホラーの語り部のように震えた声でもって言います。
「――実は私は、貴女なのです」
と。
「見れば解ります」
「見ただけで理解しないで下さい」
どうしてでしょう。彼女が私であることなど一目瞭然だというのに。
私の目前に居る『私』は再び呆れたように嘆息し、人差し指を立てました。
「いいですか? 自分の目の前に自分が居る、なんて状況は、どっからどう見ても異常事態なんですよ? もっとこう……『理解出来ない!』みたいな新鮮な反応とか、無いんですか?」
「リカイデキナイ」
「よろしい。では話を続けますね」
今の棒読みの返事で納得している『私』のほうも大概かと。
「改めて言いますと、貴女は今、監禁されています」
「見れば解ります。でも、友達だからも問題は無いのでは?」
「監禁されて尚も友達と言い続ける純粋さ……私も道を踏み違えさえしなければこんなふうに」
まるで悲劇のヒロインを演じるかのような白々しさで『私』は床に膝を着きます。それと今気付いたのですが、流石『私』です。窓から入ってきたとはいえ靴はちゃんと脱いで、手に持っていました。常識を弁えている。
「ともかくです」と『私』は続けます「監禁は普通に犯罪行為なのですから、それを行なっているのが友人であろうと『監禁されている!』みたいな態度があるべきじゃないですか」
「カンキンサレテイル」
「よろし――」
「どうでもいいのですが、ご主人様を犯罪者みたいに言うのは辞めてください」
「――くないですね。監禁は立派な犯罪行為ですからね。とりあえず友香さんをご主人様と呼ぶ事をやめましょうか」
辟易する『私』ですが、辟易したいこはこっちです。
「犯罪に立派もなにもないと思いますけど」
「その言葉を友香さんに言ってあげて下さい」
「え、でも彼女は友達ですから、犯罪者じゃないですよ」
話の解らない人です。私と同じ容姿で同じ声をして同じ喋り方をしているくせに、どうしてこうも頭でっかちなのでしょうか。
すると何故か『私』は頭を抱えて「埒が明かない。これほんと埒が明きません」と呟いていました。それを呟きたいのはこっちです。
「そんな事より、不法侵入こそ立派な犯罪ですよ? 早く出て行ったらどうです?」
「犯罪に立派もなにも無いと思いますけど」
「どこかで聞いた言葉ですね」
「先程貴女が言った言葉です」
人の言葉を勝手に使うなんて、非常識な人です。親の顔が見てみたいとさえ思います。
檻の外に居る『私』はもう一度深い溜息を吐くと、「仕方ないですね」と呟いて、人差し指をこちらに伸ばしてきました。
「使える魔法の回数はあとごく僅かですが、今から魔法を使って、貴女にへばり付いている友香さんの心力をそぎ落とします。少し、目を閉じて下さい」
魔法だの心力だのという言葉は理解出来ませんでしたが、私はとりあえず言われるがままにしました。ふと、温かい光が瞼越しに届いてきて、心地よさに包まれます。まるで故郷にでも帰ってきたかのような気分でした。
「目を開けて下さい」
言われた私は目を開けます。
そこはさっきまでとなにも変わらない場所でした。
友香さんの部屋。心地よいアロマの香り。温かい絨毯。隅っこに置かれたたくさんの武器。私を取り囲む鉄の柵。五日間の退屈を凌ぐために用意された大量のマンガ本。そして私の目の前に居る『私』
「…………」
…………この状況、異常じゃね?
