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第76話 狂人であるために。恐怖の象徴であるために。


さて。最終決戦の場につくのが簡単なわけもなく。

人形からの奇襲や罠。それら全てを──────


「依奈~!ファイト~!」

「ガンバレガンバレ依っ奈!ガンバレガンバレ依っ奈!」


……そう。依奈に担いで進んでもらってる。───なぜこんなことになったのか……原因はスライムでガラス状の地面を乗り越えたときに遡る。



「ねぇねぇ。このアジト?洞窟?……まぁいっかー。んと、本拠地にはさ、そりゃもう罠とか迎撃の準備整えられてないかな~って思ったりなかったり」


「……確かにそうだなぁ……とりあえずスライム防具セットを身に付けておこう。」


「やった~!」


「…………来るよ。」


依奈がそう言った途端現れたのは……でっかい蜘蛛でした。


「「ギャァァァァァ!!!!」」

「……えぇ……男が叫ぶと情けない〈直心刺殺〉!」


蜘蛛はそこまで強くなかったが、蒼真と由比にはトラウマになった……そして2人は役立たずと成り果てたのである。


「……のである。じゃないんですけど。」


「「洞窟、怖い。もう、動かない」」


「……今のは野生の雑魚キャラなのに」


「「関係ない。むしろ、わざとじゃないのにあれ出るの怖い。」」


「……ハァ……由比だけじゃなく蒼真まで運ぶ日が来るとは……」


「運んでくれるのか?なら、スライムにも手伝ってもらおう!」


「……スライムに運んでもらえばいいんじゃ?」


「いや、ここだと超高速スランドカーは小回り効かなくてまずいし、それ以外に運んでもらうと何かあったときに回避ができない。」


「……でも持つだけならできると?」


「んー。持つって言うのは違うかな。スカイアに頼んで、空中に浮かぶ形にするの。つまり浮力を使って軽くする」


「……不甲斐ない、情けない。」



というわけで、今この状況である。由比の勘通りに罠とか人形の奇襲があった。罠は発動までのタイムラグのうちに依奈が回避。人形は蒼真の剣や槍で。そして野生キャラは……


「「ギャァァァァァ!!」」

「……うるっさい!〈直心刺殺〉」


毎回依奈が片手で対処している。スライムにより軽くなった2人は10秒くらいであれば片手でも行けるようになっている。


一応由比が支援魔法を重ねがけしてるのでそこまでのダメージは無いが……


「……あのさ。虫が出る度叫ぶのやめて?」


JSに静かにしなさいといわれる2人であった。



なんやかんやあったが、全員が無傷で門に───


「いかにもって門があるんだけど。」

「あぁ。いかにもって門があるな」

「……どんだけ凝ってるの……?」


3人ともその門に圧倒された……そのわけは。


─────その門に『玉座の間』と彫られていた……だけでなく、回りに宝石が散りばめられていたりと凝りに凝りに凝りまくった。ただそれは……


「これって……賞金首盗賊団の何か、バーッ!って感じ。」

「語彙力無さすぎだろ……ただ言いたいことは分かるわ。なんか汚い金感半端ない」

「……倒される悪役臭」


3人の感想で分かるとおりの、いい王様じゃなくて悪い王様……というより悪役のトップみたいな趣向だった。


「まぁ……行こうか?」


「あっ待って!皆にバフかけとくね!」


そう言って由比が攻撃力、防御力、素早さをそれぞれ重ねがけし、初期ステの1.5倍の性能になった。ただし、続くのは10分間のみのためタイムアタックとなる。


「じゃ、門開けて速攻いくよー3.2.1!」


「「「Go!」」」


門が開く。

そしてそこには場違いにも儚げな少女2人が立っていた。……3人は思わず見とれた……というより見とれさせられた。というのが正しいだろう。何故ならそれは、現在3人の真上にいる猟奇殺人鬼によって作られた。人工知能工知能が読み取った人間の好みそのものを転写した者。つまり見とれるのも仕方がない……


