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無能王女と最強勇者伯~やめろ私は玉座に興味ない~  作者: たけすぃ


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 私だって友達が欲しい4

  *


 私を呼び出す手紙を読んだ時、この呼び出しは暗殺の企みなどではないとすぐに分かった。こう見えても私は暗殺されるプロである。

 自分を呼び出しての暗殺なんて、《《され慣れている》》。


 私が暗殺じゃないと判断したのは二つの理由からだ。

 一つは呼びされた場所だ。学園の使われていない教室だ。


 理由は今でも分からないが、学園で私はもっとも安全な場所にいると言って良い。

 次代の勇者伯、ショウ・アブ・トリックの隣だ。


 どんなに杜撰な計画を立てる暗殺者でも、学園で私が一人になる事に期待する者はいないだろう。

 もう一つは差出人の名前だ。


 ケミカ・リーダット、一学年上の平民の生徒だ。

 巨大化した官僚組織を支える為に、学園が〝優秀な〟平民を受け入れ始めて十年以上経っているが、彼女の名前は特別だ。


 当初は本当に《《特別に》》優秀な平民だけを受け入れていた学園だが、現在は二極化している。本当に優秀な平民と、拍付けの為にと裕福な平民がそこそこ優秀な子供を入学させているパターンの二つだ。

 ケミカ・リーダットはゴリゴリの前者だ。


 というよりも歴代でも珍しい、学園側から入学してくれないかと請われて入学している生徒だ。つまり天才である。

 おぉおズキズキする。自分の無能さというコンプレックスがズキズキと刺激される。


 要はケミカ先輩は、私の兄様二人と同類であり、そして学園での有名人の一人だ。

 平民の学生は貴族の学生から下に見られたりとする事が多いが、彼女に限って言えばそんな馬鹿な事をする貴族はいない。


 なにせ既に将来の栄達が確約されているのも同然なのだから。

 差出人を騙るにしても、リスクが大きすぎる名前なのだ。万が一にでも彼女に名前を騙った事がバレるリスクを取る貴族はいないだろう。


「先日、メフティア様を襲った影犬が……その……私のペットでした」


 私はその自分とは違う、天才学生からこの前はお前を暗殺しようとしました、と告白されながら、相変わらず自分はポンコツだなと思った。

 何が、暗殺じゃないと判断した理由は二つ、だ。


 その犯人が目の前にいるわ、馬鹿か私は。

 私を心配して付いてきてくれたショウ君に感謝である。


 まさかこれを予想してショウ君は付いてきてくれたのだろうか? そう思って隣に立っている彼を確認したら、なぜか顔を青くしていた。

 ケミカ先輩の事は知らないみたいだったし……、やはりショウ君としても予想外の事だったのだろうか?


「メフティア」


 青ざめたショウ君が私に助けを求めるような視線を投げてくる。

 一瞬だけショウ君に頼られて嬉しくなったが、頼られているのが自分であるという事実に気が付いて、私も顔を青くする。


 頼られても何もできない! 次に彼の口からどんな言葉が出てくるのか分からなくて、パニックを起こしそうになる。


「どうしよう。先輩のペットを消し飛ばしちゃった」


「あーはい。そうですね」


 起こした時と同じ急角度でパニックが収まる。スゥンって奴である。


「ですが今はそっちよりも、先輩が私を暗殺しようとした事に気を遣ってくれると、私は安心できるんですけど?」


「なるほど確かに」


 あまりに軽い反応に、ショウ君の中で私の命の価値がどれ程あるのか不安になってきた。

 こうして心配して付いてきてくれているので、まったくの無価値というわけではないと思うのですが。いかんせん、なぜ次代の勇者であるショウ君が私と一緒にいるのか、自分自身でも分からないのだ。


 実は野良猫以下だとしても不思議ではない。

 むしろネズミを捕れる猫の方が私より価値があるかもしれない。


「いえ! そんな違います!」


 ケミカ先輩が下げていた頭を勢いよく起こす。


「私はメフティア様を暗殺しようだなんてしていません!」


 王位継承権第三位なのに無能、そんな私でも実際に暗殺されそうになった数はそんなに多くない。

 もう少し暗殺されそうになった経験があったら、ケミカ先輩のこの顔が真実を語っているかどうか、分かったのだろうか?


 ケミカ先輩が、垂れ目を更に垂れさせて、弱ったような顔をする。

 ちなみにこの顔に騙されてはいけない。


 彼女は十七歳にして、魔法においては並び立つ人間を探し出すのに苦労するような人間なのだ。ついこの間も、新たな魔法を開発しており、それが普及すれば食料生産が倍増するとすら言われている。

 十六歳にして栄達どころか、歴史に名を残す事が確定している。


 あまりにも優秀過ぎるので、どの派閥も彼女を取り込むことはない。

 王位継承権争いに巻き込んで、間違っても彼女に何かあってはならない、という判断だ。


 失った時の損失が大きすぎるので、実質的に誰も彼女に手を出せない。

 それ程の人間が普通なわけがなく、彼女は研究バカであり、魔法の研究の為ならあらゆる倫理観を無視する人として有名だ。


「私としても、我が国の至宝。ケミカ・リーダットから暗殺されそうになったとは思いたくないですね」


 これはガチな本音だ。なにせ私は無能。国の宝と呼ばれる人材から恨みを買っているとすると、それだけで他からの暗殺の危険度が跳ね上がる。

 暗殺が成功した後に、犯人が「ケミカ・リーダットの邪魔になる人物だったので暗殺した」と証言したら、称賛する人間が出てきても不思議じゃない。


「ですので、どういう事か説明はして頂きたいですね」


 私は信じて貰えたと安堵の表情を浮かべるケミカ先輩にそう言った。

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