「…………」
「目は覚めましたか?」
「…………」
えっと、なんと言いますか、とりあえず、
「…………叫んでいいですか?」
「もう少し我慢して下さい」
駄目だそうです。なんだか頭がパンクしそうなのでとても叫びたかったのですが、それをやってしまったら友香さんが目を覚ましてしまいますからね。
「…………とりあえず、というのもなんですが、助けて貰っても?」
「最初からそのつもりでした」
流石は『私』です。理解が早い。
部屋を漁り出した『私』は手際よく檻の鍵を発見し、すぐさま扉を開けてくれました。
「それじゃあ、行きますよ」
魔法少女の格好をした『私』に手を引かれ、そのまま窓の縁から飛び降ります。
……飛び降りちゃいましたね。
「ひゅぐっ!」
喉が詰まり、悲鳴も上がりませんでした。落下する! 死ぬ! と思うこと数秒、ふわり、と着地した『私』に支えられたおかげで怪我は無かったのですが、今の、確実に人間技じゃないですよね……。
「とにかく、今は走って下さい」
と『私』は言うのですが、如何せん運動など五日ぶりなのです。五日間、それこそまさに全く体を動かさなかった私が、そうそうすぐに動けるはずがありません。何度もつっかえて転びそうになりながら、跣でコンクリートを走り、友香さんの家から少し離れたところで一度だけ立ち止まると、『私』が事前に用意していたのであろう靴を履き、再び走り出しました。
息も絶え絶え。しかし充分な距離は取れたでしょう、というところで立ち止まった『私』は、振り返って言いました。
「……どうぞ」
さて。許可も降りたことですし。
私は肺が千切れんばかりに酸素を吸い込み――
「なんで私が監禁されてたんですかというか手作りの檻ってなんですかどうやって作るんですかそもそもあの武器達はどこで手に入れたんですかむしろ魔法ってなんですか想魔ってなんですか心力ってなんですか理解出来ない! 友香さんはいったいどうしてしまったのですかあれではまるで友香さんが変態さんではありませんかぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああぁあ!」
「うん、ストップです」
「あぎゃうっ!」
――チョップされました。首チョップです。悲鳴が止まると同時に嗚咽が漏れました。
涙目になりながらも『私』を睨んで、まだ聞きたいことが山ほどあるのだという事を言外に伝えます。一番大事な質問がまだです。すなわち、貴女は何者なのか、と。その意思を汲み取ったのであろう『私』はどこか妖艶に微笑み、両手を後ろで組んで言いました。
「まず、魔法、心力、想魔についてご説明します」
そして彼女は言葉を選ぶことなくすらすらと、まるで熟年の教師のようにその説明をしていきました。
簡潔に纏めるとこうです。
この世界には心力と呼ばれる力がある。
その心力は本来抑圧、弾圧され、実現の難しい、もしくは実行不可能である欲望願望を叶えるための力である。
心力は欲望願望を叶えるため、世界の理、森羅万象、あまねく法則を無視した超常現象を引き起こす。その現象を魔法と呼ぶ。
心力は使用される度に浪費されていき、補充しなければならない。その補充方法は当人の心を蝕む事である。
心力を使用するために心をすり減らしてしまった心力使用者は、徐々に自制心を失っていき、暴走気味になる。自らの願望欲望に忠実になった状態を想魔と呼ぶ。
「はい。稔先生」
私は元気良く挙手します。
「どうぞ、小町さん」
と『私』が答えたので、遠慮なく質問させて貰うことに。
「心力と魔法の違いがよく解りません」
どちらも魔法で統一してしまって良いのでは?すると『私』はちっちっち、と舌を鳴らし、答えまた。
「心力は源、と言いますか、車で例えますと、使用前のエンジンなのです。エンジンを燃焼させる事で車は走りますよね? その走るという現象がつまり魔法です。走るために使ってしまったエンジンはエンジンには戻りませんよね? だから補充しないと無くなってしまうために、心というガソリンスタンドで補充をします。畢竟しますと、使用前のなんにでも使える状態を心力、使用後もしくは使用中になってしまったのが魔法なのです」
つまり心力がマジックポイントなわけですね。理解しました。しかし納得は出来ません。
「ようは私には無関係という事ですね?」
「どうしてその結論に至ったのかは解りませんが、残念ながら貴女は無関係ではいられません」
この世界は残酷です。こんなトンデモ展開なお話に、どうして私が巻き込まれなければならないのですか?
「心力は本来、全ての人間が持っています」
と、『私』は続けました。あの、私はついていけてないのですが……。
「とてもとても弱い力ですが、実際に科学的、統計的にも判明している事実です。プラシーボ効果、もしくは思念体と呼ばれている場合が多いです」
それは聞いた事がありました。プラシーボ。確か、思い込みの力、でしたか。例えば風邪を引いた人に「これは風邪薬だ」と言って頭痛薬を飲ませたら、本当に風邪が治ってしまう、という、勘違いが産む些細な超常現象。
「そのプラシーボ、つまり心力ですが、稀に暴走を起こす場合があるのです。暴走して、理論上有り得ない事を起こしてしまう事が」
本来ならば思い込みや勘違いで済んでしまう程度の超常現象が、それらの言葉では誤魔化しきれない程の力を発揮してしまう。もしもそれが本当なら、それが事実なら……。