「くっ……呪いか!?」


見とれるに賭けるのはリスキーである。実際蒼真はいち早く動くことを試した。……だが、ドット1個分も動かない。


「ステータスオープン!!」


ステータスプレートを開くための動作が実行できないため音声コマンドを使用する。

すると……【幻惑】【硬直】と書かれた状態異常があった。


「どちらも5秒、あと3秒……大技を使うには十分だな。」


全ては蒼真の拡張された思考にすぎない。考える時間があるのは間違いないが、その分これが起こるのは死の直前のため何か対策をしなければ負けること確実なのだ。


思考、仮説、失敗、仮説、脳内でデモンストレーション、失敗、仮説、仮説、仮説……!


あと2秒


「〈スカイア!俺らをできるだけ動かせ!!!〉」


あと1秒


少しだけ動き……拡張された思考は元に戻る。あと1秒の猶予があり元に戻った。ということは死の危険が去ったということ他ならない。


結論付けた直後、もといた位置に灼熱の光が刺す。光の発端を見ると、口を裂き笑う殺人鬼の愉悦に満ちた顔があり。その手から放たれているのは灼熱の光である。


「いぃねぇ!君とは遊べそうだぁ!たのしぃたのしぃ!バトルの始まりだよぉ!?楽しんでいこうじゃねぇかぁ?アハハァ!お嬢ちゃんたち怯えなくても大丈夫だよぉ!すぅぐになにも考えられないただの屍になるんだからぁぁぁ!ヒャハッハ!!!!」


「狂人がっっ!」


「狂人……甘美な響きさ。俺にとってそれは何よりも大切であり……無ければ命を落とすもの。」


先ほどでとは打ってかわって静かに話し出す。


「少し……身の上話を聞いてくれ。……俺は自殺しようとしたんだ。だけど失敗……飛び降りたんだけどさ。俺は足を失って生き残っちゃったんだ。そんな中VRゲームで俺を死に追い詰めた奴等を思い返してやろうと。それで、自分の全財産をつぎ込んだ。元々自殺した原因っていうのは俺の財産を求めてやってくるハイエナを追い払っていたら、いつの間にか『こいつ、金あるからって調子のってる(笑)』『金あれば偉いと思ってる可哀想な人なのよ。』とかネットで叩かれまくった。最初はこれでもどんどんエスカレートしてったさ。」


いきなり話し出された話の重さに何も音を発せない3人。


「とことん身勝手なやつのせいで、俺が取引していた、たくさんの会社から縁を切られた。俺の仕事は取引の仲介人……まぁ、簡単に言えば小売人のでっかいバージョンだよ。それでこの身1つで成り上がった。誰もが知る有名人に。」


「あなたの名前は?」


「子供にゃ分からんよ。会社単位での話だ。まぁ、それで俺は何もできなくなった。積み上げてきたものを、ネットの話のつまりにされて1人の人生を粉々にされた。だから……決めたんだ。俺はこの世界を壊すと。それで集めたのが紅の血吸い人。皆ネットの被害者だ。それだけでこんなに集まる……ほんっと。この世界は腐ってる。」


「だからといって関係ない人を──」


「巻き込んではいけない?綺麗事なんだよ。だって俺だって俺を追い詰めたそいつらとは関係ないんだ。会ったことすら無い。全てのネット民は殺人鬼の顔を持っている。その顔を表にするか裏にするかは別として。……愚痴のための裏垢とかまさにそのためだろう?」


「それは……」


「最初は現実世界を壊そうと思った。でもそれは前途多難、関係ない小学生や幼稚園児たちも巻き込んでしまう。それは嫌だった。だから俺は恐怖の象徴になったんだ。俺を追い詰めた奴等を怯えさせ、苦しめようと。

無論最初は上手く行かない。だから金だ。俺にはもう必要のない金をつぎ込みまくった。そしてトップランカーになった。だからこそ!お前らに負けるわけには行かない!俺が、恐怖の象徴、狂人であるために!」


「「「「さぁ、バトルスタートだ!」」」」




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