裏切り
「俺たちはな、そこの赤い髪の男に雇われたんだよ!」
そういった夜盗の一人は赤い髪の男、アグヌスを見る。
「なっ、テメェ! 何ふざけたこと言ってやがる!」
突然舞台の上に引っ張られたような状況に、普段から仏頂面のアグヌスでさえ慌てた態度を取る。
それに呼応したように他のパーティが剣などを強く握り警戒する。
「おい! まさかこいつの言葉を真に受けてんじゃねえだろうな!?」
自分に敵意が向けられていると悟ったアグヌスは弁解するように言葉を紡ぐ。しかし、普段の態度と人相からあまり信頼を置かれていない彼を味方する者はいない。アグヌスのパーティメンバーさえ訝し気な、何を信じればいいのかわからない顔をしている。
「とりあえず落ち着け、アグヌス。他の奴らもだ」
輸送隊としてのチームが瓦解しそうな空気の中、それを破ったのはゴルドだった。さすがは信頼厚い冒険者だ。
「今は争っている場合ではない。誰が敵か、よりも安全を確保するのが優先だ。とりあえず今夜は警戒を怠らないようにして、休息を取ろう。アグヌスについてはまた明日だ」
「なら今日は解散しよう。こいつらは僕のパーティが管理するよ」
「ああ、ありがとう。ハルト」
そうしてひとまず、アグヌスへの疑心を残して休息に入った。
せっかく一貫した眠りを狙ったのに台無しにされた王田は、地味にイライラした感情を抑えて今日は眠りについた。裏切り者のつるし上げはまた明日だ。