「人間は現金な生き物です。冷蔵庫や炊飯器、生活を豊かにする便利な物を一度使い、そういうものがああるのだと知ってしまうと、それ無しではいられなくなる。そういうものがあるのなら使いたくなる。それは仕方ない事ではあるのですが……一度暴走による誤作動で起きてしまった超常現象を、実際に起こり得るものなのだと知ってしまった人間は、超常現象を信じてしまいます。それらを使えるものなのだと思い込み、勘違いしてしまうのです」
プラシーボの誤作動を、本当の本物なのだと勘違いしてしまう。
もしもプラシーボが、思い込みや勘違いで超常現象を起こす力が実在するとさらに思い込んでしまったら――もう一度、プラシーボが発動する。
「そうやって、人の心の中で心力は肥沃化し、巨大化し、慢性化します。先述した通り、当事者の心をすり減らす事で」
「そ、そんな……」
自らの心をすり減らして自らの欲求を叶える。自らの尾を食すウロボロスのような現象。
「心が薄れて自制心を失ってしまった人は、さらにさらに心力を駆使し魔法を発動させます。これはやってはいけない。ここまでしてはいけない。その精神が働かなくなり、犯罪行為に走ったり、異常行動を取ったりする人を想魔と呼びます」
酷い。そう思ったのは、私の平和ぼけでしょうか。
そういう概念が存在するというのは勿論、自分の欲求を叶えるために犯罪行為に走り、他人を巻き込むような人間が居るというのも、許せませんでした。しかし、『私』は一呼吸置いて、
「いいですか、落ち着いて聞いて下さい」
と前置きします。
何を言われるのか。これほどまでの話をしておきながら、今更何に取り乱す必要があるのか。……という思いは、慢心だったようです。
「友香さんは、想魔です」
私は、言葉を失いました。
それでも語り部たる『私』は止まりません。
「彼女がどういう経緯で、どうして想魔になってしまったのかは解りません。しかし、友香さんは今、この街に大惨事を巻き起こそうとしています。いえ、もう起こしています」
「だ、大、惨事……?」
問うと、『私』は語るのが怖いのか、陰鬱な表情を浮かべました。それでも置かれたのは僅かな間だけで、彼女は語りを再開します。
「五十。この数字がなんなのか、解りますか?」
「い、いえ……」
「この五日間で出動した、救急車及びパトカーの出動回数です」
「!?」
私は戦慄しました。五日間で五十台の救急車とパトカーが出動。つまり、単純に一日で十台のどちらかが動いていたということです。
「ここ数日、この街に訪れる想魔の数が急増しています。もしくは、想魔となってしまう人間の数も、です。そして一箇所に集まった想魔達は、互いを潰しあうように、争いを始めました」
「そ、そんな……」
魔法を駆使する者同士の戦い。
そして、私は何故か、『私』が次に言う言葉を予想できてしまいました。
すなわち。
「その喧騒の中心に居るのが、友香さんなのです」
「っつ……」
なんで、どうして。それは先程、『私』も解らないと言っていました。
混乱に陥る私を無理矢理引きずり出すように、『私』は乱暴に言い放ちます。
「このままでは友香さんは、本当の犯罪者になってしまいます。人が死んでしまう可能性も有り得ます。そうなる前に、彼女を止めなければなりません」
と。
しかし、
「そ、そんな、そんなの、どうしろって言うんですか! だって、友香さんや他の想魔さんは、えっと、その……魔法を、使う、んですよね……?」
しがない一般人でしかない私に、そんな事出来る道理はありません。
それでも『私』は言うのです。私に希望を語るように。もしくは、絶望を押し付けるかのように、慎重に、静かな口調で。
「そのために、魔法少女が存在するのです」
と。
「魔法、少女……?」
聞きなれた言葉ではあれど、日常的ではない単語。その登場に戸惑います。
そういえば、眼の前に居る『私』も、テレビでよく見る魔法少女のような格好をしています。そして『私』は、文字通りどこからともなく木製の可愛らしいステッキを取り出すと、それを私に見せてきました。真ん中に大きな宝石が埋め込まれた、綺麗なステッキです。
「この宝石は、倒した想魔の心力を根こそぎ奪う力があります。心力は思い込みの力の連鎖が生み出すものなので、その根幹ごと無くしてしまえば、その人は心力を生み出せなくなりますから。……そうすると日常的なプラシーボ効果も発動しなくなって可哀想なので、優しい魔法少女は想魔や心力に関する一切の記憶を抹消して使い方だけ忘れさせて、心力は少しだけ残してあげる、という方法を取っていますが」
つまり、魔法少女が頑張れば想魔を倒せる……?
「さらに、この宝石は心力をチャージする事が出来ます。この中に溜めた心力は戦闘に問わず様々な魔法が使えるのです。その魔法を駆使して戦うも良し。人を助けるのも良し。自分の願いを叶えるも良し」
つまり、と、『私』は続けます。
「このステッキを使って魔法少女が戦う事で、想魔が引き起こした問題をなんとか出来るのです」
と。
「な……な……」
言葉に詰まって何も言えません。言いたい事、聞きたい事が多すぎて、何から聞けばいいのか、瞬時には解りませんでした。しかし、それは思ったよりは早く見つける事が出来ました。
「――で、その衣装の意味は?」
「――特に無いです」
さいですか。なら着なくてもいいのでは?
「説明は以上ですが、何か、他に質問は?」
と、『私』に聞かれ、私は随分と長い間スルーしてきた疑問をぶつけました。
「貴女は、いったいなんなんですか……?」
その問いに、『私』は迷わず答えます。
「私は、未来から来た、別時間軸の貴女です」
これが正真正銘の、トンデモ展開です。




