ねこみみと定期イベント
「それで、そのスライム親子からお礼のスキルを貰った。………ねぇ、どんなゲームの流れなのよそれ??」
「変わっていると思うけど、ユウが楽しんでるからいいの!!」
「はいはい」
翌日の学校。さっそく昨日起きた出来事を咲に話している海來。
あのあとキングキングスライムから子供のスライムを連れてきてくれたお礼だろう。海來と結城にレアスキルを渡されたのだ。
そのあと魔方陣が現れダンジョンから脱出。
ミラはともかくユウは「……満足……」といいすぐさまログアウトしたのだった。
「でも勝手にログアウトしないように言わないといけないわね。それ、あんただからいいものの他のプレイヤーだったら切れてるわよ」
「大丈夫よ!!ユウは渡さないからッ!!!」
「常識の話をしてるの。あんたも必要だったみたいだけどね」
相も変わらず鋭いツッコミをする咲に「そうかしら?」と軽く受け流す海來。
「でもそんなにいうなら咲もやりましょうよ。昔はやっていたんでしょう?」
「昔は昔よ。ゲームでも海來の面倒見るとか嫌よ」
「ハッキリ言うわね……でも、そこに結城がいるなら!」
「……………海來よりは、いいかも………」
「流石結城ねッ!!!」
そこで怒らないのが海來のいいところだろう。
そんな話をしていると教室の外がガヤガヤしてきた。
そしてそれはこの教室の所で止まり扉が開くと
「失礼します」
「えっ。執事?」
「可愛いわッ結城ッ!!!」
謎の執事にお姫様抱っこされながら寝ている結城。
一体なんなのだ?と言いたいところをグッ抑える咲達の所に近づく執事は
「おはようございます。海來様と咲様ですね」
「そ、そうですけど……」
「私、桝田結城お嬢様の専属執事をしております斎田といいます。
お嬢様は昨日はゲームをやり過ぎたようでまだ夢の中。遅刻するわけにはいかないと思いましてこうしてこちらに参った次第です」
「……育ちは良さそうだと思ってはいたけど……お嬢様だったのね結城……」
「流石結城ッ!」
みんなが着ている制服はいつも新品のようで、持っている筆記用具も高そうな物ばかり。極めつけがお弁当箱やその中身。重箱とは言わなくとも小さなお弁当箱は漆使用で、中身は一般家庭では出ないようなものばかり。それでも高級素材は使われていない辺り「お嬢様」感を出しているわけではない。
普段から一人が多く、大きな態度で出ることもなく、静かに過ごしていた結城だからこそ今までお嬢様だと知られなかった。
「お嬢様。学校に着きました」
「……………にゃ……………」
「ガハッッ!!!」
「…うっ……」
寝起きでまさかのネコ声。それもまぶたをかく仕草はもう可愛い。
海來は血反吐を吐きそうなぐらいのダメージを受け、咲も胸を苦しめられるぐらいのダメージを負った。
そんなことはつい知らず、結城はゆっくりと斎田の腕から降りて
「…………学校……??」
「左様でございます。いつもでしたら気づかれずにお席にと思いましたが」
(((いま!さらりとスゴいこと言ったッ!!!??)))
「授業まで時間もありますのでお友達とお話でもと思いまして」
「…………ありがとう、斎田……」
「滅相もございません。それでは私は」
サササッと教室から出ていった執事の斎田。
あまりの出来事にまだ現実に戻れないクラスだが結城はマイペース。
海來の前に立ち頭を下げたのだ。
「…………ごめんなさい………」
「ど、どうしたの結城ッ!!!なんで謝るのッ!!!??」
「……斎田に、聞いた……勝手にログアウト、ダメだって………
……私、分からなかった……でも、ごめんなさい………」
「い、いいのよ!ゲームするの初めてなんだから!!!
これから色々覚えればいいのよ!!!!!」
必死にフォローする海來にクスクス笑う咲。
ここまであたふたする海來を見るのが新鮮らしい。
「…………教えて、くれるの……??」
「もちろんよ!!」
そしてここで爆弾が、投下される。
「……ありがとう……」(ニコッ)
「…………………………ッッ!!」(バタンッ)
初めて見る結城の笑顔。それも間近で見てしまった海來は、死んだ。
周りのもの達も次々に膝から崩れ落ちていく。
咲はなんとか耐えたが、それでもとんでもないダメージを負った。
「……か、可愛いすぎるのも…罪なのね……」
「……?」
もちろん結城は何が起きたか知らない。
…………………………
「……イベント……??」
「そう。定期的に行われるイベントがあるの。
今日から二日間。もちろんゲーム内だからリアルだと二時間ぐらいかな」
お昼休みになり今日行われるイベントについて話していた。
あの結城スマイルで一時間目は少し遅れたが誰も後悔などしなかった。
むしろもっと見たいと休み時間に結城に話しかけようとした。
しかし結城は人見知りが激しい。すぐに海來の後ろに隠れてしまう。
でもそれがネコが隠れる姿に似てまたいい。と変なことになった。
ということで海來は当てにならないので咲がビシッと止めるように注意して迎えたお昼休み。もう結城を追いかけるものはいなくなった。
「……大丈夫だと思う……斎田もOKだって……」
「えっ。なんで斎田さんが知ってるの?」
会話の流れのなか結城のスマートフォンが鳴り確認すると斎田から「大丈夫でございます」とメールが届いていた。しかしそれはいま話している内容であり、ここにいる斎田が知るわけがないのだが
「……斎田だから、だよ……」
「なるほど」
「えっ。納得するのそこ?」
隣の海來が心配になる。しかしここで深く聞くのはなんかヤバそうだと咲もこの話題は止めることにした。
「で、今回のイベントが……お宝探しッ!!」
「………おぉ……!!」
「イベント用に作られた遺跡に潜ってお宝を探すの!!
もちろんトラップやモンスターもいるけど見つけたお宝からはスゴくいいものだって!中にはオリジナルスキルに匹敵する"ウルトラスキル"があるみたいよ!」
「………おおぉ………!!」
「なに、そのセンスのないスキルの名前……」
盛り上がっている横で冷静にツッコミをいれる咲。
そんなことはお構いなしに、しっぽがあれば間違いなくふるふると動いていただろうと思わせるぐらい興奮している結城。
「………しっぽ……欲しい……!!」
「しっぽ?もしかしてネコのしっぽのこと?」
「………それで、ネコネコ……アップする……」
「いいわね!じゃ私達は"ネコのしっぽ"を探すわよ!!」
「………おぅ……!!」
「いや。狙って取れないわよね。というかそんなスキル存在するの?」
「知らない!」
「………知らない……」
「………まぁ、好きにやったらいいわ……」
なんか疲れたとそれ以上の詮索を止めた。
ログインの時間を合わせて一旦この話は終わりお昼休みを過ごすことにした。