私だって友達が欲しい3
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俺とメフティアが、お前は友達いないよね、と互いに傷つけあってその放課後。
俺達は放課後の教室で一人の少女と対峙していた。
亜麻色の髪に、俺の胸までしかない身長、それに加えてうつむきがちな顔が相まって、見た者に〝弱そう〟とか〝臆病そう〟という印象を抱かせる少女だった。
教室にはその少女と、俺とメフティアの三人しかいない。
メフティアが手紙で呼び出されたからだ。ちなみに手紙で呼び出されたのはメフティアだけで、俺がこの場にいるのはつい最近、彼女が暗殺されそうになったからだ。
メフティアは暗殺するのに手紙で呼び出す事はない、と言っていたが。俺からすると友達になる前に死なれると困るのでついてきたのだ。
心配性ですねと、メフティアは苦笑を浮かべていたが、コイツは無能な癖に変な所で度胸があるんだなと思った。
「あの……殿下、そちらの殿方は?」
メフティアを放課後の空き教室に呼び出した少女が、上目遣いでチラチラと俺の顔を伺ってくる。
「それに答える前に、学園では身分は関係ありませんので、私に殿下は不要です」
そう言えばそんな決まりもあったな。
女子生徒は互いに様を付けて呼んでいるし、男子生徒は殿を付けている……はずだ。
俺は面倒なんで同学年は全員呼び捨てと決めている。建前上は学園内では身分差は無いはずなので問題ないはずだ。年上に関しては先輩でいけるだろ。
学園内で上級生との接点が無いので、許されるかどうかは知らん。
メフティアの、殿下は付けるなという注意に、亜麻色髪の少女は少しだけ迷ってから「メフティア様」と言い直した。
「お呼び立てするような事をしてしまい申し訳ございません」
身分差は無い、そういう建前だが、それはそれとして手紙で相手を一方的に呼び出すというのは貴族的には失礼。そう判断したのか少女がペコリと頭を下げる。
「それで……その……そちらの方は?」
なんでいちいち俺の顔を伺うんだろうか?
「お気づきかとは思いますが、彼はショウ・アブ・トリック。トリック侯爵家のご長男です」
「やっぱり勇者様」
アワワワ、とでも言いたげな顔で少女がビビり散らかす。
ちょっと酷くないだろうか? 俺はこの女に何もしていない。
「彼は……その……えっと……」
メフティアが俺の顔を見て言葉を探して右往左往する。間違って友達ですとか言ってくれないだろうか?
「私の……護衛のような?」
まあ確かに、またメフティアが襲われるんじゃないかと心配で着いてきたので、間違いではない。それはそれとして――。
「なあメフティア」
護衛とか言うとまた変な誤解が……いやしかし、と変な拘りを発揮しているメフティアの意識を俺に向けさせる。
「なんですか? ショウ君」
「コイツこそ誰なんだ?」
俺は少女を親指でさす。
ちなみにメフティアを呼び出した少女は「互いに名前呼び! 呼び捨てに君呼び! それに護衛だなんて!」と、なぜかアワアワしている。
コイツは知らんのか? 友達になろうとするならまずは名前呼びからだ。
俺の愛読書である「マイティー男爵の友達100人作れる交友術」に書いてあったから間違いない。
「相手は先輩なんですから親指で指すのはやめてください」
メフティアが呆れたように言う。これ良いな、呆れたと隠さない感じ、友達っぽい。ああ、いや待て。
「上級生だったらタイかリボンの色が赤か青のはずだろ?」
彼女のリボンの色はそのどれでもない。赤みがかった橙色だ。
俺のその疑問に答えたのは、くだんの少女本人だった。
「私は平民ですので」
そう気遅れた表情で少女が言う。
「どうもショウ君は知らないみたいなので説明しますが、学園では優秀な平民からも生徒を募集しているんですよ。彼女はケミカ・リーダット。私達の一学年上に通う先輩です」
「すまないケミカ先輩」
知らないとは言え俺は先輩に大変な失礼をしてしまったようだ。俺は素直に謝る。特権意識まみれの貴族連中も偶には良い事を考えつくみたいだ。
優秀な人間を育成するのは大事、馬鹿でも分かる事だがそこに生まれの身分を持ち出すのが貴族だ。
つまり彼女はそんな貴族の馬鹿をねじ伏せる程に優秀だという事だ。
「失礼な態度をとってしまった」
「ショウ君どうしたんですか!? 急に常識的になるのはやめてください! 怖い!」
「バッカ! 俺はちゃんと敬意をはらえる人間だぞ!? 怖いってなんだよ!」
単に生まれで決まった物に敬意をはらう気がないだけで、先輩のように実力でもって立つ人間には敬意をはらうに決まってるだろ。
「お二人は、本当に仲がよろしいんですね」
まるで常識知らずのように言ってくるメフティアに抗議していると、ケミカ先輩がクスクスと笑う。
おい、先輩に笑われたじゃないか!
「私とショウ君が仲が良いかは別としまして」
メフティアがコホンとわざとらしい咳を挟む。
「ケミカ先輩、私を呼び出した理由をうかがっても?」
メフティアが話題を元に戻す。
そうだった、彼女は手紙でメフティアを呼び出したのだ。何かしらの理由があるはずだ。
メフティアに問われたケミカ先輩は、垂れ気味の目尻を更に下げる。
「メフティア様……その……」
何か相当に言いずらい事を言おうとしている。流石に俺でも分かる。
「今回は私のペットのせいで! 本当に申し訳ございませんでした!」
そう言って勢いよく頭を下げるケミカ先輩。
「ペット?」
メフティアが、自分が何かを忘れているに違いない、みたいな顔をしながらケミカ先輩の後頭部を眺めている。顔を顰めているせいで睨み付けているようだ。
「メフティア……お前、まさか犬にでも襲われたのか? 怪我してないって事は相手はチワワか何かか?」
「襲われてませんよ。あと私はチワワにも負けますから」
そんな情けない告白いらねーよ。
「いえ……その……犬というのはある意味あっているんですが……」
顔を上げたケミカ先輩が困ったようにニヘラと笑う。
「先日、メフティア様を襲った影犬が……その私のペットでした」
おっと? これは俺ケジメ案件か?




