第20話
今日も彼女と本を読んでいた。
窓を開け放った図書室はとても心地が良く、やや薄暗い室内は集中するにはもってこいだった。
ペラペラと紙をめくる音とサワサワと言う木々のざわめきが文章をよりいっそ爽やかに感じさせた。
しばらく本を読んでいると彼女が読み終わったのかパタンと音を立てて本を閉じ、私の方へと近づいてきた。
「右葉ちゃん、何読んでるの?」
「これ…」
表紙を見せると彼女はとても嬉しそうな顔をした。
「私ね、そのお話大好きなんだ!!右葉ちゃんも好き?」
好きだ特にこのテンポの良い会話とモノローグの組み合わせが最高だ。
「私も好き…一緒だね」
「うん!」
眩しい彼女の笑顔に私の胸はどきっと跳ね上がる。
胸が苦しい、そう感じるのは初めての事だった。
「ねぇねぇ…右葉ちゃんが書いた小説…読みたいな」
恐る恐ると言ったふうに聞いてくる彼女。
たしか今あったかもしれない
カバンの中を探ると一冊のノートが出てきた。
「今私が書いてる小説だよ…恋愛小説なの」
「読んでいいの!?」
「うん」
彼女は私からノートを受け取ると座ることもなくすぐに読み始めた。
字は汚い方では無いけど確実に読みづらいだろう文章を一生懸命に読み、笑顔になったり涙目になったりしている。
その姿にまた胸が痛む。
すると次の瞬間、彼女の両目から涙が流れた。
「ど、どうしたの!?楓ちゃん、私の小説のせい!?」
急に立ったから椅子が倒れ煩い音を立てる。
彼女はフルフルと首を横に振り、笑顔を浮かべた。
「この小説読んでたらね、感動しちゃって…」
最近の私はどこかおかしい…ドキドキと鼓動が早くなって顔が熱くなって、こんなこと初めてだから何がなんだかわからない。
「あ、終わっちゃった…」
涙を拭う彼女を見て私は本当に嬉しかった。
「右葉ちゃん、続き、できたら見せてくれる…?」
また恐る恐ると確認を取る彼女に私は吹き出した。
「当たり前じゃん!」
「あー笑った!右葉ちゃんヒドイ!!」
「だって楓が変な事言うから」
この時間が楽しかった…今思えば僕はこの時既に彼女の事を好きだったのだろうと思う。
次の日も、その次の日も私と彼女は図書室で沢山お話をした。
毎日ちょっとずつ書いては楓に読んでもらって、そんな生活が続いたある日の事だ。
図書室から聞きなれない怖い声が聞こえた。
「あ?本荘の癖に生意気なんだよ!苛められてる分際で調子こいてんじゃねえぞ!!」
「痛いっ!!」
「あ?何が痛いだよ!!こちとらテメェが毎日毎日ヘラヘラヘラヘラシやがって吐き気が収まんねえんだよ!!」
「やめてっ、痛いっ!!」
私は足が竦んだ…楓がひどい目に遭っている、助けなきゃ、助けなきゃ!!
私は職員室へと走った。
声を聞く限りでも最低3人は居る。私一人で乱入して事をややこしくするよりも先生を読んでくる方がいいと判断したからだ。
勢いよく職員室のドアを開けて泣きながら先生に助けを求めた。
私のこの状況を見て一刻を争うと悟って先生三人が立ち上がり図書室へと向かった。
必死に走った。徒競走でもリレーでもこんなに全力で走ったこと等ない。
足がもつれ転び、思いっきり鼻を打つ。それでも直ぐに立ち上がって私は走った。
図書室に着くと角で怯えて丸くなっている楓と取り押さえられた生徒が5人がいた。
先生があと二人応援を呼んでくれて、この1件は終わりを迎えた。
ここで幸いだったのは楓に大きなケガが無かった事だろうね…でも、もう少し早く先生を呼びに行ければああはならなかったと思う…僕はあれからもうしばらく立つというのに未だに後悔していた。
その翌日から、彼女は学校へと来なくなった。
読んでくださりありがとうございました。
次話もどうぞ、よろしくお願い致します。




