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左近の桜、右近の橘。  作者: みんくん
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第21話

結果をまず書く、彼女は…本荘 楓はいじめが原因で自殺した。


あのあと僕は毎日のように放課後、彼女の家へと遊びに行った。

彼女のお母さんも喜んでくれていつもいつも娘と仲良くしてくれてありがとうと僕の頭を撫でてくれた…。


毎日鞄にいっぱい本を詰めて彼女の家に遊びに行った。

僕が大好きだった本を沢山沢山彼女に貸してあげた。


「右葉ちゃん…私ね、右葉ちゃんと仲良くなれて本当に良かったって思う…私、右葉ちゃんのこと、大好きだよ」


どこか不自然な笑顔で彼女は笑っていた。

今思えばこの時、既に彼女の心は壊れていたのだろう。


その翌日、彼女は僕があげた小説を書いたノートを胸に抱いて、自殺した。


死因は飛び降り自殺だった。でも彼女の顔はすごい綺麗なままだった。

棺の中に横たわる彼女は非常に美しく、この時僕はまだ、彼女が死んだなんて信じられなかった。


「あ、右葉ちゃん…娘が…楓がね、最後にあなたにこれを渡して欲しいって…手紙を」

泣いている彼女の母親を目の前にして、やっと僕は彼女が死んでしまったのだと悟った。

トイレに駆け込みお腹の中を全部出して、それでも吐き気は止まらず血を吐いた。

彼女がもう居ない、もう話すことができない、そう思うと気が気ではなかった。

いや、この言葉はおかしいね…実際僕の気は狂ってしまったのだろう。


吐瀉物は上がるが吐ききってしまって量が少ないため喉に溜まる。

暗くなる視界の中で、僕は彼女の手紙を胸に抱いた。


そして次に目覚めたのは一週間後、病院でのことだった。

医者もなぜ僕が目を覚まさないのか不思議で不思議で仕方がないといった様子だったらしい。


僕は夢の中で彼女と遊んでいた。


薄暗い図書室の中で気持ちのいい風を受けて私の書いた小説を読んでくれる…そして彼女は決まって泣いてしまうのだ…。

感動しちゃった、右葉ちゃんの小説、私大好きだよ!!


彼女が言うと僕は照れくさくて「や、やめてよ!!」なんて言って…でも本当は心の底から嬉しくて、照れくさくて、彼女とこんなふうに一生一緒に居たいと思った。


「楓ちゃん、最近ね、私体がおかしいの…」

「え?!病気!?病院には行ったの!?」


椅子を倒して私に駆け寄る彼女。


「ううん…最近ね、楓ちゃんと話してるとね、ドキドキして顔が暑くなってね、緊張してでもすごい楽しくてね、ずっと一緒にいたくてね…」

「そっか、それは病気じゃないよ」


彼女はふうと一息吐くと満面の笑みで僕にこう答えた。


「それはね、恋だよ!!」


これは僕の夢だ、僕の記憶にない事は見ない。

多分僕は彼女に恋をしていたのに気づいていたのだろう。


「良かった、私もね、右葉ちゃんの事大好きだよ!」

「楓…」

「そっか、そっか…これでもう、思い残すことないなぁ…」


涙を流す楓を見て、僕は焦る。

このままだと楓が消えてしまう、そう思ったのだ。


「右葉ちゃん、ありがとう、右葉ちゃん、大好きだよ」

彼女の唇が僕の頬に触り、僕は目が覚めた。


彼女が僕に見せてくれた最高の笑顔は今だって忘れることなく覚えているし、僕に絵心さえあればいますぐに書く事だってできる、それくらい脳内に焼きついていた。


「右葉、大丈夫?お母さんのことわかる?」


母が僕の顔を覗き込み、心配そうにしている。

でも僕は彼女と一緒にいたあの幸せな空間を忘れないように、ただ必死に目を瞑って記憶に焼き付けていた。


それから数日後、私は退院できることになった。

その際先生から渡された一枚の手紙、私が運ばれた時に胸に抱いて離さなかった物らしい。

手紙を見るとそこには可愛い字で「右葉ちゃんへ」と書かれていた。


病院のフロント前で先生からもらった手紙を読む。

読んで、泣いた。

声が枯れるくらいに泣いた。


手紙には色々と書いてあったけど二枚目にはただ一行しか書いてなかった。


「私を救ってくれてありがとう、大好きです、幸せになってください」


僕はその時、ただただ泣く事しか出来なかった。

読んでくださりありがとうございました。

次話もどうぞ、よろしくお願い致します。

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